テーマ順位を見ると、3位の「やさしくなりたい」や9位の「あとひとつ」がランクイン。共にロングヒットとなっているが、もし「優しくなりたい」や「あと一つ」だったなら、メッセージ性の強さだけが前面に出てしまったのではないだろうか。ひらがなにしたからこそ、より幅広いリスナーに届いたのだと思う。ちなみに、筆者がこの"ひらがなマジック"に興味を持ったのは、1982年の河合奈保子「けんかをやめて」。もしこれが、「喧嘩を止めて」だったら、シリアスな格闘ソングを想像したに違いない。ひらがなゆえに、そういった障壁を取り払うことが出来るのだろう。
また、2位の「たとえ どんなに...」や、4位の「いつかきっと…」、7位の「でも…。でも…。でも…。」、8位の「ずるいよ…」など、ひらがなだと言葉を言い残したようなニュアンスが強調されるのも面白い。これも、歌詞をより惹きつける要素になっていそうだ。ちなみに、ここ数年でひらがなソングを多くヒットさせてきたのが、09年の「じょいふる」や10年の「ありがとう」などを発表したいきものがかり。決して"生物係"ではない彼らこそ、そのひらがな効果を強く認識しているのだろう。(アルバムの人気曲に「くちづけ」もあり。「Kiss」よりも人の温もりを感じますね。)
TOP10のラインナップを見ると、女性ソロ、男性ソロ、男性グループはいるものの、今や戦国時代と言われる女性アイドル・グループが皆無なのも気になるところ。イベント参加券でCDを売り伸ばすのではなく、是非ともひらがなの魅力ある楽曲で人々を魅了することのできるアイドルが現れることも期待したい。
ちなみに、昨シーズンで夏と冬のひらがなソングのTOP100ランクイン数を比べてみると、夏(11年6月〜8月平均)が4曲に対し、冬(10年12月〜11年2月平均)は8曲と、冬の方が2倍多くなっているという事実も興味深い。確かに、ひらがなの方が、"まったり感"や"ほっこり感"が増すのだろう。今年の冬は、この10年間で見ても記録的な寒さが続いているので、例年最低気温が出やすいこの2月、更にひらがなソングの人気が盛り上がるか注目したい。