まず1位、2位は、70年代以来、5ディケイドにわたって業界上位を占めるSMEグループの2レーベルから西野カナと加藤ミリヤがランクイン。特に、CBSソニー以来の本流とも言えるSony Musicの方は、今年でもLUHICA、剛力彩芽など新人ヒットを出しつつ、miwaや清水翔太、supercellなど歌詞検索上位常連も多い。乃木坂46やDISH//、渡辺麻友などイベントで稼ぐアイドルも強いが、こうして見ると歌詞のメッセージでも十二分に勝負していることが分かる。同社で11月末にデビューするkahoもこの波に乗れるか注目したい。また、SMEグループ内でやや元気がないのが15位のSME/Arioraレーベルで、同レーベルで上位なのは、この「奏」か小田和正の「たしかなこと」でどちらも10年ほど前の楽曲で、最新ヒットはしばらく見られていない。今秋、平井堅が同レーベルに移籍したことから、今後メッセージ色の強い最新ヒットが出てくるのか注目したい。
3位と8位にはユニバーサルミュージックの2レーベルがランクイン。GReeeeNとback numberも歌詞検索の上位常連で、彼らの旧作「キセキ」や「花束」もそれぞれロングヒット中。他にも、ナオト・インティライミ、ヒルクライム、C&Kなど歌詞が人気のアーティストが目白押し。00年代後半、青山テルマやキマグレンなど、着うた発のヒット曲を量産してきたあたりから、歌詞検索でもヒット感が増してきたように思うが、着うた文化が翳りを見せてからも、現在の動画サイトや歌詞サイトでのヒットは継続しており、それがアルバムヒットの継続に繋がっているようだ。昨春、ユニバーサルと合併したEMIミュージックは、それ以降で歌詞検索や音楽配信上でヒットしたのがなんと40年前の荒井由実「ひこうき雲」だけなので、今後EMIレーベルに合併効果が現れるのか期待したい。さらに、家入レオや今年の『あまちゃん』ブーム、サカナクションやクリープハイプのヒットなど、明らかに“持っている”メーカーとなったビクターは5位と10位にランクイン。やはり、そのメーカーの好調ぶりを裏付けるものとして、楽曲がきちんと支持されているということが分かる。
一方、メーカー別売上としてはかなり上位なのに、このランキングではさほど目立たないのがエイベックスとキングだ。エイベックスは、LIVEチケット付きCD(それゆえ何度もそのツアーに行く人は何枚も同じCDを買うハメに(笑))やメンバーの数だけ何十種類と存在するミュージックカード(もはやCDではないが、CDチャートに算入されている(笑))など、購入人数を増やすことよりも購入金額を増やすことを優先しているのか、それが楽曲ヒットの少なさにもリンクしている。実際、同社の売上主軸はコンテンツ配信事業やライブエンタテイメント事業だし、楽曲ヒットに関する考えが他社とは大きく異なるのかもしれない(無論、それが悪いという意味ではないので念のため)。しかし、そんな中でもAAAの「恋音と雨空」は2ヶ月連続TOP5入りするなど、そのメッセージ性からダウンロードでロングヒットする楽曲も同社には存在している。また、キングについては、同社が強いのは、アイドルとアニメと演歌であって、いずれも歌詞がさほど支持されなくても、そのアーティストやアニメのパワーで乗り切れるアーティストが多いジャンルだ。言い換えれば、現代のCDヒットにはそういった要素の割合が高く、それゆえ“ヒット曲が見えづらい”時代になっているとも言えそうだ。
以上のように、市場の好調ぶりと歌詞検索がシンクロしているメーカーがある一方で、むしろ全くシンクロせずに好調なメーカーまであることが分かる。今は、ビジュアルやダンスパフォーマンス、動画サイトの面白さ、MCやブログでの発言の面白さなど様々なブレイクのパターンがあるが、そこに楽曲の魅力が上乗せされれば、世代を超えて支持され、結果的にアーティストがより確実にステップアップできると思うのだ。その意味で、今後も人々が口ずさめる歌が増えて欲しいし、今後もそれを歌詞検索の分析から読み取っていきたい。