作詞家をはじめ、音楽プロデューサー、ミュージシャン、詩人、などなど【作詞】を行う“言葉の達人”たちが独自の作詞論・作詞術を語るこのコーナー。歌詞愛好家のあなたも、プロの作詞家を目指すあなたも、是非ご堪能あれ! 今回は、5人組バンド“wacci”のボーカルであり、様々なアーティストへの楽曲提供も行っている「橋口洋平」さんをゲストにお迎え…!


作詞論
 
最近では、限られた文字数の中で、しっかりと奥行きのある伝わりやすい物語を作ることを意識しています。
どんな情報を入れると登場人物が際立って、どんな情報を抜くと聴き手にとって良い余白となるか。
そんなことを考えてる時間が一番作詞してる気になります。笑
[ 橋口洋平さんに伺いました ]
  • Q1. 歌詞を書くことになった、最初のきっかけを教えてください。

    高校一年生の時に、新しい環境でなかなか友達が出来ず悩んでいた時に、唯一友達になってくれた子がアコースティックギターを弾きながら「ゆず」を歌っていてその子と一緒に路上で歌い始めたのが僕の音楽人生の始まりです。

    はじめはゆずと忌野清志郎さんを1曲ずつ、2曲を永遠にループする形でやって、その後すぐ見よう見まねでオリジナルソングを作って歌っていたので、初めて作詞をしたのはそのタイミングだと思います。

    最初の作品のタイトルは確か「ポリシー」だったと思います。うまくいかないこともあって構わない!失敗を恐れない!それが僕のポリシー!みたいな。笑

    初心者のくせに結構難しい曲で、よく間違えては途中でやめてた曲でした。失敗恐れないんじゃないんかい。

  • Q2. 歌詞を書く時には、どんなところからインスピレーションを得ることが多いですか?

    自分の経験以外で、一番多くインスピレーションを得ているのは、他人の会話です。

    友達から恋愛相談を受けることが多いタイプで、そういうところからはもちろん、カフェでお客さんから聞こえてきた会話などで曲になりそうなフレーズやテーマがあればメモをとったりしています。

    一番広がってくれた「別の人の彼女になったよ」は、周りにこの曲の主人公みたいに感じてる女友達が大量発生したことが理由です。笑

  • Q3. 普段、どのように歌詞を構成していきますか?

    色んな作り方をしています。言葉とメロがしっかりハマるサビっぽいものを作って、そこから周りを肉付けしていくパターンもあれば、詞先で1行目からしっかり物語を綴る気持ちで書いていくパターンもあります。

    前者のほうがよりキャッチーで覚えやすく聞きやすい歌に、後者のほうが聞けば聞くほど感情移入できる歌になる傾向にある気がします。気のせいかもしれません。

  • Q4. お気に入りの仕事道具や、作詞の際に必要な環境、場所などがあれば教えてください。

    テーマや、最初の一歩となるメロやフレーズは、昼夜問わず色んなところにアンテナを張りながら探しつつ、そこから全体を組み立てていく作業は朝~昼にかけて喫茶店というパターンが多いです。

    夜のほうが駄作ができやすいけど10本に1本くらいホームランが出る気がするので、それを探して、翌朝それが本当にホームランになりそうなものであれば組み立ててく感じが最近では自分には一番ぴったり合う作り方だと思っています。

  • Q5. ご自身が手掛けた歌詞に関して、今だから言える裏話、エピソードはありますか?

    別の人の彼女になったよ」に関しては、歌ネットさんで歌詞エッセイを書かせて頂いているのでこちらをご覧ください。笑

    その他で言えば、Hey! Say! JUMPに楽曲提供させて頂いた「ナイモノネダリ」という曲はおとぎ話を題材に楽曲を作ってほしいという依頼をいただいて、打ち合わせの中で「ピーターパン」をテーマに作ることになったんですけど、「ピーターパンをテーマにした楽曲コンテスト」があったらグランプリをとれるような楽曲を作ることを自分の中の目標にして書いたのを覚えています。

    小説だとずっとウェンディがピーターパンを待ちながら大人になる描写があったりしたので、「ピーターパンを待ちながら大人になったウェンディの結婚前夜」という設定を思いついてからはスラスラ書けました。

    グランプリをとれたかはわかりませんが、ファンの皆さんにとっても大事な曲になっていれば嬉しいです。

  • Q6. 自分が思う「良い歌詞」とは?

    冒頭の作詞論でも書きましたが、入れるべき情報と抜くべき情報の取捨選択がしっかり吟味して行われているものは、感情移入しやすいのかなと最近思います。

    例えば失恋ソングであれば、幸せだった過去の思い出はどこを切り取るのか、別れの理由は何なのか、登場人物はどういう二人で、どういう方向に感情の矢印が向いているかなどが、決められた文字数の中で、どれだけ盛り込まれていて、どれだけ聴き手に委ねてるか。そのバランスに個性が出るし、歌詞の面白さだと感じています。

  • Q7. 「やられた!」と思わされた1曲を教えてください。

    back numberの「ハッピーエンド」は、初めて聞いた時にとても感動した記憶があります。

    <あなたが勇気を出して初めて電話をくれた あの夜の私と何が違うんだろう>
    <泣かない私に少しほっとした顔のあなた 相変わらず暢気ね そこも大好きよ>

    特にこの2行は、あらゆる情報を内包してる気がして震えました。

    それと、物語性のある歌の場合は、頭の1行でどれだけ聴き手を世界に連れ込めるかが大事だと思っていて、そういう意味では伊勢正三さんの書かれたイルカさんの「なごり雪」の<汽車を待つ君の横で ぼくは時計を気にしてる>は最強の1行目として僕の中で殿堂入りしています。笑

    二人の関係性や、その景色の切なさなど、いろんなことを伝えてくれてますよね。

  • Q8. 歌詞を書く際、よく使う言葉、
         または、使わないように意識している言葉はありますか?

    逆に、使わないように意識している言葉を無くしていくことを意識しています。笑

    例えば「好き」という言葉を使わずに「好きだという感情を伝える」ことは確かに歌詞の素晴らしさの一つだと思いますが、世間一般的に告白する言葉として一番使われてるのは「好きです」なわけですし、「好き」という2文字が一番わかりやすく、聴き手が自分の感情をのせられるものであるなら躊躇いなく使います。

    「歌詞として」、とか、「うまいこと書く」とか、そういうことよりも、伝えたいことをちゃんと伝えるために、なるべく言葉の制約を外していくことを意識しています。

  • Q9. 言葉を届けるために、アーティスト、クリエイターに求められる資質とは?

    ここまで散々偉そうに語ってきましたが、僕が聞きたいです。笑

    でもありがたいことに、自分で曲を書いてリリースして、明確に届いたものと届かなかったものがあって、それを一つ一つ実際に経験できたことは、自分にとって財産だなと思います。なのでとにかく書いて、聞いてもらって、リアクションを得て、自分の中でトライ&エラーを繰り返していくことが大事なのかなと信じて今もやっています。

  • Q10. 歌詞を書きたいと思っている人へのアドバイスをお願いします。

    これは僕の予想ですけど、歌詞を書く人みんな、自分なんかが歌詞のアドバイスなんて出来ないよ!って思ってると思うんですよね。笑

    ここまで歌詞について語っといてなんですけど、ずーっと書けないなあ才能ないなあって思いながらずっと悩んでたら、なんか自分の力量とは全然違うところに突破口があって、よくわからないけどいいのが出来たっぽい気がする...みたいなところでやってる人多いと思います。笑

    もう二度と歌詞なんか書けないって、一曲書くたび思いますもん。なんで、アドバイスをするとしたら、とりあえず書いてみてください!しかないです!お互い頑張りましょう!泣

歌 手
wacci
タイトル
恋だろ
実る実らないは別にして、誰かを好きだという気持ちは、その気持ちが芽生えた時点で自分の中で大事にしていいし、誇っていいものだということを伝えたかった歌です。

ドラマ『やんごとなき一族』の挿入歌として、「派手な曲」というオーダーに対して15曲送った中にそっと忍ばせておいたバラード。これを選んでもらえて良かったです。
橋口洋平(Vo&G)、小野裕基(B)、因幡始(Key)、村中慧慈(G)、横山祐介(Dr)による5人組バンド。バンド名の由来は「わたしたち」を輪にして頭とお尻をくっつけてwacci(ワッチ)。

2009年12月、橋口を中心に結成。2012年11月、ミニアルバム『ウィークリー・ウィークデイ』でメジャーデビュー。2018年8月に配信リリースしたシングル「別の人の彼女になったよ」が異色の楽曲と話題になり、ミュージックビデオはYouTube総再生回数8,000万回以上、SNS総再生回数が2億回を突破し、日本レコード協会でプラチナ認定された。

2020年10月、東京・日本武道館にて無観客配信ライブ「wacci Streaming Live at 日本武道館」を実施。
2021年11月、日本武道館にて初の有観客ワンマンライブ「wacci Live at 日本武道館 2021 ~YOUdience~」を開催した。
2022年6月15日、ニューシングル「恋だろ/僕らの一歩」をリリース。
INFORMATION

ニューシングル
『恋だろ / 僕らの一歩』
2022年6月15日発売
期間生産限定盤(CD+Blu-ray)
ESCL-5676〜7 ¥3,000(税込)


初回生産限定盤(CD+Blu-ray)
ESCL-5673~4 ¥3,000(税込)
通常盤(CD)
ESCL-5675 ¥1,300(税込)
<収録曲>
01. 恋だろ
02. 僕らの一歩
03. あの子
全国ワンマンツアー開催中
「wacci Live House Tour 2022 ~Reboot!~」 全席指定 5,000円(税込) 別途ドリンク代必要
[※SOLD OUT]
6月4日(土)神戸VARIT.
6月5日(日)岐阜 club-G
6月11日(土)鹿児島CAPARVO HALL
6月24日(金)EX THEATER ROPPONGI
7月9日(土)仙台PIT【宮城】
7月17日(日)新潟LOTS【新潟】
7月23日(土)広島 CLUB QUATTRO【広島】
7月24日(日)高松 festhalle【香川】
「wacci Live House Tour 2022 ~Boost!~」 9月10日(土)ももちパレス
(福岡県立ももち文化センター)【福岡】
11月6日(日)日本特殊陶業市民会館 
ビレッジホール【愛知】
11月20日(日) NHK大阪ホール【大阪】
1月7日(土) 神奈川県民ホール【神奈川】
詳しくはコチラ