お次は、井上苑子さんの新曲「なみだ」をピックアップいたします。この曲は、今は夢のことだけで精一杯な彼氏のために、本当の気持ちを伝えないことを選んで、別れを受け入れようとする女の子の歌なんですよね。
今すぐ走り出せるなら この夏に閉じ込める あたしの本当の気持ちを
あなたについた最初で最後の嘘 夏の忘れもの
ハジ→ サビの<この夏に閉じ込める>って表現がすごく良いよね。うわー、閉じ込めたー!と思ったもん。でも歌の最後の最後で<大好きだったよ 大丈夫なんかじゃないよ>って本音が出ちゃったところも、俺は可愛いと思った。
苑子 そう、最後のそのフレーズがないとこの歌は成立しないんです。あと多分、この歌の男の子“あなた”は、恋と夢を並行できないわけじゃないと思うんですよね。だけど彼は優しすぎるから、彼女にツラい思いをさせちゃうよな…って気持ちで「俺たち別れた方がいいよね?」って切り出そうとしているんだろうなって。それで女の子の方もその優しさを受け止めてあげたくて「わかってるわかってる、大丈夫」って勝手に悟って、離れちゃうみたいな。そういう優しい人同士の“言えない想い”を考えながら書いたかなぁ。
あどけないから
会えないと恋は溶けちゃうの
会いたいとき 会えなくても…
また、この二曲のフレーズは対照的だなと感じました。同じシチュエーションだったとしても、きっと人によっていろんな選択肢があるんでしょうね。
苑子 ホントそうですね!『なみだ』の女の子はめちゃくちゃ強がって相手の話を受け入れるしかなかったわけですけど、無理だ。私だったら絶対に無理です。そんな別れ方、考えられない。意味がわからない(笑)。
ハジ→ コラ(笑)。歌っている人が!
苑子 じゃあ、仮に私がハジ→さんの彼女だとして、仙台に二人で暮らしているとします。でも「私は夢を追いかけるから、東京に行くわ。だから会えなくなる。別れよ」って言ったらどうしますか?
ハジ→ 「マジで?……とりあえず線香花火しよ?」
苑子 (笑)。
ハジ→ でもなぁ、自分が夢を追って生きてきた人間だからこそ、相手の夢に関しても理解はあるかなぁと思うんだよね。だから「あぁそっか、じゃあ俺はここで自分のやりたいことをやるから、離れても一緒にいようよ」って言うかな。だってやっぱり、なんで別れなきゃいけないのって思っちゃうしな。別々の場所にいても、終わりにすることだけが選択肢じゃないよって話をするんじゃないかなぁ。
苑子 大人やー…。私は最初から「大丈夫じゃないよ!何言ってんの!?」ってなっちゃうもん(笑)。あと実際に、この『なみだ』のような体験をしている子って結構いるんですよ。私がラジオをやっていたときに、よく中学生の子から悩み相談を受けたんですけど「今、彼が野球の夢に向かっていて、離れなきゃいけないんですけど、どうしたらいいですか?」みたいなメッセージがあったりとか。もっと言えば「テストがあって、勉強に集中したいから別れないと…」とか。
ハジ→ えー!?それは本当に好きじゃないだろー!…って言いたくなるね。あー、でもどうしたらいいかわからなくなって、選択肢が「別れること」しか見えなくなっちゃうのか。
苑子 そう、中学とか高校の頃って、純粋に好きな気持ちはあるんだと思います。でも精一杯すぎて、夢も恋もうまくやるってことがまだできないんですよ。だから『なみだ』を書きながら、そういう人もいるんだよなぁ…って思いましたね。
ではもし、ハジ→さんが『なみだ』の男性側である“あなた”だとしたら、この女の子に向けてどんなアンサーソングを書きますか?
ハジ→ そうきましたか!じゃあ…『えがお。』って曲を書こうかな(笑)。このカップルはまだお互いに好きなんだと思うから、やっぱりその本心の部分は入れたいよね。だから<君のことを思えば思うほど 別れることが正解な気がして この答えを選んだけど 僕は夢を叶えていつか君に会いに行きたい>と。で<そのときにもし君もまだ好きでいてくれたら もう一度…>って歌うかな。
苑子 うわぁ…!いい!めっちゃいい!なんか、こんなに『なみだ』の女の子は、一人でウジウジ考え込んでいるけど、そのアンサーソングがあったら前向きになれる!
ハジ→ よし、これで行こう。次のシングル出来た(笑)!
「なみだ」の結末がちょっと救われるような、ハジ→さんらしいアンサーソングですねぇ…!そういえば、ハジ→さんの曲にはmiwaさんとのコラボ曲『夜空。feat. ハジ→』以外に失恋ソングってないんじゃないですか?
ハジ→ あー!そうか、『White Winter Love。』とか『sumire。』みたいな片想いっぽい歌は何曲かあるんですけど、たしかに失恋ソングって1曲もない気がしますね。
苑子 え、すごい!どうしてですか!?私は最近すぐに失恋ソングばっかり書いちゃうんですよ。携帯にメモしてある言葉が全部ネガティブ(笑)。なんか悲しい歌のほうが感情が入り込みやすいみたいなんですよねぇ…。ハジ→さんは、失恋したことがないんですか?
ハジ→ あるよ(笑)!でも実は、失恋ソングで自分の代表曲になるような大きな曲をいずれ世に出したいという想いはずっと前から持っているんです。正直、デモ曲も作ったことあります。だけど結局、失恋ソングでも最後はポジティブにしたいというところで、まだ僕のなかで歌詞がまとまってないんですよね。
なるほど…。さきほどの『なみだ』のアンサーソング『えがお。』も、最後はポジティブに終わっていましたね。
ハジ→ そう!基本的に僕の曲はどれも、最終的には光が差すようになっているんです。だからそこはまた“ハジ→らしさ”が関係していて、「別れちゃったけど、まだお前のことが好きで好きで…」という感じとうまく共存できるイメージが湧かなくて。じゃあどういう失恋ソングならハジ→っぽくみんなに響くのかなぁって、長いこと考えているような気がします。あ、でもそういえばこの前Googleで「ハジ→」って検索したら、3つ目くらいの候補に「失恋ソング」って出てきたんですよ。それはもしかしたら、そういう曲を求められているということなのかなぁ。
苑子 そうですよ!みんな調べてるんですねぇ。私もハジ→さんの失恋ソング聴きたいですもん。あと私の周りの子とか、彼氏が出来たりすると、すぐハジ→さんの幸せなラブソングをLINEのBGMにしたりするんですよ!わっかりやすいですよね(笑)。でもやっぱりそうやって恋をしている子たちが聴いているから、逆に失恋したときも、その悲しい気持ちに合うハジ→さんの曲を聴きたいと思う。
ハジ→ そっかぁ…。そうだよね。今、失恋ソングのスケッチみたいなものだけはあるので、ちょっとこれから挑戦してみたいですね。