前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析することで、キラっと輝くキラーチューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。第2回は、人気の旧作に迫ってみたい。
 毎月、掃いて捨てるように膨大にリリースされるアーティストの新曲。そして、ヒットすることもなくデータベースの負荷にしかならない楽曲、更には瞬間的にヒットしても数ヶ月内に記憶の彼方に葬られる楽曲も多数あり、とりわけ、情報化社会の現代においてこの傾向は年々顕著になってきている。しかし、そんな中でも発売から1年以上経過してもなお支持され続ける楽曲があるのだ。

第2回:旧作ランキング(09年9月:前月データより分析)
テーマ
順位
順位
アクセス
指数
タイトル
アーティスト
発売日
1 2
100.0
キセキ GReeeeN 2008/5/28
2 17
35.7
碧いうさぎ 酒井法子 1995/5/10
3 31
25.0
愛唄 GReeeeN 2007/5/16
4 36
22.8
366日 HY 2008/4/16
5 45
20.9
One Love 2008/6/25
6 64
15.9
ガーネット 奥華子 2006/7/12
7 65
15.9
LIFE キマグレン 2007/7/25
8 66
15.3
創聖のアクエリオン AKINO 2005/4/27
9 73
14.3
恋のメガラバ マキシマム ザ ホルモン 2006/7/5
10 75
14.2
Aqua Timez 2008/5/8
11 79
13.6
Love so sweet 2007/2/21
12 90
12.4
NAO HY 2006/4/12
13 91
12.3
変わらないもの 奥華子 2006/7/12
14 92
12.3
どうして君を好きに
なってしまったんだろう?
東方神起 2008/7/16
15 93
12.2
ふたりごと RADWIMPS 2006/5/17
16 111
10.9
三日月 絢香 2006/9/27
17 117
10.8
Song for… HY 2004/7/14
18 119
10.8
有心論 RADWIMPS 2006/7/26
19 121
10.7
A・RA・SHI 1999/11/3
20 125
10.5
告白 FUNKY MONKEY BABYS 2008/7/23
  旧作1位は、GReeeeNの「キセキ」。総合順位でも前回1位、今回もB'z「イチブトゼンブ」の僅差で2位と驚異的なヒット数を保っている。1年を通してのカラオケ人気に加え、今夏は映画『ROOKIES』の大ヒット(ただしこちらの主題歌は09年の「遥か」)や、高校野球の名場面を報道する際にBGMとして起用され一層アクセスが伸びた。GReeeeNは他にも「愛唄」が3位にランクイン、これら2作から醸し出される安定したアーティストのブランド感がニュー・アルバムの売上(まもなくミリオン突破)にも拍車をかけているのだろう。

 旧作2位は、"白いくすり"で世間を仰天させた酒井法子の「碧いうさぎ」。こちらは何と14年も前の作品だ。通常、アーティストの逮捕時には、楽曲ヒットは起こりづらいのに、本作の場合、歌詞検索は勿論、音楽配信(iTunes 1位、現在は配信停止)やカラオケ(UGA 1位)でも人気が高騰している。"罪を憎んで、作品憎まず"というJ-POPファンの為に、本作が再び通常通り流通される日が来るのを願う。

  他にアーティスト別で強いのは嵐とHYの2組。嵐は、8月19日発売の10周年ベストがミリオンヒット中で、映画&ドラマ『花より男子』の両主題歌「One Love」「Love so sweet」が人気だと分かる。また、意外なところではデビュー曲「A・RA・SHI」に次いで人気の旧作は06年発売、16thシングルの「きっと大丈夫」(旧作順位21位、10.4ポイント)。本作は、彼らの中での低迷期(とはいえ20万枚以上)の作品だが、3年をかけて着実に人気となったナンバー。平井堅が各メディアで"2006年のNo.1ソング"と推薦したり、"カラオケではサクラップがポイント"とアドバイスしてきたことも、間接的にプロモーションとなっているのかも。

  さらにHYは、3枚のアルバムから1曲ずつランクイン。「Song for・・・」や「NAO」は、ノンタイアップでありながら根強いカラオケ人気があり、これに伴って歌詞検索でもロングヒットしている。彼らのようにTV出演が少なくとも、楽曲のチカラそのものが大きな牽引力になる好例もあるのだ。このように、旧作の"キラ☆歌"は、いずれJ-POP史に残るスタンダードとして教科書に採用されたり、観光地の歌碑にされたりするような名曲予備軍とも言える。



碧いうさぎ/酒井法子
「Watercolour 」


366日/HY
「HeartY 」

 
 06年発売の4thシングル。角川アニメーション映画『時をかける少女』の主題歌に起用され、公開当時はオリコン最高位51位ながら約4ヶ月にわたってランクインするいわば"セミロング・ヒット"だった。さらに、その後、07年、08年、09年と地上波テレビで放映される度に、CDの売上、着うたやパソコン配信のダウンロード、そして歌詞検索数が急増するという現象が毎回起こっており、まさに"記録"ではなく、人々に愛され続ける"記憶的ヒット"と呼ぶにふさわしい名曲。
シンプルなピアノ演奏に合わせて「あなたと過ごした日々をこの胸に焼きつけよう 思い出さなくて大丈夫なように」と繊細に歌う様子は、映画の名シーンが鮮明に浮かび上がるほど印象的。同シングルのカップリングだった「変わらないもの」も13位にランクイン。こちらの再浮上も同映画の挿入歌として起用されたことが大きい。ちなみに、「ガーネット」を収録した企画CD『想いうた〜歌姫エール・ソングス』(ビクター)も発売されている。本作は、KOKIA「ありがとう」、熊木杏里「新しい私になって」、鬼束ちひろ「私とワルツを」、つじあやの「Sweet Happy Birthday」など「ガーネット」同様、20代を中心に人気の名曲が並んでいる。


ガーネット/奥 華子
想いうた〜歌姫エール・ソングス」より



ここではデビュー1年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。


 今月は女性シンガーソングライター、阿部真央に注目した。彼女は、1990年大分県出身で、高2の頃にヤマハのオーディション『TEENS' MUSIC FESTIVAL』で入賞し、デビュー前にして既に地元のメディアでは活躍していた。その後、09年1月にアルバム『ふりぃ』でデビュー、オリコン17位を記録、約半年間に及ぶチャートインで、2万枚を突破。「歌ネット」での歌詞検索数も新人別で前回2位、今回1位と安定して上位入りしている。
 楽曲別の1位は最新シングル「貴方の恋人になりたいのです」。強いボーカルやかき鳴らされたアコギに、恋人へのピュアな気持ちが「です」「ます」調で語られている点が、若い女性の微妙な心理バランスを表現しており、同世代から大いに共感を得ているのでは。ちなみに、5位の「会いたいよ」も収録されたCDシングルの歌詞カードは彼女の手書きによるもので、いっそう心に響く。
 他にも『カルピスウォーター』CM曲の「I wanna see you」も人気だが、彼女の場合、新人なのに人気が1〜2曲に集中していないことが大きな特徴。やはり、様々な楽曲を聴いてみたい、歌詞を読んでみたいと思わせる魅力があるのだろう。椎名林檎の大胆さと、YUIの繊細さを併せ持ったようなボーカルが、今度どう成長していくのか期待したい。

阿部真央人気曲TOP5
順位
占有率
曲名
初収録作品
発売日
1
39.3
貴方の恋人になりたいのです 2ndシングル・A面曲 2009/8/5
2
17.7
I wanna see you 1stシングル・両A面曲 2009/5/27
3
7.9
ふりぃ 1stアルバム 2009/1/21
4
7.4
伝えたいこと 1stシングル・両A面曲 2009/5/27
5
6.0
会いたいよ 2ndシングル・カップリング 2009/8/5



つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!などでヒットチャート解説に関する連載を執筆中。9月16日には山田邦子と野沢直子の『GOLDEN☆BEST』が発売、キテレツな歌詞の迷曲満載なので、よろしければどうぞ♪

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