前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて分析し、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。今月は、2人〜5人という中規模で活動するアーティストの人気曲を分析してみた。

 ご存知の通り、現在のCDシングルチャートの上位は、メンバー別のジャケットが何種類も異なる初回盤を束ねたBOX(1BOX買えば、数枚〜数十枚も購入したかのように売上枚数が反映される)や、個別握手会&チェキ撮影会参加券などメンバー別の特典が山盛りの作品が大勢を占めている。確かに、特典の数をてっとり早く増やした方が、容易にTOP10入りしてしまうのだから、実際にそれが“ヒット曲”として浸透しようがしまいが、大人数グループの方が圧倒的に有利だ。ということで、今回はそんなアーティストはまずスルーした(笑)。

第39回:5人以下ユニットの人気曲TOP15  (2012年10月:2012年9月のデータより分析)
テーマ順位 歌詞順位 アクセス
指数%
楽曲名 アーティスト 発売日 構成
1位 3 100 THE OVER UVERworld 2012/8/29 男性5人組
2位 10 38 The Beginning ONE OK ROCK 2012/8/22 男性4人組
3位 12 33 『大好き』 Juliet 2012/8/15 女性3人組
4位 15 23.8 好きだよ。〜100回の後悔〜 ソナーポケット 2011/1/26 男性3人組
5位 17 22.2 ココロの羽 コブクロ 2012/9/5 男性2人組
6位 18 20.8 Re:make ONE OK ROCK 2011/7/20 男性4人組
7位 22 19.8 366日 HY 2008/4/16 男女5人組
8位 23 19.7 firefly BUMP OF CHICKEN 2012/9/12 男性4人組
9位 24 19.6 君と見る未来。 ソナーポケット 2012/8/1 男性3人組
10位 25 19.1 夜の踊り子 サカナクション 2012/8/29 男女5人組
11位 26 19 THE SONG UVERworld 2012/8/29 男性5人組
12位 27 18.9 君と羊と青 RADWIMPS 2011/3/9 男性4人組
13位 29 18.3 眠り姫 SEKAI NO OWARI 2012/5/30 男女4人組
14位 30 18.2 ジェラシー Juliet 2012/9/19 女性3人組
15位 31 18.1 キセキ GReeeeN 2008/5/28 男性4人組

 それで長らく冬の時代だった女性ソロを分析しようとしたのだが、miwaの「ヒカリへ」が自身最大のヒットで歌詞検索でも月間ダントツ1位、西野カナの4thアルバムが好調、シェネルの「ビリーヴ」の今年最大級のロングヒット、更に後述のティーナ・カリーナのブレイクなど、女性ソロは月間TOP10中6曲を占めるほど、今花盛りとなっていて、これも十分目立っている。そこで、大所帯でもソロでもない2人組から5人組までのアーティストに限定することで、ブームに隠れたムーブメントをしっかりと見出そうというのが今回の主旨だ。

 ランキングを見ると、1位は5人組バンドUVERworldの22ndシングル「THE OVER」。TBS系ドラマ『黒の女教師』中の恋人同士が熱く語るシーンで、フルサイズで何度も流れた主題歌。ガンダム・シリーズなどアニメ・タイアップのヒットが目立つ彼らだが、実はドラマ・タイアップ・ヒットも多い。激しさも恋しさもMAXに聞こえるTAKUYA∞のボーカル力も大きいことだろう。
 2位と6位には、4人組バンドのONE OK ROCKがランクイン。 2位の最新曲が、自身初のシングル10万枚ヒットとなったが、それに伴い6位の旧作シングルや2010年、2011年のアルバムが週間TOP100入りするほど今年になってファンを大きく拡大。歌ネットの歌詞検索では昨秋にその大きな動きがあったので(詳しくはこちら)、本サイトのヘビーユーザーにとっては、彼らのブレイクは今さら語る必要もないほどかもしれない。

 他にも、バンド楽曲は上位15曲中9曲を占め、さらに7位のHY、10位のサカナクション、13位のSEKAI NO OWARIなど男女混成バンドの上位入りも目立つ。これは、世間的なバンドのシェアから見ても、かなり多い。男女混成の方が、恋愛などより感情移入しやすい聞き方ができることが多々あるからだろうか。
バンド以外の5人以下ユニットは、Juliet、ソナーポケット、コブクロ、GReeeeNのみ。特に、Julietはこの4組中で唯一10万枚ヒットがないグループ、かつ唯一の女性グループ、しかも世間的に冷たくあしらわれがちなギャル系で、尚更に頑張っているように思えた。
 以上のように、5人以下ユニットを調べてみると、その大半がバンドとなり、しかも、BUMP OF CHICKENやRADWIMPSのようなヒット常連や、ONE OK ROCKやSEKAI NO OWARIなどファン増殖中など、いずれも本当に注目されているバンドばかりが集まっていることが分かる。つまり、今後もブレイク・バンドを占う指標として、歌詞人気はますます重要のようだ。




THE OVER/UVERworld


The Beginning/ ONE OK ROCK


『大好き』/Juliet
/

 09年、謎の女性3人組としてデビュー前から着うたで人気を呼び、8月5日のシングル「ナツラブ」のデビューのタイミングでお披露目されたJuliet。(その手法は、今年ブレイクした同社の女性ソロ歌手GILLEに受け継がれ、こちらもヒット。)他のギャル系アーティストの多くがどんどん人気を落とす中で、彼女たちはこの14th
シングル「『大好き』」でも歌詞検索で2か月連続TOP20入りと堅調だ。

 『大好き』は、「大好き」と言われたい女子の純情を歌ったミディアム・チューンで、(失礼ながら)さほど珍しい歌でもないが、本作を収録した4thアルバム『ジェラシー』は内容が濃い。異性の親友に恋心を抱く「男友達」(この後に、工藤静香「慟哭」が待っていそうな展開)、“都合いい女”と思われようが、友達に紹介できなかろうが、“彼”との関係を続けようとする「ヒミツ」(これも、エスカレートすれば、加藤ミリヤ「Aitai」になりそう)、女子同士のコイバナを別室で覗いているような気分になる「ジモト」(地方のファミレスで、こんな光景をよく見かけます)など、どれも身近にある普通の1日をリアルに伝えている。それは、着飾らないけれど、でも実はとても大切な感情だったり、さりげなく歌っているけど、でも実は美声だったりと、彼女たちは相当に照れ屋なのかなと想像する。だからこそ、女子たちから長く愛されているのだろう。アイドルでもなく、ソロのR&Bシンガーでもない、実は稀有な存在なので今後も頑張ってもらいたい。


※ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。
 今月の6位には、26才のシンガーソングライター、ティーナ・カリーナがランクイン。今年9/12にミニ・アルバム『ティーナ・カリーナ』でデビューした彼女は、「本名:田中里奈」と公表しているように、大阪府出身の日本人。ただ強く伸びる美声は井手綾香やアンジェラ・アキといったハーフ系とも共通しているので、そのアーティスト名もしっくりくる。
 POLAのCM曲「輝いて」も新しいことを始めたいと思える前向きな良い曲だが、今回のランクインは、なんといっても人気の大半を占める「あんた」のお蔭だろう。関西弁で、遠距離恋愛の切なさ苦しさを熱唱するという、まるで「トイレの神様」×「会いたくて 会いたくて」の“エエトコドリ”をしたような内容。歌詞中の「何食べても味ないし」なんて歌詞は、関西にいなければ聞かないほどのネイティブな言葉で、そういったリアルな雰囲気が、より多くの人々の共感を得ているのだろう。10/17には、本作をシングル・カット。(ミニ・アルバム後のリカットというのも「トイレの神様」と同じ戦略!)所属事務所が、GReeeeNやMONKEY MAJIK、Rakeなど個性的なアーティストを擁するエドワードエンターテインメントグループなので、今後、年末年始に向けて化ける可能性も多分にある。

順位 占有率 曲名 初収録作品 発売日
1 88.70% あんた ティーナ・カリーナ 2012.9.12
2 3.70% 輝いて ティーナ・カリーナ 2012.9.12
3 2.10% 帰り道 ティーナ・カリーナ 2012.9.12
4 1.70% Power of Love ティーナ・カリーナ 2012.9.12
5 1.60% みつけて ティーナ・カリーナ 2012.9.12



つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 突然、内田あかり(今年、御年65才!)のベストアルバム『魅力のすべて』にハマっています。70年代に「浮世絵の街」がヒットした当時は、“小柳ルミ子のセクシー版みたいな、二番煎じ歌手かな”と思っていたのですが、05年の「熟女炎上」(これまた凄いタイトル!)以降を聞くと、女性の業の深さをまざまざと感じさせます。最新シングル「今夜だけ」も、明日には旅立ってしまう男を愛しながらも温かく見送る女性を歌ったミディアム・バラード。いちいち時代錯誤なんだけど(笑)、いちいち情熱的。だからこそ、人間的で惹かれるのかもしれません。

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