口笛が聞こえる町

旅に出るなら雨の日が一番似合うと思っていた
右手には傘、左手にはつかみそこねた幸福を
ついてなかった生きる事に
努力はいつもしていたが
所詮笑顔の似合わない人もいる
かもめが低く飛ぶ曇り空
ロシアの船の着く港
砕ける波 ほほにつめたく 旅立ちを責める
思い出せば楽しいことも少しはあった

誰が吹くやらこんな日に聞きたくもない口笛を
誰が吹くやらこんな日にとうに忘れた口笛を…

消すに消せない痣のある
まちがいだらけの青春と
分かっているのは誰れよりも
自分なんだと知っていた
心の糧になる本を鞄の底にしのばせて
話し相手にしてみても夜は長い
いかつり舟の漁火だけが淋しくゆれる北の海
窓にうつる自分の顔は若くはなかった
悲しいけど大人の顔に変っていた

誰れが吹くやらこんな日に聞きたくもない口笛を
誰れが吹くやらこんな日にとうに忘れた口笛を…
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