6月は「ジューン・ブライド」。この月に結婚すると幸せになれると言いますよね。言葉の由来は6月の英語名であるJuneが、もともとローマ神話のユピテル(ジュピター)の妻ユノ(ジュノー)の名前から取られたもので、しかもこのユノという女性が、結婚生活の守護神であることからなのだそうです。でもきっと、ユノさん自身もユピテルさんと幸せに暮したからこそそんな風に呼ばれるようになったのでしょう。
ただ、よく話題になることですが、日本の6月は梅雨の時期。ジメジメした気候のなかで式を挙げて、本当に幸せになれるのか…。一説には、ホテルなどの業界が閑散期を乗り切るためのアイデアとして「ジューン・ブライド」という言葉に着目し、日本でも広めたと言われます。あ…。でもこんなこと書くと、せっかくゴール・インしたカップル達の幸せが、何パーセントか蒸発していってしまうような気分でもありますのでこの辺で…。 さっそく本題。そんなわけで今回は、結婚式で歌われることが多い作品のなかから、素晴らしい名曲を選びました。木村カエラの「Butterfly」を取り上げることにします。彼女が歌詞を書いてます。曲とアレンジを担当しているのは末光篤です。
友のために書いた結婚式ソングが「名曲」となる理由
そもそもこの作品、仲の良い友達が結婚する際、お祝いのために書かれたものであるのは有名ですよね。実は以前から、世のシンガー・ソング・ライター達はこうした理由でも曲を書いていて、長渕剛の「乾杯」もそうですし、コブクロの「永遠にともに」も有名ですね。でも、個人的とも思えるキッカケから誕生した歌が、なぜ多くの人々の心に届いたのでしょうか。そこには理由があると思うのです。
まず、ただひたすら親友のことを思い、個人から個人への手紙のように書かれたからこそ、歌に込められた感情が、ピュアで力強いものになったからではないでしょうか。プロとして音楽をやっている以上、より多くの人達を感動させたいという想いは日常的にあるのでしょうが、最初から“万人に届くもの”などと意識すると、逆に漠然としてしまったりもするわけです。でもこの場合、ソング・ライターとしての意識を具体的なものとして保っていられるわけです。
さらに言うなら、もしかしたら木村カエラは、歌を贈った花嫁にしか分かり得ない暗号のようなフレーズを、「Butterfly」のなかに忍ばせているかもしれません。届ける相手が明確なら、こんなことも可能でしょう。
でも逆に、送る相手は特定しているとはいえ、結婚式という場には家族や親類、学生時代や社会人になってからの友人知人なども集まり、“聴き手”は実に幅広い年齢層なのです。なので一般的じゃないものや、独りよがりは困ります。でもこの曲には、そのあたりをちゃんと考慮してると思しき部分がある。それを挙げるなら、“光の輪”、“鐘の音”、“赤い糸”といった、ベタといえばベタな言葉もあえて盛り込まれているあたりです。
「Butterfly」は結婚式当日、非常に汎用性が高い歌
式の当日がやって参りました。6月ですが、天気のほうもまずまずでなによりです。実際、この歌を結婚式のどの場面で使うのがいいのでしょうか。
冒頭で、新郎新婦登場の場面を盛り上げるのにもいいかもしれない。会場の目を一身に集める、ケーキ・カットの時に流すという手もある。お色直しで再登場の場面? もちろん、友人代表が前に出て、この歌をうたうのもいいでしょう。もしかしたら最大のクライマックス、ご両親への花束贈呈のBGMにも相応しいかも…。いやいや、曲タイトルにもある通り、新たな人生へと飛び立っていくイメージがこの曲の信条でもあるので、新郎新婦の退場の時こそ…。考えてみると、どの場面でも合うような気がします。
なぜそうなのか考えたのですか、歌詞もそうだけど、曲調が関係している気がするのです。末光篤の手によるこの曲は(特に「ゼクシィ」のCMで有名になった“♪バタフラィ〜”のサビの部分には)バロック音楽の要素があるのです。曲全体としては変化に富んだ構成ですけど、特にこの部分はハッキリとそんな雰囲気です。で、これがやや古風で折り目正しい印象を与える。ほかのJ-POPの楽曲と較べても、明らかです。そしてもともと結婚式会場というのは、冠婚葬祭のマナーもしっかり守られたフォーマルな場所。だからすごく合うのでしょう。
実際の結婚式では様々な楽曲が使われていて、新郎や新婦がその人のファンだから、とか、デートの時よく車で聞いていたから、とか、選曲の理由は様々なようです。でもこの「Butterfly」には、幅広い年齢層に訴えかける大きさがあるから、結婚式の定番となったのでしょう。友人を祝福しつつ、自分達の友情も続いていくことを願う歌であり、また、結婚した当人がこれから一緒に家庭を築く相手に歌いかけてる、とも受け取れるところが巧みだと思います。
さて式もそろそろ佳境です。すると僕のテーブルの隣の席の、親戚のおじちゃんが訊ねてきました。「この歌は誰のじゃ え? 木村カエラ?」。次におじちゃんが何を呟くのか注目してました。「ええのお。この娘は日本語を大切しながらハキハキ歌っておる」。どうやらこの式は、記憶に残る素晴らしいものになりそうです。めでたしめでたし。
ただ、よく話題になることですが、日本の6月は梅雨の時期。ジメジメした気候のなかで式を挙げて、本当に幸せになれるのか…。一説には、ホテルなどの業界が閑散期を乗り切るためのアイデアとして「ジューン・ブライド」という言葉に着目し、日本でも広めたと言われます。あ…。でもこんなこと書くと、せっかくゴール・インしたカップル達の幸せが、何パーセントか蒸発していってしまうような気分でもありますのでこの辺で…。 さっそく本題。そんなわけで今回は、結婚式で歌われることが多い作品のなかから、素晴らしい名曲を選びました。木村カエラの「Butterfly」を取り上げることにします。彼女が歌詞を書いてます。曲とアレンジを担当しているのは末光篤です。
友のために書いた結婚式ソングが「名曲」となる理由
そもそもこの作品、仲の良い友達が結婚する際、お祝いのために書かれたものであるのは有名ですよね。実は以前から、世のシンガー・ソング・ライター達はこうした理由でも曲を書いていて、長渕剛の「乾杯」もそうですし、コブクロの「永遠にともに」も有名ですね。でも、個人的とも思えるキッカケから誕生した歌が、なぜ多くの人々の心に届いたのでしょうか。そこには理由があると思うのです。
まず、ただひたすら親友のことを思い、個人から個人への手紙のように書かれたからこそ、歌に込められた感情が、ピュアで力強いものになったからではないでしょうか。プロとして音楽をやっている以上、より多くの人達を感動させたいという想いは日常的にあるのでしょうが、最初から“万人に届くもの”などと意識すると、逆に漠然としてしまったりもするわけです。でもこの場合、ソング・ライターとしての意識を具体的なものとして保っていられるわけです。
さらに言うなら、もしかしたら木村カエラは、歌を贈った花嫁にしか分かり得ない暗号のようなフレーズを、「Butterfly」のなかに忍ばせているかもしれません。届ける相手が明確なら、こんなことも可能でしょう。
でも逆に、送る相手は特定しているとはいえ、結婚式という場には家族や親類、学生時代や社会人になってからの友人知人なども集まり、“聴き手”は実に幅広い年齢層なのです。なので一般的じゃないものや、独りよがりは困ります。でもこの曲には、そのあたりをちゃんと考慮してると思しき部分がある。それを挙げるなら、“光の輪”、“鐘の音”、“赤い糸”といった、ベタといえばベタな言葉もあえて盛り込まれているあたりです。
「Butterfly」は結婚式当日、非常に汎用性が高い歌
式の当日がやって参りました。6月ですが、天気のほうもまずまずでなによりです。実際、この歌を結婚式のどの場面で使うのがいいのでしょうか。
冒頭で、新郎新婦登場の場面を盛り上げるのにもいいかもしれない。会場の目を一身に集める、ケーキ・カットの時に流すという手もある。お色直しで再登場の場面? もちろん、友人代表が前に出て、この歌をうたうのもいいでしょう。もしかしたら最大のクライマックス、ご両親への花束贈呈のBGMにも相応しいかも…。いやいや、曲タイトルにもある通り、新たな人生へと飛び立っていくイメージがこの曲の信条でもあるので、新郎新婦の退場の時こそ…。考えてみると、どの場面でも合うような気がします。
なぜそうなのか考えたのですか、歌詞もそうだけど、曲調が関係している気がするのです。末光篤の手によるこの曲は(特に「ゼクシィ」のCMで有名になった“♪バタフラィ〜”のサビの部分には)バロック音楽の要素があるのです。曲全体としては変化に富んだ構成ですけど、特にこの部分はハッキリとそんな雰囲気です。で、これがやや古風で折り目正しい印象を与える。ほかのJ-POPの楽曲と較べても、明らかです。そしてもともと結婚式会場というのは、冠婚葬祭のマナーもしっかり守られたフォーマルな場所。だからすごく合うのでしょう。
実際の結婚式では様々な楽曲が使われていて、新郎や新婦がその人のファンだから、とか、デートの時よく車で聞いていたから、とか、選曲の理由は様々なようです。でもこの「Butterfly」には、幅広い年齢層に訴えかける大きさがあるから、結婚式の定番となったのでしょう。友人を祝福しつつ、自分達の友情も続いていくことを願う歌であり、また、結婚した当人がこれから一緒に家庭を築く相手に歌いかけてる、とも受け取れるところが巧みだと思います。
さて式もそろそろ佳境です。すると僕のテーブルの隣の席の、親戚のおじちゃんが訊ねてきました。「この歌は誰のじゃ え? 木村カエラ?」。次におじちゃんが何を呟くのか注目してました。「ええのお。この娘は日本語を大切しながらハキハキ歌っておる」。どうやらこの式は、記憶に残る素晴らしいものになりそうです。めでたしめでたし。
小貫信昭の名曲!言葉の魔法 Back Number
プロフィール 小貫 信昭
(おぬきのぶあき)
文章を書くことと歌が大好きだったこともあって、音楽を紹介する職業に就いて早ウン十年。
でも新しい才能と巡り会えば、己の感性は日々、更新され続けるのです。
実は今回取り上げさせて頂いた木村カエラさんとは、わたし、同期なんです!彼女がティ−ン雑誌のモデ
ルさんとしてご活躍の頃、わたしは同じ雑誌でレコ−ド紹介のコラムをレギュラ−で担当させて頂いてた
のです。なので同……、あれ? こういうのは同期って言わないですね。失礼いたしました。
文章を書くことと歌が大好きだったこともあって、音楽を紹介する職業に就いて早ウン十年。
でも新しい才能と巡り会えば、己の感性は日々、更新され続けるのです。
実は今回取り上げさせて頂いた木村カエラさんとは、わたし、同期なんです!彼女がティ−ン雑誌のモデ
ルさんとしてご活躍の頃、わたしは同じ雑誌でレコ−ド紹介のコラムをレギュラ−で担当させて頂いてた
のです。なので同……、あれ? こういうのは同期って言わないですね。失礼いたしました。