前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラーチューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。今回は、女性ソロ・アーティストの人気曲をしっかりと見極めたいと思う。
昨今は、女性アイドル真っ盛りで、アイドル・グループの人数を増員した方が如実にCDのセールスが上がるように、CDチャート(特にシングル)の上位が一部の熱心なファンの大量購入によって大方が決まってしまう時代に突入した。この不景気の折に、ヒット作があること自体は素晴らしいのだが、それによって個々のファンが1枚ずつ購入するようなヒット作が見えづらくなっているのも事実だ。その煽りを受けているのが、今回取り上げる女性ソロ・アーティスト達だろう。しかし、これを見れば、活躍している女性ソロもしっかりいることが分かる。
第25回:女性ソロ・アーティストTOP15 (2011年8月:7月データより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス
指数
曲名
アーティスト
CD発売日
1位
2
100
Esperanza 西野カナ
2011/5/18
2位
9
44.1
また明日... JUJU
2011/6/1
3位
10
43.7
HELLO 〜Paradise Kiss〜 YUI
2011/6/1
4位
26
30.7
441 miwa
2011/6/29
5位
30
28.5
ふいに 板野友美
2011/7/13
6位
31
28.2
Distance 西野カナ
2011/2/9
7位
36
26
恋花火 CHIHIRO
(配信限定)
8位
40
24.5
Rollin' Days Superfly
2011/6/15
9位
42
24.3
さよならの夏 〜コクリコ坂から〜 手嶌葵
2011/6/1
10位
55
21.3
君って 西野カナ
2010/11/3
11位
56
21.2
Alright 西野カナ
2011/6/22
12位
60
20.5
Best Friend 西野カナ
2010/2/24
13位
66
19
PONPONPON きゃりーぱみゅぱみゅ
2011/8/17
14位
67
18.9
Flower 前田敦子
2011/6/22
15位
71
17.4
if 西野カナ
2011/8/4

 ランキングを見ると、上位15作のうちなんと6作が西野カナ。3rdアルバムが6月にリリースされたこともあるが、6月〜7月は他にもSuperfly、JUJUなどヒット・アルバムがあった中でダントツなのは、やはり彼女の歌詞を支持するリスナーが相変わらず多いということだろう。この圧倒的な結果から、彼女のアルバムのセールスが前作比で4割減となっているのは、その作品力の低下というよりも、グループ・アイドルばかりを優遇し、ソロ・アーティストを冷遇しがちなメディアの影響も大きいかもしれない。ちなみに、西野カナのシングルは大半が1種類での販売。つまり、売上げ10万枚のシングルならば、10万人が購入したヒット作なのだ。それゆえ、歌詞検索でも顕著に上位となっている。

 2位、3位、4位とアルファベット系の女性アーティストが並ぶが、女性ソロの1位〜4位は、レーベルこそ異なるものの、全員SME系列のアーティストが独占。SMEの女性アイドル・グループは9nineやbump-y、Tomato’nPineなど、他社に比べてやや遅れをとっているが、その分、女性ソロでは圧倒的なパワーを見せており、さすが70年代からのお家芸だと感心する。アルファベット系では、7位に「歌ネット・パワープレイ」で特集されたCHIHIROもランクイン。凛とした美声なので、今後も歌詞がネックとなりそう。

 AKB48からソロ・デビューした板野友美と前田敦子もそれぞれ5位と14位にランクイン。AKB本体の人気からすると地味に見えるかもしれないが、今月度の歌詞検索上位TOP100には、CDセールスではダントツのSKE48、NMB48など関連ユニットも全く入っておらず、AKB48以外ではNot yet(「波乗りかき氷」が総合65位) と板野、前田のソロのみなので、実はこの二人はかなり健闘しているのだ。つまり、ソロ・デビューするということは、それだけ歌に注目が集まるということだ。80年代、おニャン子クラブの勢い以上に工藤静香が大ブレイクしていったように、今後AKBなどグループ出身アイドルの中から、大衆を圧倒するような女性ソロが生まれることも期待したい。

 その他、同世代に大人気のモデル、きゃりーぱみゅぱみゅが、CD発売前から大きな話題となって13位にランクイン、中田ヤスタカのプロデュース・マジックで、Perfume同様人気を集める兆しが現れている。
以上のように、今回のランキングから、女性ソロの人気曲があることが分かった。この結果からも、歌詞検索は、CDセールスよりもいち早く、人気の男女ソロ・アーティストを見出せる重要なランキングの一つと言える。今後も、注目していくべき指標だろう。




Esperanza
西野カナ



また明日...
JUJU


HELLO 〜Paradise Kiss〜
YUI

 06年にスタジオジブリの映画『ゲド戦記』の主題歌「テルーの唄」でデビューし大ヒットした手嶌葵が、5年ぶりにジブリ映画『コクリコ坂から』の主題歌を担当し、再び注目を集めている。
もちろん、今回のヒットには、ジブリ映画そのものの影響力が非常に強く(余談だが、クラシックでもアカペラでもボサノバでも琉球風でも、果てはデスメタルでもジブリをカバーすればヒットするほど、国民的な認知度を持つブランドなのだから)、それがヒットの要因に違いないのだが、彼女の押し付けがましさがなく、儚いけれど、スモーキーでどこか孤独ともうまくつき合っているような唯一無二の歌声も大きな魅力だと強く感じる。ちなみに、本作は76年に森山良子が歌った「さよならの夏」がオリジナルで、森山版は自然を見渡すような雄大さが聞きどころだ。
この4枚目となるCDシングルでは、カップリングに谷山浩子と宮崎吾朗監督が手掛けた「朝ごはんの唄」を収録。こちらは軽やかなピアノと、日常的な歌詞が楽しい。アルファベット系のシンガー・ソングライター特集でも、漢字苗字+カナ名前の着うた系歌姫特集でも、ましてや漢字フルネームの女性アイドル特集でも漏れてしまう手嶌葵だが、だからこそ他に追われることなく、着実に作品を発表していってほしい(ヤマハ所属なので、その点は安心している。)。


※ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。


今月は男性シンガー・ソングライターのRakeに注目。CDチャートでは、あまり目立たないが、歌詞検索では「100万回の「I love you」」が、5ヶ月連続でTOP100入りしているのだ。ソナーポケット「好きだよ。〜100回の後悔〜」同様に、今年の着実な2大ヒット曲と言えるだろう。
  Rakeは、2010年1月にシングル「Fly away」でデビュー、続く「世界は今日も僕らをのせてまわる」共々TOP100入りを逃したが、前述の3rdシングル「100万回の「I love you」」が「ヨコハマタイヤ」CMに起用され、そのキャッチーでピュアな歌詞が注目され、初めてCDでTOP30入り、着うたではTOP10入りを果たした。その後、現在も仙台在住であることから、震災後のエールソングとしても注目を浴び、ロングヒットを続けている。
  現時点では、この1曲に人気が集中しているが、アルバム『First Sight』には、スローバラードの「誓い」、フィンガー・スナップが印象的な「君へのLOVE SONG」、フォーク・ロック調の「ただ会いたくて」など、曲調は異なれどストレートなラブソングが際立っている。彼のブルージーな声で聴くと、ストレートな想いを伝えるのに気恥ずかしさが無くなるので、これも一種の発明だろう。ちなみに、他にそんなアーティストを見渡すと、キマグレンやMONKEY MAJIKあたりか・・・思えば、どちらも同じ事務所グループの先輩アーティストだった!その“決してバカにされない”エドワード・エンターテインメント・ブランドのクオリティーの高さと一貫性にあらためて驚かされる。




順位
占有率
楽曲
初収録作品
発売日
1
71.20%
100万回の「I love you」 3rdシングル
2011.3.9
2
5.70%
誓い 1stアルバム『First Sight』
2011.6.1
3
3.10%
君へのLOVE SONG 1stアルバム『First Sight』
2011.6.1
4
2.80%
ただ会いたくて 1stアルバム『First Sight』
2011.6.1
5
2.00%
First Sight feat.熊谷和徳 3rdシングル c/w
2011.3.9



つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
  ここ何回か女性アイドルについて辛口な分析が多いですが、私は決してキライではありません。・・・というか、好きじゃなければアイドル出身の岩崎宏美とか河合奈保子とかCD企画の仕事が出来るわけがない(笑)。20世紀のように、音痴を開き直った生唄もどうかと思いますが(苦笑)、マイクを口に当てて、最高の笑顔を決められるのは、歌をないがしろにしている感じがして一層受け付けません。生歌率を上げてこそ、アイドルが正当に評価されると思います♪

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