もがいてもがいて もがき続けた先で 生まれた声
仮面を外して 信じて信じて 信じ続けた先に 見つけた声
抗って さぁ のたうちまわれよ もっと歌詞を見る
―― andropは2009年にデビューとのことで、2019年には10周年ですね。これまでを振り返ってみて、バンドにとって大きな転機というといつ頃のことでしょう。
一番は顔と名前を出した時だと思います。僕らは2011年にメジャーデビューをしたんですけど、それまではプロフィールを明かさずに活動していたんです。でもその年に、今はもう無くなってしまったSHIBUYA-AXというライブハウスで初のワンマンライブをしまして。アンコールでお客さんから「名前は何ていうの?」って訊かれて、初めてメンバー全員の名前を発表しました。名前も知らずに音楽を聴いてもらえていて、しかもSHIBUYA-AXでライブができていたって、今考えるとおかしいですけど、すごくありがたかったですね。
―― 現在では、公式サイトの【Q&A】コーナー(※会員限定)で、毎週会員の方からの質問にメンバーが答えるということもなさっていますよね。あのように、andropの皆さんの人間性が細かいところまで伝わる場所があるのも、面白いなぁと感じました。
あのコーナーは、僕らも意表を突かれるような質問が結構あったりして、毎週楽しみにしていますね。サイトに掲載されるまで、メンバーそれぞれお互いに、何を答えてるかわからないんですよ。だから「この質問、自分はこう答えたけれども、他のメンバーはどう思っているんだろう」っていうことを知ることができる面白さもあったりして。
―― とくに印象的だった質問はありますか?
いろいろありますね。「andropの曲で喜怒哀楽を表現するとしたら、それぞれどの曲が合うと思いますか?」とか、おもしろい質問だなぁって。その質問に対して僕は「楽しい曲だとしても悲しく表現することもできるなぁ」と思ったから「全ての曲でそれぞれの感情を表現できる」的なことを書いたんです。でもメンバーは、それぞれ律儀に「喜」「怒」「哀」「楽」で一曲ずつ曲名を挙げていたので、あぁ…真面目だなぁと(笑)。
―― では、ご自身が歌詞を書く時、とくに込めることが多い感情を挙げるとすると何でしょうか。
喜怒哀楽で言うなら「喜」と「楽」ですね。あとは“切なさ”かなぁ。「怒」や「哀」はあまり使っていないような気がします。そもそも僕は、ライブで聴いてくれる人に対して、この場を楽しく幸せに過ごしてほしいとか、心に感動を届けたいって気持ちがすごく強くて、そういう想いで曲作りをすることが多いんです。だからステージでも、自分自身の「怒り」とか「哀しみ」を表現するってことはほぼないですね。なんか、目の前の人に向けて、心を込めて歌うことしかできなくて。
―― 曲作りをしている方からはよく「歌詞では唯一、自分の感情を曝け出せる」という声も聞くので、内澤さんの根本にある想いは意外でした。
そうなんですよ。他のアーティストの方と接していても、そこが僕はまったく違うんだなって思うところですね。andropの歌詞は、聴いてくれる方の存在ありきなんです。逆に、僕が僕だけの感情を吐き出した曲を作ったら、なんかメンバーに対しても申し訳ない気持ちになってしまうというか。たとえば、僕が何かに対して怒っている歌を作ったとして、それをメンバーと共有していなかったとしたら…。
―― “俺の歌”になってしまうということですね。
そうそう。メンバーは何を思って、この曲に自分の感情を乗せて演奏をすればいいんだろう…って考えてしまいます。だから、メンバーもライブに来てくれる人も、みんなが共有できる感情を、歌詞では表現したいと思うんです。表現者としてはちょっとダメなのかもしれませんけど(笑)。
―― 歌詞に対する「聴いてくれる方の存在ありき」という想いは、結成当初からあったのでしょうか。
いや、むしろバンドを始めた頃は、ライブがすごく苦手で嫌だったんです。だけど先ほどお話した「顔と名前を出したこと」っていうのが大きな変化のきっかけになったんだと思います。そこからだんだんライブを好きになっていく自分もいたし、ライブを好きにさせてくれた人たちに対してどういうものを返せるんだろうってことを考えるようになりましたね。だから今は、ライブでもらった想いを歌詞で返したい、という感覚がより強くなっています。ライブが一番、歌詞の影響を受ける場所でもありますね。
―― 歌詞に対して、メンバーの方は何か感想を言ってくれたりしますか?
それぞれに何か感じてくれるところとか、心境が重なるところがあると、それを伝えてくれたりします。今回の新曲「Joker」の歌詞を見せたときも「このフレーズは今の俺たちのことだね」とか。
―― ちなみにそれは、どのフレーズでしょう。
<のたうちまわれよ>ですね(笑)。