家入レオに<君とのご飯が恋しくて>ってなかなか…。

―― 今作には自作曲と提供曲がほぼ半々の割合で収録されておりますが、アルバムの入り口となる「ずっと、ふたりで」は、初めてレオさんが作詞作曲を自分以外の方にお任せした楽曲でもあります。これまでご自身の感情をバッと歌詞やメロディーに込めてきたレオさんにとって、かなり勇気のいる挑戦だったのではないでしょうか。

やっぱり一番最初はすごくドキドキしました。でも、作詞作曲者の杉山勝彦さんがレコーディングに来てくださった時に「僕、音楽やっていて良かったです」って言ってくれて。それがものすごく嬉しかったし、歌って良かったなって思ったし、私が歌えばちゃんと私の一部になっていくんだと感じることができたんです。歌うことって誰にでもできるからこそ、今後も「家入レオに歌ってほしかった」というところに到達していきたい。今はそこにどっしり気持ちがあります。だから、もちろん自分でも曲は書いていきますけど、新しい方々ともどんどん音楽を作っていきたいですね。

―― その「ずっと、ふたりで」で言うと、冒頭の<“あたしを全部知ってしまっても変わらず好きでいてくれるかな?”>というセリフ型のフレーズや、サビで<愛してる>と言い切るようなところが、レオさんの新境地のように感じてグッときました。ご自身が今回のアルバムでとくに“挑戦曲”だなと思う楽曲はありますか?

photo_02です。

それこそ杉山さんからの新曲「ありきたりですが」かなぁ。多分「ずっと、ふたりで」は、初めて私がど真ん中のラブソングを歌いつつも、一人称に<僕>を使うことで、それまでの家入レオらしさと新しさのバランスを取っていたところもあると思うんです。でも「ありきたりですが」は、もう<わたし>って歌っているし、こんなに自分が女性らしさを出して歌った曲は今までなかったと思います。他の方なら家入レオに<君とのごはんが恋しくて>ってなかなか歌わせようとしないし(笑)。最初この歌が届いた時、結構こちらのスタッフのなかでも「どうだろう…」という意見が出て。だけどそんな物議を醸す時点で「持ってるなぁ…!」って思ったから、これは私が「歌う!」って言ったんです。そうした意味でも挑戦しがいがありました。

―― では「もし私が主人公だったらここは別の感じ方をするだろうな」と思うようなフレーズなどもあったりしますか?

そういうものは言って直してもらっていますね(笑)。実体験じゃなくても「自分がその立場になったらそう思えない」というものは歌わないかも。気持ちを理解できないまま歌っちゃうと、歌わされているのと同じになっちゃうから。ただ、リード曲になっている「春風」は、キャッチーにするために<シルエット>や<メモリー>というワードであえて耳残りするようにしているんですけど、最初は「その言葉を私が歌うのはどうなんだろう…」って考えたんです。だけど違和感が面白さになっているから心に残るんだろうなって思って、このまま歌うことにしました。もし自分らしさとはちょっと違うかもって迷いが生じた時は、ちゃんと納得してから進みたいし、やるなら“狙って”歌いたいですね。

―― 個人的には、とくにレオさん作詞作曲の「TOKYO」にハマりました。かつての「サブリナ」の女の子が成長したら、こんな女性になるんじゃないかなぁと妄想したり…。

そういう聴き方めっちゃ面白い!嬉しいなぁ。「TOKYO」はアルバムの一番最後に作った曲でして、今の私のマインドがそのまま表れています。福岡から上京してから「この東京という街自体がアトラクションだなぁ」って思うことがどんどん増えているんです。刺激的だけど、傷付くこともたくさんあって、でももうそんな東京を離れられない自分がいて。あと、この歌は地方出身者だから書けた楽曲だとも思いますね。なんかねぇ…やっぱり地方組からは「東京で一旗揚げるぞ!」って情熱をすごく感じるんです。でも東京の人は良くも悪くもずっと平熱。その余裕ある感じがクールだなって、憧れでもあり、ちょっと荒んだ気持ちになったり(笑)。っていういろんな想いのエキスが詰まった曲になりましたね。

―― この歌の主人公は、東京という街で<あなた>に傷つけられてはいるんですけど、一方で<面白くなりそうだ><負けちゃいられないわ>と、ツラいことさえどこか楽しんでいますね。その強さは、先ほどレオさんがおっしゃっていた「苦しいことさえも味わい尽くしたい」という言葉にも通じます。

そう、そうなんですよ!なんか女性って、誰でもこういう部分を隠し持っているんじゃないですかね。ただじゃ起き上がれない!絶対に強くなってやる!って。私は“楽しいこと”と“苦しいこと”って、同じアドレナリンが出ていると思っているんです。「うわ!きっついパンチ来たぁ…」って思っていながらも、ハイになって、その刺激が原動力になるんですよね。でもこういう歌詞は10代では出てこなかったし、悔しくて泣いているだけだったと思う。今の私だから生まれた曲ですね。

―― また<2020年 東京オリンピックは誰といて どんな恋してどう遊ぼう?>というフレーズも“今の私”が表れていて『TIME』というアルバムタイトルにもピッタリですね。

あ~まさにその通り。オリンピック…意外とすぐですよねぇ。もう今、それこそプランニングを組んでいて、早くも2020年の仕事のスケジュールが入ってきていますからね(笑)。すごく先のことだと思っていたら、割とすぐだなって感覚です。まぁ2年後…自分が何をしていても良いですけど、とにかくハッピーでいたいです!

―― そういえば、ここまでとことん恋や愛を歌ったアルバムって初めてではないでしょうか。

ねぇ。なかったと思います。私も今年で24歳になるので、より伝えていきたいことが明確になっているのかな。たとえば曲のタイトルも今までは英語が多かったんです。どこか歌詞に持たせる意味がホワッとしていたというか。でも今回はほとんどが日本語のタイトルだし、英語表記の「TOKYO」や「Relax」もカタカナとして意味が伝わる言葉なんですよね。だからタイトルでも歌の芯をしっかり表せるようになってきたような気がします。そして今、自分が一番興味を持っているテーマが“男女”についてなんですよね。「祈りのメロディー」もそういうことを考えていくなかで生まれました。

―― たとえば、どんなことを考えるのですか?

私は出会った最初の頃ってあまり男性とか女性とか意識しないんですね。話していて面白いと思ったらご飯に誘ったり、どこかに行ったりして、だんだん「あ、好き」って瞬間がいっぱい重なっていって“愛”みたいなものになった時、初めて性別を自覚するんですよ。そして、相手が女の子の場合、私は恋愛には発展しないので、その愛情が「一人の女性として幸せになってほしい」という気持ちに繋がります。そうやって同性だと“ずっと一緒”が叶いやすいじゃないですか。だけど、相手が男性の場合は“お付き合いをする”とかその先が望めてしまうからこそ「どんなに好きになってもこの人とはサヨナラがゴールなんだなぁ」って思ってしまうんですよね。

―― わかる気がします。男女で友達でい続けるのもなかなか難しかったりしますしね。その「サヨナラがゴールなんだなぁ」というのは、仮にお付き合いをしてからもそう思うのですか?

そう、私は思っちゃう。だけど、その人のことを中途半端に好きなのかと訊かれたらそれは違って、全力で好きなんです。ただ、現実的にこの年齢で自分がその人と結婚するかと訊かれても、多分違うし…。お互い、これからもっと成長して、いろんな人と出会っていくんだとすると、結局サヨナラじゃないかなって今は思うんですよ。だからよく「あー、この人が女性だったら良かったのに」って思ったりもします。人間として「好き」という気持ちは同じなのに、どうして男性とか女性とか関係してくるんだろう…、とかそういうことを考える時間がとても多いですね。だからこそ、愛がギュッと集まったアルバムになったんだと思います。



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