前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラーチューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。今回は、40歳以上の中堅からベテラン・アーティスト(以降、"R40アーティスト"と呼ぶ)の人気曲を分析してみた。8月のCDチャートは、B'z、久保田利伸、桑田佳祐、山下達郎などが上位を賑わせ、AKBとジャニーズ、K-POP勢を除くと、まるで90年代にタイム・スリップしたようになっていた(笑)。それだけ、今のCDヒットがアイドルに大きく依存しているということと、それと同時にそれ以外のブレイク・アーティストが見えづらくなっているのだろう。その意味では、ビジュアルの魅力に大きく依存しない着うたやカラオケ、そして歌詞検索などの人気ランキングは今後も確かな注目作を見出すのに役立つランキングと言えるだろう。
第26回:R40アーティストTOP10 (2011年9月:8月データより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス
指数
曲名 アーティスト CD発売日 生年月日
(※)
1位
1
100 Appreciation 槇原敬之 2011/7/27 1969/5/18
2位
2
94.1 家族になろうよ 福山雅治 2011/8/31 1969/2/6
3位
24
40.2 C'mon B'z 2011/7/27 1964/9/23
4位
52
27.1 GOOD LUCK MY WAY L'Arc〜en〜Ciel 2011/6/29 1969/1/29
5位
86
19.1 HANABI Mr.Children 2008/9/3 1970/3/8
6位
124
15 Don't Wanna Lie B'z 2011/6/1 1964/9/23
7位
152
13.6 不完全燃焼 石川智晶 2011/7/27 1969/3/29
8位
165
13.3 stone cold FictionJunction 2011/8/3 1965/8/6
9位
173
13.2 かぞえうた Mr.Children 配信限定 1970/3/8
10位
196
12.3 さよなら傷だらけの日々よ B'z 2011/4/13 1964/9/23
次点
199
12.1 Golden Smile
feat. EXILE ATSUSHI
久保田利伸 2011/8/3 1962/7/24
(※)バンドやユニットの場合は、メインボーカル(あるいはユニットの中心人物)の生年月日で判断した。

 そんな中、R40アーティストの人気曲1位は、槇原敬之のアルバム収録曲。これは、アルバムのリード曲でもないのだが、ネット上で"原発擁護ソングでは?"と、掲示板やTwitterで盛り上がり、遂にはR40のみならず、総合ランキングでも月間1位となった。TVでは報じられない楽曲が1位になるというのもネット上のランキングスゆえの興味深い特長だ。

 2位は、福山雅治のシングルでは初となる結婚ソング。発売前週には初の沖縄LIVEを成功させており、活動20年を過ぎ、今なお"初モノ"に挑み続ける本人及びスタッフのパワーには感心するばかり。これが、コアファン向けのCDのみならず、ライトなファンが興味を持つ歌詞検索でも支持され続ける秘訣だろうか。3位〜5位の、B'z、ラルク、ミスチルは、10代にとって生まれる前から活動しているのに、憧れのアーティストとして挙がるほど。現在も、ミリオンヒットを連発していた90年代と変わらないパワフルな楽曲も多く、それだけ年齢を感じさせないことが、上位常連である要因なのだろう。その点、バンドであることは有利なのかもしれない。TOP10内の男女比を見ると、8:2と全体に男性が圧倒的に多く、このことから女性の方が、結婚や出産によるライフスタイルの変化で、若者に共感され続けることが難しいようだ。

 そんな中ランクインしている7位の石川智晶と8位の梶浦由記のソロ・プロジェクトFictionJunctionは共にアニメのテーマ曲。不利になりがちな女性にとってアニメはアンチエイジングの強力な武器のようだ。
それにしても、総合TOP200内のR40人気曲は、たったの11曲で、これはCD市場と比べると圧倒的に少ない。しかも、全員が40代で、R50世代は一人もいない。このことからも、1曲勝負で注目されやすいのは圧倒的に若者が有利ということが分かる。

 ただし、ここで注意すべきなのは、R50アーティストは楽曲別では突出していないものの、アーティスト別では、38位にサザンオールスターズ、57位に中島みゆき、61位に松任谷由実、82位にさだまさし、84位に山下達郎、96位に桑田佳祐と大量に上位入りしている事実だ。しかも、中島みゆきや松任谷由実、さだまさしは、8月にリリースもなく、この月だけ突出している訳ではない。つまり、長年活動しているアーティストは、リリースの有無に関わらず、歌詞は注目され続けているのだ。このことからも、長年活動するアーティストの屋台骨を支えるのは、やはり言葉のチカラということが証明されている。今後も、息の長さを予感させるブレイク・アーティストを、歌詞検索の人気曲から注目してみるのも良いだろう。




Appreciation
槇原敬之



家族になろうよ
福山雅治

C'mon
B'z

 槇原敬之の自主レーベルから発売されたオリジナル第1弾『Heart to Heart』収録の1曲。発売は7月27日だったが、8月3日深夜から8月4日にかけて、ネット上で"槇原敬之が東電、原発擁護ソングを発表"と噂され、SNSやTwitterで一気に広がったというもの。ちなみに、当人は、その週のTV番組で愛犬のことや音楽や人への感謝を語っていたので、本人発のプロモーションではないだろう。実際に歌詞で全体像を見てみると、電気云々よりも村八分的集団心理への警告じゃないかと思えるし、実際に楽曲を聞いてみると、アルバム全体の中での心を大切にしたいという流れからもはみ出していない。「Appreciation」の意味は、「正しく理解すること」。そういえば、「世界に一つだけの花」も、"No.1を目指さなくても良い、と歌ったゆとり世代を象徴した悪例"みたいに揶揄されることもあったが、SMAPの初出から10年近く経った今でも各種チャートに入ってくるということは、それだけ楽曲に励まされている人が多いということなのだろう。「Appreciation」が数年後"Appreciate"されるかどうかは、私たちのネット上でのマナーやエチケットにかかっているのかもしれない。


※ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。


 今月は、ファッション誌で人気のきゃりーぱみゅぱみゅに注目。彼女は、1993年東京都生まれで、奇抜なファッションとキュートなルックス、時に強烈な変顔をすることで女子高生たちからの支持を集め、2010年に配信デビュー、そして今年8月17日にミニ・アルバム『もしもし原宿』でCDデビューを果たした。
 本作は、capsuleの中田ヤスタカの全面プロデュースによるテクノ・ポップだが、「チェリー/チェリー/チェリーボンボン」「PONPON/うぇいうぇいうぇい」など、彼女のキャラクターにふさわしくぶっ飛んだ歌詞が特徴的。また、声のエフェクト処理がPerfume等と比べて多少少なめなのも、彼女らしさをより前面に出すためだろうか。
 歌詞ランキングではiTunesで世界23カ国にて配信され話題となった「PON PON PON」が突出しているが、アルバム後半の「ピンポンがなんない」や「jelly」あたりはPerfumeが歌ってもおかしくないくらいの可愛いガールポップ。ちなみに、アルバムの初回プレスには、彼女の変顔満載のフォトブックを封入。木村カエラや土屋アンナのように、モデル兼業アーティストとして更にブレイクするか期待したい。

順位 占有率 楽曲
1 73.6% PONPONPON
2 9.8% jelly
3 4.6% チェリーボンボン
4 4.5% きゃりーのマーチ
5 3.9% ピンポンがなんない
6 3.5% ちょうどいいの

※収録作品は、すべてデビュー・ミニ・アルバム
「もしもし原宿」。





つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 前川清がカバーしたサザンオールスターズの「SEA SIDE WOMAN BLUES」カバー(正確には、ビートたけしがテレビ番組のエンディングで歌っていたのがオリジナル)を聞いて、夏の終わりを感じる今日この頃。この歌の「"愛"という字は真心で/"恋"という字にゃ下心」という部分は秀逸ですよね。こういう唸らせる作詞家さんやアーティスト、どんどん出てきて欲しいなと思います!

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