最も歌詞アクセス数が上昇したのは、サザンオールスターズの「ピースとハイライト」。紅白出場は31年ぶりで、しかも事前発表がない中でのサプライズ出場したサザンは、紅白放送前日に対して、なんと1.000倍のアクセス数(90.000PV/1日)を記録した。その一番の要因として挙げられるのが、「ピースとハイライト」の歌詞の内容と紅白で桑田が行ったパフォーマンスである。

 


「ピースとハイライト」は、現代の世界の情勢をストレートに描写した内容で、安部政権の憲法解釈変更を批判している内容だ、など、放送直後からネットを中心に話題を集めた。加えて、桑田がチョビ髭をつけてパフォーマンスをしたことで、「チョビ髭=ヒトラー=安倍首相」を想起させる、とその真意に迫るニュースが飛び火している。近年、政治的発言をする芸能人も増えてはいるが、基本、芸能界や音楽業界で政治に触れることはタブーであるとされている。だが、あの「紅白歌合戦」でこの楽曲を歌えるのは、サザンだけである(桑田の政治風刺の作風は昔からのことで、決して今に始まったことではない)。もちろん、楽曲に込めたメッセージは、世界の壁や障害を越えて愛に満ちた世界を築こう!ということであるが、紅白での痛烈なパフォーマンスのインパクトは想像以上に大きく、2013年にリリースした同曲のCD売り上げは200位圏外→69位に急上昇する結果となった。



数年前、原発問題が起こった際に槇原敬之が「Appreciation」という曲をリリースし、“原発擁護ソング ”だということで話題を呼んだことがある。感謝の大切さを歌った歌ではあったが、原発を題材にしたため政治的な側面がピックアップされてしまったが、それはアーティスト自身も承知の上だろう。槇原にしてもサザンにしても、ここまで成功したアーティストなら、それらのタブーに触れないで過ごすことは出来るだろうが、敢えて触れるのは、アーティストとしての使命感と音楽が持つ平和的メッセージを信じているからだろう。いずれにしても、桑田の謝罪報道にまで発展したこの騒動。紅白で「ピースとハイライト」を歌ったサザンとNHKの勇気を称える声も多く2014年の紅白歌合戦は歴史的な番組となった。

順位 歌手名 曲名 発売日
1 サザンオールスターズ ピースとハイライト 2013.8.7
2 石川さゆり 天城越え 1986.7.21
3 イディナ・メンゼル Let It Go 2013.11.25
4 三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE R.Y.U.S.E.I. 2014.6.25
5 椎名林檎 NIPPON 2014.6.11
6 SEKAI NO OWARI Dragon Night 2014.10.15
7 中島みゆき 麦の唄 2014.10.29
8 西野カナ Darling 2014.8.13
9 AAA さよならの前に 2014.9.17
10 A・RA・SHI 1999.11.3
11 クリス・ハート 2014.3.19
12 サザンオールスターズ 東京VICTORY 2014.9.10
13 細川たかし 応援歌、いきます 1991.5.1
14 絢香 にじいろ 2014.6.18
15 薬師丸ひろ子 Woman "Wの悲劇"より 1984.10.24
16 May J. Let It Go 〜ありのままで〜 2014.3.26
17 水樹奈々×T.M.Revolution Preserved Roses 2013.5.15
18 miwa Faith 2014.2.12
19 森進一 年上の女 1968.11.5
20 GUTS! 2014.4.30
21 神田沙也加 生まれてはじめて 2014.5.3
22 ももいろクローバーZ My Dear Fellow 2014.5.8
23 EXILE NEW HORIZON 2014.7.23
24 感謝カンゲキ雨嵐 2000.11.8
25 坂本冬美 男の火祭り 2013.10.2
26 長渕剛 明日へ続く道 2014.12.17
27 氷川きよし ちょいときまぐれ渡り鳥 2014.9.17
28 Dream5 ようかい体操第一 2014.4.23
29 徳永英明 花は咲く 2014.9.24
30 松田聖子 あなたに逢いたくて-Missing You- 1996.4.22
2014年「第65回NHK紅白歌合戦」特集ページ


 

演歌歌手で見ると、石川さゆりの「天城越え」がトップとなった。通算37回目の出場となった石川さゆりが紅白で「天城越え」を歌うのは今回で9回目で、同一曲の歌唱回数で、最多記録を更新した。歌ネットの20世紀の名曲特集でも唯一演歌の楽曲でランクインした「天城越え」は、「歌おう。おおみそかは全員参加で!」の番組テーマに最も反映した楽曲と言えるだろう。実際、演歌歌手の場合、ファンのほとんどが40歳を越える年代であるため、PCからのアクセスがほとんどを占めるが、「天城越え」は紅白効果もあり、放送日と翌1月1日にスマートフォンからのアクセス数が全体の3分の2を占め、若い層が数多くアクセスしたことが分かる。

 
 
オフィシャルHP
   

 

紅白で歌われた楽曲は、放送日と翌1月1日でアクセス数が上昇するのが通常であるが、そうでないアーティストも存在する。たとえば、AKBグループがその象徴で、AKB48が歌った「心のプラカード」は放送当日のアクセス数が前後数日の中で最も低く、SKE48、NMB48、HKT48などもそれほど上昇は見られない。オリコンのシングル売り上げランキングを独占しているこれらのグループであるが、売り上げの結果と視聴者からの反響はイコールではないことが分かる。

また、ポルノグラフィティ「アポロ」やSMAP「世界に一つだけの花」、ゴールデンボンバー「女々しくて」も同様にそれほど上昇は見られなかったが、こちらの場合は歌詞を検索しなくても歌えるほど楽曲が浸透しているからだと言えるが、紅白効果があまり見られないケースにも、様々な要因があることが歌詞検索結果からみえてくる。

 
 
オフィシャルHP