前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて"キラ☆歌")を発掘しようというこのコーナー。今回は、タイトルが"ひらがな"の楽曲人気を分析してみた。
今月の総合ランキングでもダントツとなっている、きゃりーぱみゅぱみゅ「つけまつける」が示すように、最近は、ひらがなタイトルの上位入りがかなり多い。今月も、総合TOP100には11曲のひらがなソングがランクインしており、昨年1年間での平均=5.8曲の倍近くにまで増えている。やはり、これは、"ひらがな"の持つマジックが作用しているに違いない。そういえば、冒頭のきゃりーぱみゅぱみゅは、よくメディアで"ひらがなって可愛い"とコメントしているが、服装やメイクのみならず、言葉の面でも流行を先取りしているのか・・・と、あらためて感心した。
第31回:ひらがなソングTOP10 (2012年2月:2012年1月のデータより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス
指数
楽曲名 アーティスト CD発売日
1位 1 100 つけまつける きゃりーぱみゅぱみゅ 2012/1/11
2位 3 38.6 たとえ どんなに... 西野カナ 2011/11/9
3位 11 19.5 やさしくなりたい 斉藤和義 2011/11/2
4位 17 15.3 いつかきっと… EXILE ATSUSHI 2011/9/14
5位 20 13.6 あなたへ EXILE 2011/11/23
6位 21 13.6 はじまりのとき 絢香 2012/2/1
7位 22 13.4 「でも…。でも…。でも…。」 ソナーポケット 2012/1/25
8位 35 10.8 ずるいよ… Milky Bunny 2012/1/11
9位 57 7.5 あとひとつ FUNKY MONKEY BABYS 2010/8/4
10位 59 7 ずっと aiko 2011/11/23
11位 69 6.7 きっと、ずっと 井手綾香 2012/1/25
※句読点や「」などを除き、ひらがなだけのタイトルを対象とした。

 テーマ順位を見ると、3位の「やさしくなりたい」や9位の「あとひとつ」がランクイン。共にロングヒットとなっているが、もし「優しくなりたい」や「あと一つ」だったなら、メッセージ性の強さだけが前面に出てしまったのではないだろうか。ひらがなにしたからこそ、より幅広いリスナーに届いたのだと思う。ちなみに、筆者がこの"ひらがなマジック"に興味を持ったのは、1982年の河合奈保子「けんかをやめて」。もしこれが、「喧嘩を止めて」だったら、シリアスな格闘ソングを想像したに違いない。ひらがなゆえに、そういった障壁を取り払うことが出来るのだろう。

 また、2位の「たとえ どんなに...」や、4位の「いつかきっと…」、7位の「でも…。でも…。でも…。」、8位の「ずるいよ…」など、ひらがなだと言葉を言い残したようなニュアンスが強調されるのも面白い。これも、歌詞をより惹きつける要素になっていそうだ。ちなみに、ここ数年でひらがなソングを多くヒットさせてきたのが、09年の「じょいふる」や10年の「ありがとう」などを発表したいきものがかり。決して"生物係"ではない彼らこそ、そのひらがな効果を強く認識しているのだろう。(アルバムの人気曲に「くちづけ」もあり。「Kiss」よりも人の温もりを感じますね。)

 TOP10のラインナップを見ると、女性ソロ、男性ソロ、男性グループはいるものの、今や戦国時代と言われる女性アイドル・グループが皆無なのも気になるところ。イベント参加券でCDを売り伸ばすのではなく、是非ともひらがなの魅力ある楽曲で人々を魅了することのできるアイドルが現れることも期待したい。
 ちなみに、昨シーズンで夏と冬のひらがなソングのTOP100ランクイン数を比べてみると、夏(11年6月〜8月平均)が4曲に対し、冬(10年12月〜11年2月平均)は8曲と、冬の方が2倍多くなっているという事実も興味深い。確かに、ひらがなの方が、"まったり感"や"ほっこり感"が増すのだろう。今年の冬は、この10年間で見ても記録的な寒さが続いているので、例年最低気温が出やすいこの2月、更にひらがなソングの人気が盛り上がるか注目したい。




つけまつける
きゃりーぱみゅぱみゅ



たとえ どんなに...
西野カナ


やさしくなりたい
斉藤和義
 

 93年生まれで今も宮崎県に住む現役高校生シンガーソングライターの2ndシングル。彼女は、昨年3月16日にミニアルバム『Portrait』でメジャー・デビューしている。ハーフならではの大きな瞳と口元がチャームポイントだが、楽曲も、時に穏やかに時に激しく、まるで大自然に向かうかのような大きな歌い方が特徴で、その様はシンセサイザー登場以前の、キャロル・キングや初期の五輪真弓など70年代フォークにも似たオーガニックな雰囲気を醸し出している。
 この「きっと、ずっと」は、NHKドラマ10『タイトロープの女』の主題歌となっている。自分を信じて夢に向かって進んでいくというバラードで、大きく口を開けて真っ直ぐ歌う彼女が目に浮かぶようだ。ただ、「星」「出会えた奇跡」「たしかなモノ」「大切なヒト」など、歌詞はルックスや歌声が個性的なのに比べると、いささか普遍的かも。絢香、平原綾香、そして井手綾香と、"ayaka"と名のつく天才シンガーが多い激戦区(笑)なだけに、今後の差別化にも歌詞の個性化にも注目している。



※ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。

 今月は、第10位のMilky Bunnyに注目。これは言わずと知れたファッション・モデル、益若つばさの音楽活動名義(07年に「TSUBASA」名義でデビューもしているが、当時のギャル・ソングとは系統が異なるので、ルーキー部門でカウントした)。

  彼女は、昨年7月にシングル「Bunny Days」でデビューしているが、前世紀からオシャレなポップスを手がけてきたカジヒデキと自身とで共同で作詞し、アイドル系のポップソングにハードなギターサウンドを取り入れることを得意とするcorin.が作曲・編曲という異色の組合せで、それまでの彼女のイメージを更に広げることに成功。さらに、今回、人気となっている2ndシングルの「ずるいよ・・・」も、予定調和の切ない失恋ソングかと思いきや、よくよく読むと、自分のわがままではなく相手を信じる強さが貫かれていたり、一人称が"僕"であったり、と決して狭い視野の歌詞ではない。こうした"分かりやすそうで、実はよく練られている"というのが、彼女が広く支持されている最大の理由だろうか。今後も、更なる挑戦に期待したい。




順位 占有率 楽曲 初収録作品 発売日
1 67.0% ずるいよ… 2ndシングル 2012.1.11
2 16.5% I Wish 2ndシングル 2012.1.11
3 7.2% Bunny Days 1stシングル 2011.7.20
4 5.9% no shape of love (配信限定) (2011.11.9)
5 3.5% Song for... 1stシングル c/w 2011.7.20



つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 2月22日に企画したCD『LIGHTS OF LIFE〜明日のために』(COCQ-84939)が発売になります。この作品は、仙台市立八軒中学校吹奏楽部・合唱部による「あすという日が」が収録されているように、エールソングばかりを集めているのですが、一青窈「ハナミズキ」、本田美奈子.「アメイジング・グレイス」、美空ひばり「愛燦燦」、岩崎宏美「シアワセノカケラ」など、とにかく演歌もJ-POPもフォークもクラシックも関係なく、オール・ジャンルの女性ボーカルが網羅されているのが特徴。あと、"からだによい音楽"みたいに出ているCDが、インストに偏っているのにも疑問を感じていました。私自身も、ボーカルものの方が元気になれるので。・・・ということで、"常識"と闘いながら、日々を暮しています(笑)。

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