前月の歌詞検索ランキングを掘り下げて、キラっと輝くキラー・チューン(名付けて“キラ☆歌”)を発掘しようというこのコーナー。今月は、今年12月31日に実施される第64回NHK紅白歌合戦に出場しないアーティスト限定で、人気曲の傾向を考察してみた。
毎年、年末から年始にかけて、世間的に大きな話題となる紅白歌合戦。特に、昨年のきゃりーぱみゅぱみゅやゴールデンボンバーの初出場や、ここ数年のAKB48関連グループ、EXILE一族、そして古くからのジャニーズグループといった三大巨大組織(微笑)の大量出場など、巷の人気者はかなり網羅していて、一時期より明らかに盛り返しを見せている。では、そこから漏れたグループはどんな傾向があるのか、気になって出してみたのが下の表だ。

第53回:紅白非出場アーティスト人気曲TOP15  (2013年12月:2013年11月のデータより分析)
テーマ
順位
総合
順位
アクセス指数 楽曲名 アーティスト名 発売日
1位 3 100 RPG SEKAI NO OWARI 2013/5/1
2位 4 99.2 愛し君へ GReeeeN 2013/8/21
3位 5 94.8 X'masラブストーリー。 ソナーポケット 2013/11/27
4位 7 66 ひとりごと 新山詩織 2013/11/13
5位 10 61.9 太陽の女神 家入レオ 2013/11/6
6位 12 58.8 Lonely Hearts 加藤ミリヤ 2013/10/2
7位 13 55.3 for YOU。 ハジ→ 2013/7/17
8位 16 47.6 サヨナラの準備は、もうできていた CRUDE PLAY 2013/11/27
9位 18 47.1 高嶺の花子さん back number 2013/6/26
10位 20 45.2 チルドレンレコード じん 2012/8/15
11位 21 43.1 潮騒のメモリー 天野春子(小泉今日子) 2013/7/31
12位 32 38.3 366日 HY 2008/4/16
13位 33 38.2 ナガレボシ 住岡梨奈 2013/10/23
14位 34 38.1 守ってあげたい JUJU 2013/11/20
15位 35 38.1 Fight For Liberty UVERworld 2013/8/14
次点 39 36 友達のフリ ケラケラ 2013/9/18
※第64回NHK紅白歌合戦の出場歌手として発表されなかったアーティストを対象に、
 1アーティスト1曲限定で最も人気のある楽曲をリストアップした。

 1位は、一部スポーツ紙で出場するとの見事なガセネタ(笑)があったSEKAI NO OWARI。しかし、このシングルCDは若手バンドでは最大級の15万枚近くが売れ、歌ネットでの歌詞検索もダントツで年間1位と、出場してもおかしくないレベルの人気。彼ら自身も自らの音楽のメジャー化に貪欲なので来年の出場は十分ありそうだ。
2位は、GReeeeN。CDでは00年代の「愛唄」「キセキ」「遥か」のビッグヒット以降目立たないが、実はダウンロードや動画・歌詞サイトの検索数では、依然として大人気で、歌詞検索の総合TOP30には「愛し君へ」のほか、「あいうえおんがく」「雪の音」、そして最新曲の「僕らの物語」がランクインしている。
また、3位にはソナーポケットがランクイン。彼らは、FUNKY MONKEY BABYSの後釜として紅白出場も期待されていたが、そこに至るにはファンモンが手がけたような中高年やアスリートへのエールソングなど、より幅広いテーマへの取り組みが重要だろう。とはいえ、今秋にアリーナツアーを成功させたり、11月発売の最新曲がすぐに総合TOP5入りするほど、ダウンロードや歌詞サイトの上位常連というのは、もう少し評価されても良いだろう。

 全体のアーティストの傾向を見てみると、4位、5位、6位、11位、13位、14位となんとTOP15中6組も女性ソロアーティストが見られた。(ちなみに、女性グループの紅白非出場でもある乃木坂46やHKT48は、歌詞サイトでは総合TOP200に1曲たりとも入っていない。)勿論、紅白出場者も含めた総合ランクでは、AAAや嵐、三代目J Soul Brothersなど女性ソロ以外のグループの人気も目立つのだが、こうして“紅白非出場”の人気曲だけより分けてみると、なんと女性ソロばかりが際立ってくるのが興味深い。つまり、女性ソロアーティストは楽曲人気の割に、現在の紅白歌合戦には選ばれにくいという傾向があるのではないだろうか。無論、歌詞サイトでは新山詩織や住岡梨奈など女性ソロの新人が世間一般の認知度よりも注目されやすいというのもあるだろし、また紅白側にも女性ソロは、石川さゆりや坂本冬美などベテラン演歌勢中心で十分(その分、若手はアイドルグループで頑張って)という思惑があるのかもしれない。
 しかし、CDで連続TOP10入りとなっている家入レオ(加えて彼女は大手事務所所属)や、ダウンロードでほぼ毎回ビッグヒットとなっていて、大人のファンも多いJUJUあたりが出場してもおかしくないはずだ。そう考えると、やはり女性ソロは人気が過小評価されている気がする。せめて、天野春子役で歌った小泉今日子などは、『あまちゃん』ゲスト枠で特別出場させてほしいものだ。

 以上のように、非出場組を見てみると、バンドや女性ソロなど、アーティスト自体よりも楽曲人気が先行しがちなアーティストが多数挙がった。彼らのヒットは、もはや複数買いや大量買いが当たり前となっているCDシングルだけで見ることは難しく、それが紅白歌合戦の選考にも不利になっているような気がしてきた。(もっとも、GReeeeNの場合は、出場の仕方自体が課題となりそうだが(笑)。)勿論、紅白歌合戦はその年を代表する一大イベントだし大人数の方が華やかな感じがして良いに決まっているが、“ダンス合戦”ではなく“歌合戦”だと謳うのであれば、演歌枠以外でも、音楽により焦点を当てた選出が適切ではないだろうか。それでも、毎回深遠な世界を繰り広げるLinked Horizonの初出場は、NHKスタッフが物凄く頑張ったのではないかと心の中で拍手している。




RPG/SEKAI NO OWARI

愛し君へ/ GReeeeN

X'masラブストーリー。
ソナーポケット


 2013年12月14日に公開される佐藤健主演の映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』に登場するイケメン四人組バンドが現実世界でメジャーデビューしたシングル。プロデュースは亀田誠治が手がけていると知り、「きっと、サビでは“泣きのストリングス”をザーザー入れてくるんだろうなぁ〜(微笑)」と予想していたのだが、荒々しいギターサウンドが全面的にフィーチャーされ、骨太な感じがして意外だった。また、坂口瞬こと三浦翔平のボーカルは、やや不安的な太い声だが、それが硬質なサウンドと相まって、チャラくないイメージとなるし、また俳優の歌ゆえに言葉がよく響く。これらの点で、90年代の反町隆史を想い出した。ちなみに、ライバルバンドとして、2人の男性の演奏に女性ボーカルという3人組でMUSH&Co.も12月4日にCD「明日も」でデビュー。こちらは、80年代以前の歌謡曲も上手く歌えそうなほど正統派ボーカルなので、幅広い世代に注目されそう。それにしても、CRUDE PLAYの映画内のプロフィール「CDを発売すれば、必ず1位となるバンド」ということだが、これは新人クラスではもはや現実世界では有り得ないことになってしまったんだな、としみじみ。この意味でも、80年代〜90年代っぽいバンドと言えるかも(苦笑)。


ここではデビュー2年内のアーティストを対象に、毎月注目のアーティストを"歌ネット・ルーキー"として紹介していく。ただし、「ルーキー」として選定するのは1アーティストにつき1度限りとする。


 今月は、7位にランクインした四人組バンドのKANA-BOONに注目。彼らは、08年に大阪で結成して以来、地元を中心に活動し人気を博してきて、また昨年4月のキューンレコードでの20周年オーディションでもグランプリを獲得した実力派。その時期から、現在のレコード会社への所属が決まっていたが、メジャーデビュー直前のミニアルバム『僕がCDを出したら』はオリコン最高位14位で約3万枚のヒットに。その波に乗って、9月にデビューシングル「盛者必衰の理、お断り」や続く1stアルバム『DOPPEL』も新人バンドながら共にTOP10入りを果たした。RADWIMPSにも通じる細いボーカルや言葉遊びのセンスや、ASIAN KUNG-FU GENERATIONにも通じる思わずノリたくなるような躍動感を持っており、既にヒットオーラが漲っていることに大いに感心。同事務所(系列も含む)にBUMP OF CHICKENやサカナクションもいることから、今後も丁寧に音楽制作されていくだろうと、今からとっても楽しみなバンドだ。
順位 占有率 曲名 初収録作品
発売日
1 24.5% 盛者必衰の理、お断り 1st Sg 2013.9.25
2 18% 1.2. step to you メジャー1st AL『DOPPEL』 2013.10.30
3 16.9% ウォーリーヒーロー メジャー1st AL『DOPPEL』 2013.10.30
4 5.7% MUSiC メジャー1st AL『DOPPEL』 2013.10.30
5 5.6% 羽虫と自販機 メジャー1st AL『DOPPEL』 2013.10.30
6 5.5% 目と目と目と目 メジャー1st AL『DOPPEL』 2013.10.30
7 5.5% ワールド メジャー1st AL『DOPPEL』 2013.10.30
8 5% 白夜 メジャー1st AL『DOPPEL』 2013.10.30
9 3.8% 東京 メジャー1st AL『DOPPEL』 2013.10.30
10 3.6% 夜をこえて メジャー1st AL『DOPPEL』 2013.10.30



つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信などでも愛と情熱に満ちた連載を継続中。Twitterは@t2umusic
 12/4発売の日経エンタテインメント!では通算12回目の年間チャートの考察をいたしました!(44P〜47Pをご覧下さい。)これを見れば、SEKAI NO OWARI「RPG」、きゃりーぱみゅぱみゅ「にんじゃりばんばん」、ケラケラ「スターラブレイション」などのヒット感がCDで見えなくても物凄く大きかったことが分かると思います。(ちなみに、EXILEの「EXILE PRIDE」はオリコンでミリオンでも、一般流通では約8万枚で、CD以外の年間TOP10にも入っていません。)また、AKB48は毎回メガヒットしていますが、その中で「恋するフォーチュンクッキー」のみがCD以外の各部門でヒットしています。つまり、CDランキングだけで一喜一憂せずに、より多くの人で複眼的に納得のいくヒット曲が楽しめればいいなと思います!!

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