やさしくしてね すぐ死んじゃうから
やさしくしてね すぐ辞めちゃうから
この世にも 会社にも これっぽっちも 未練無いから
やさしくしてね すぐ死んじゃうから
やさしくしてね すぐ病んじゃうから
友よ 家族よ 同僚よ 誰か味方になってくれよ もっと歌詞を見る
―― 以前、鬼龍院さんが『関ジャム 完全燃SHOW』にご出演なさっていた時、とても細かく歌詞やコードの分析をされていたのが印象的でした。
僕は理系脳で、わりと音楽を数学のように考えている節があるので、歌詞を分析して説明したりとか得意だと思います。ただ、最新楽曲の研究時間はものすごく短いんです。誰かに「これ流行ってるよ」と言われて、一応聴いておこうかなぁくらいの感じで。まずは、どこが魅力なのか、ウケる要素なのかということを考えてみて…でも大抵は「ふ~ん」と思って終わりです(笑)。自分の気持ちとして「一回は聴いたぞ」ということにしているだけでしょうね。僕はいまだに懐メロを掘り返しているんですよ。
―― 公式サイトのプロフィールにも【90年代J-POP】が好きだと書かれていますよね。
【90年代J-POP】の何がこんなに僕の心を揺さぶるんだろう、ということを研究して、その研究結果を反映させるのがゴールデンボンバーの音楽のテーマなので。だから僕の作る音楽に新しさはいらないと思っています。最新の音楽ってそんなに受けつけられるものじゃないから。無理して流行りの曲を聴くこともないし、そっちを目指してもいません。なんとなくみんな、新しい音楽を聴いてるって言いたがるじゃないですか。
―― 流行っているから聴く、売れているから聴く、という方も多いのかもしれませんねぇ
そうそう。でも実際、その音楽を本当に心から良いと思っている人なんて少ない気がするんですよ。そうやって、音楽をファッションのようにまとう人を、僕は忌み嫌っている。怨んでいるんです(笑)。まぁその怨みが活動のエネルギーになっているんですけど。その点、うちのアルバムは裏切りません。
―― では【90年代J-POP】を研究して、そのアーティスト独特の手癖のようなものを見つけるのですか?
手癖というより「この音使いはあのアーティストもやっていたな。ここにグッと来るな。じゃあ僕の曲にも入れてみよう」とかよくありますね。たとえば“ZARD”さんと“FIELD OF VIEW”さんは、サビ直前の一瞬にシャラララン!というキラキラした音を入れてから、サビの和音に入ったりするんですよ。そこにグッと来たから、僕も取り入れてみたりとか。日本人に「どの時代の音楽が良かったか」ってアンケートしたら、絶対に90年代が1位だと思うんだよなぁ…。だからその良さを皆さんに認めさせる!ということを、僕は自分の使命のように感じております。
―― それだけ名曲をいろいろ研究していると、自身の曲のネタ切れやスランプになることって少ないですか?
たしかにあまりないですね。ただ「女々しくて」が売れ過ぎた時は、もう一曲こんな大ヒットを作り出さなきゃと思っていたけど全然できなくて、スランプなのかなぁと思っていました。でもそんなこと関係ないんですよね。「女々しくて」だって、リリースした時は売り上げ77位で、そのまますぐ圏外になって、しばらくはファンの間でしか知られていない曲だったんです。それが2年後くらいに何故かヒットしましたからね。どんな曲がいつ何で流行るかなんて誰にもわからないんですよ。だから、僕はもうヒットしなきゃという悩みからは脱出して、自分が良いと信じる曲を作るのみです。
―― ただ不思議なのは、鬼龍院さんはこんなに職人的に音楽がお好きなのに、ゴールデンボンバーがエアーバンドであるというところです。結成するとなった当初「とにかく演奏が上手いやつを集めて最強の演奏を!」という気持ちにはなりませんでしたか?
あ~、なんでならなかったんだろう…。なんか…高校で軽音楽部に入り、さぁバンドやろう!ってなったときに「やっぱりバンドって難しいなぁ」って思い知っちゃったからかなぁ。そもそも志が低い人しかいないし、簡単に楽器なんて上手くならないし、結局は脱退・解散みたいになっちゃうじゃないですか。当時、僕は高校三年間でバンドを思いっきりやって、卒業したら芸人の世界に進みたかったので、ここで音楽欲を発散しておかないと人生に悔いが残ると考えていたんですね。だから「やる気のない奴らに捧げる時間はねぇ!」と…。
―― もうそういうのはうんざりになってしまったんですね。
ホントうんざりです!でもそんなときにDTMとかMIDIに出会ったんですよ。僕の好きな【90年代J-POP】は音数が多くて華やかなんですけど、そういう曲を作るのにもってこいなんですよね。それからしばらくして、ちょっとした音楽教室で、打ち込みでもすごくリアルに楽器を鳴らせるという方法を習ったんです。メリット満載じゃないかと。そしたらもう楽器を弾くためのメンバーなんて必要なくなりましたね。大体、打ち込みと生楽器の音の違いなんて100人中99人は聞き分けられないでしょうし。でも、これ言うとねぇ「できるよ!」って怒る人がいるから…。まだ生楽器への幻想ってあるんでしょうねぇ。だから僕もあんまり強く主張しないようにはしています…(小声)。
―― なるほど…(笑)。では、楽器を弾くためではなく、メンバーとしてあの3人を選んだのはどうしてでしょうか。鬼龍院さんにとってなにか特別な魅力があったとか。
……とくにないんですよねぇ(笑)。でもたまにすごいなぁと思うところはあります。たとえば、あの人たち何故か、実は努力してるみたいな印象をみなさんに与えるのが死ぬほど上手いんですよ!そこはすげー尊敬しています(笑)。どうやって情報操作しているのか。もはや僕も参考にしたいくらいですよ…。
―― でも、もう10年以上一緒に活動しているんですよね。今まで解散や脱退のような話になったことはありませんか?
まぁグループというものは、金が入ってくれば解散なんてしないんですよね(笑)。だけど、すっごく急激に環境が変わったときって、やっぱりその渦中の人間はかなりの精神的ストレスがあるってよく言うじゃないですか。以前、まさに僕もそれで。好きな音楽を作りたいという表現欲と、バンドに対する責任感と、すべてが僕だけに押し付けられる哀しさ、空しさ、憤り。そういうものを同時に感じて、味方がいなくなったように思ったときは、解散というか、バンドなんてどうでもいいから消えてしまおうかなと思いました。僕が死んでも3人でやってくれれば…と。
―― …それは解散よりも重いですね。
ふふ…そうですよね(笑)。でも解散や脱退という考えは全くないですね。選ぶ気がない。それよりも、僕が音楽をやるかやらないかという問題だと思います。
―― では、ゴールデンボンバー4人共通のモチベーションというと何でしょうか。
やっぱり僕らはライブでちやほやされるのが大好きなんですよ。みなさんにキャーキャー言ってもらえるのが何よりの快感で、そこだけは4人一致しているんじゃないかな。だからライブはメンバーみんな楽しく元気にやってくれていると思います。彼らはホントそこだけです(笑)。
―― この『キラーチューンしかねえよ』のアルバムツアーも楽しみですね。
そうですね!そうなんですよ!僕はワンマンライブを作るときって、バラエティー番組を作るような気持ちでいて。だから「ここはボケをわかりやすくしなきゃいけない」ってところではテロップを出したり。なんとなく『めちゃイケ』を想像してもらえるとわかりやすいと思います(笑)。その特番を作る感覚なんですよね。バンドのコアなファンしかわからないような話もステージ上ではしないように気をつけています。ライブはまったく曲の予備知識がない人でも、というより、予備知識がない人にこそ楽しめるものじゃなきゃいけないと思っています。