そんな状況を振り返って、よりいっそうヒットの芽を察知しようとしたのが今回のランキング。1位は、NHK朝の連続テレビ小説『純と愛』の主題歌にもなっているHYの「いちばん近くに」。アルバム発売は来月だが、既に歌詞検索やダウンロードではヒットの兆しを見せており、王道のラブソングなので今後カラオケでも流行りそう。ちなみに、フルコーラスでは、仲宗根泉だけではなく、新里英之のボーカルも聞けるので、いっそう心に浸透する。
2位は、加藤ミリヤが若旦那とコラボレーションした通算23作目となるシングル。CDシングルランキングでは、5作連続でTOP10入りを逃しているが、ダウンロードでは今でもTOP10入りの常連。ちなみに本作は若旦那とのコラボレーションで、若旦那は男性目線からの「LOVERS feat.加藤ミリヤ」をリリースし、この2作は表裏一体の作品なのだが、iTunesでは、発売元の関係で「LOVERS part II」が配信されず、「LOVERS」のみ上位入りという現象が起きている。どちらも二人が歌っているのに、ファンからすれば、しこりが残りそうだ。
ともあれ、このように最新作限定で上位15作を見ると、うち11作が女性アーティスト、しかもその大半がソロ・シンガーとなっていることが分かる。実際、加藤ミリヤ、西野カナ、AZU、家入レオなどの女性ソロは、ダウンロードでは、CDシングル以上に好調なアーティストが多く、またいずれも有線やコンビニBGMなどの"街鳴り感"も強いアーティストばかりだ。つまり、CDシングルでは、"握手券軍団"に押されて、上位入りは難しいいが、楽曲のチカラを街鳴りや歌詞サイトで十分アピールして、CD発売日前後という早い段階から、ダウンロードのヒットを確実なものとし、その実績を重ねることでアルバム・ヒットに繋げようという戦略が見て取れる。
別の視点から見れば、ここに、女性アイドルがランクインすれば、それはイベント参加券でも楽曲でも支持されるという稀有な存在となり、まさに鬼に金棒となるのではないだろうか。昨今は、そのイベント回数を増やしたり、5枚、10枚と表題曲が同じCDを大量に購入させたりする施策ばかりがエスカレートしがちだが、アイドル・グループと言えども曲や歌詞をしっかりアピールして認知を広めれば、他のグループとも大きな差別化ができるようにも思う。実際、今回12位に関ジャニ∞がランクインしているように、彼らや嵐が、男性アイドルの中でも頭抜けているのは、アイドルながら、このように楽曲の認知が進んでいることも大いに影響しているだろう。だからこそ、女性アイドルでも、もっとそういった存在が増えることを願う。
以上のように、最新曲ランキングでは、とりわけダウンロードに強い女性ソロの活躍が目立った。その意味では、CD発売前から今回上位入りしている8位の沢井美空の今後に注目したい。