この曲は女性の別れ際を描いた歌詞で、<私のスカートが青く揺れている>というフレーズもありますが、「ハッピーエンド」の主人公が<青いまま枯れてゆく>姿とどこか通じていますね。また4位の「わたがし」には<水色にはなびらの浴衣>という言葉が登場します。依与吏さんのなかでどこか女性に"青い"イメージがあるのでしょうか。
たしかに女性像が"青"を身につけがちですね。あと「青い春」って曲もあるし、自分が感情を表現するときによく出てくる色なのかもな。なんか青ってすごく無垢な感じがするんですよ。でも瑞々しいだけじゃなくて、寂しくて切ないものを含んでいるところも好きだし。"白"になるとちょっと透明感というか、汚れのないイメージが強すぎるので、そういう意味でもback numberの主人公にとって青がちょうどいい色なんだと思います。
また、ベスト収録曲で「fish」や「ハッピーエンド」と同じく"女性目線"の曲というと「stay with me」、「MOTTO」、「助演女優症」、「幸せ」、「思い出せなくなるその日まで」がありますが、どの主人公もなんだか…幸せではないですね。
あーーー…。ホントだ、女性の主人公が幸せな歌は…ない(笑)。多分…大前提として、女の子の気持ちがわからないんですよ。これだけラブソングとか女性目線の曲を歌っていても、全然わからない。だからだと思うんですよねぇ。まず俺の歌詞は、よく"女々しい"って言ってもらえるんですけど、「行かないでくれよ〜」とか「なんであの子は俺のことが好きじゃないんだ!」とかそういう気持ちが"女々しい"って呼ばれるもので、逆に幸せな感情で"女々しい"ってあんまりないじゃないですか。だから、いくら自分の中の女々しさを女性に擬人化しても、幸せな人が出てこないんだと思います。
あと、主人公が男であっても、幸せを切り取って歌にしたときに"なんだよ単なるノロケじゃねーか"って自分で思いたくないから、すごく言葉遣いとか表現方法に気を使うんです。
でも、よく女性ファンの方から歌詞に対して「なんでこんなに私の気持ちがわかるんですか?」とか言われませんか?
うーん、言ってもらえますけど…それは本当に断片的なものだと思うし、男から言われる方が嬉しいっすね。「でしょー!?」みたいな。もちろん女の子から言われても嬉しいんだけど「いや、でももうちょっといけると思うんだよねぇ」って感じるんです。俺、まだ踏み込めていないんですよ。なんか女の子の良い部分ばっかり書いている気がするんだよなぁ…。まぁたまに「ミラーボールとシンデレラ」とか「MOTTO」みたいなやさぐれた女性というか、男よりも恋愛に対してドライでスパッと切れ味が良いようなところもちゃんと描かなきゃと思って作っているんですけど、うーん、まだまだなんですよねぇ。でも『アンコール』を出せば一回区切りがつくと思うので、そこからまた男性の心情にも、女性の心情にももっと踏み込んだものを書いていきたいと思いますね。
back numberの楽曲で一番多いのはやはり男性の片想いソングですね。そして膨れてゆく恋心や妄想に自らツッコミを入れるようなフレーズも特徴的だと思います。この「高嶺の花子さん」で言えば<いや待てよ そいつ誰だ>や<僕のものに なるわけないか>というような…。
あ〜なんか、たとえば自分が迷っていて誰かに相談するときって「実は俺こうしたいんだけど、でもあれがこれが…」って、もう最初に答えは出てんじゃねーか!ということがよくあるじゃないですか。自分はとくに恋愛に関する云々でウダウダ、ウジウジしたところがあるので(笑)。だから歌詞でも、好きなのはわかっているし付き合いたいのに「だけどさ…」っていうのを書き続けてしまうんでしょうねぇ。で、自らツッコミも入れることで「いや、とはいえ俺は冷静だから」みたいな言い訳をしているところがあるんだと思います。
これほどいろんなラブソングを描いている依与吏さんですが、ご自身の理想の恋愛というとどんなものを思い描きますか?
えぇ…!?そのテーマは長らく考えていなかったですね。20代前半くらいに置いてきてしまっている気がします。昔はもっとスラっと言えたのになぁ。理想のシチュエーションの妄想とかはほとばしるんですよ。でも理想の恋愛って聞かれて、今何も思い浮かばない事態に自分でも驚いています(笑)。まぁ楽しいのが一番だし、出来ればずっとイチャイチャしていたいですけどね!ただ結局はひとつの感情だけじゃ数ヶ月しか一緒にいられないというか、幸せな時期は続かないということを思い知っちゃっているからかなぁ…。
でも、だからこそずっと一緒にいるためには"好き"って気持ちよりむしろ、お互いのダメなところとか喜怒哀楽の相性の方が重要なのかもって思うところはあるかもしれないですね。いい加減なところとか、ワガママなところとか。 で、長いこと続いていくなかで、マンネリっぽくなってきて(あぁこのまま終わっちゃうのかなぁ…)って時に"結婚"ってものがあってもいいと思うし…、なんか、語り尽くせないですね。すみません、話がまったくまとまらなくて(笑)。でも、答えが出せないからこそ、まだまだ歌っていけるのかもしれないなぁとも思いますね。
2位は大人気のこの曲です。両想いカップルのラブソングですが、さきほどの片想いソングの主人公に比べて、付き合っているときのほうが男性の想いが淡々としている気がします…!
そう! back numberの主人公の男ってちょっとそういうところある(笑)。相手の気持ちにあぐらをかきがちというか。「花束」もそうだし、「日曜日」とか「光の街」とかも、すごく冷静な感じにね。きっとありがたさを忘れるタイプなのかもしれないです。それで「あ、やべ!別れるのかぁ!」みたいなときに急に優しくなりだすみたいな(笑)。そういえばカップルの恋愛最中みたいな歌は楽曲もミドルテンポで淡々としてますね。なんか…ダメな男だと思いますよ。
先ほど『幸せを切り取って歌にしたときに「なんだよ単なるノロケじゃねーか」って自分で思いたくない』とおっしゃっていましたが、わりと両想いソングを作ること自体が少ないですか?
そうだと思いますね。どうしても歌いたいときには、ノロケとバレないように手を変え品を変え…(笑)。でも女の子って…なんて言うんだろうな…平気で幸せな曲を歌うじゃないですか。俺はあれがすげぇなぁと思って。それこそaikoさんとか、西野カナちゃんとかって、"もちろん迷いもあるけど、ずっと一緒にいてね"みたいな感じをすげぇ安らかに歌い上げるから(笑)。だけど女の子がそれをやると絵になるし、男が聴いても「あ〜こんなふうに彼女に思ってもらいたいなぁ」って思うんですよね。
それを男がやるのは至難の技で、男友達に話すみたいなテンションで「俺すげー幸せなんだよね、あの子のこと好きでさぁ」みたいなこと歌ったら誰も聴かないような気がして(笑)。そうとう角度には気をつけないと。だから「花束」とか「光の街」とか「日曜日」以上に"幸せでたまんねぇぜ!"みたいなのは書いてなくて、この辺が多分、俺の限界地です。そこは女の子が羨ましくて、今ちょっと勉強しているというか、なんとかできないかと最近思っていますね。
1位はやはり、全アーティストを含めた歴代人気曲の首位でもあるこの名曲です。
1年経って振り返ってみて、「クリスマスソング」はback numberにとってどんな1曲になったと思いますか?
これまでいろんな分岐点があったと思いますけど、やっぱり「クリスマスソング」が一番大きな分岐点だなぁと感じますね。この曲を作るときに月9チームの方々に結構やいのやいの言ってもらって、自分の殻みたいなものを壊してもらったような気がするので。なんか周りの反応とか聞いていると、ドラマ側に寄り添ったというよりも、結果的に清水依与吏というか、この曲の主人公がより素直になれたんだなぁって。
もちろんタイアップはありがたいことなんですけど、最初は、ロックだとかJ-POPだとか、売れたいと思うのがカッコ悪いだとか、なんかそういう気持ちがバンドとしてあったんですよ。自分たちだって散々、とくに俺なんて売れている音楽しか聴いてこなかったくせに。でも、自分たちが一番良いと思える曲を作って、その結果、広がったということが、自分たちの感覚をもう一回信じざるをえないところに繋がっていったんだと思います。「クリスマスソング」がなかったら、今もまだ一人でウダウダ言っているかもしれないですからね(笑)。