作詞家をはじめ、音楽プロデューサー、ミュージシャン、詩人、などなど【作詞】を行う“言葉の達人”たちが独自の作詞論・作詞術を語るこのコーナー。歌詞愛好家のあなたも、プロの作詞家を目指すあなたも、是非ご堪能あれ! 今回は、作詞・作曲だけでなく、全ての楽器演奏も自ら行っているマルチプレイヤーであるボカロPの「ねじ式」さんをゲストにお迎え…!
作詞論
 
歌詞に登場する主人公のキャラクターを高い解像度で表現する事を大事にしています。
どんな景色の中で、どんな人が、どんな想いを抱いてどんな生活をしているかをプロットにまとめて
作詞をしている事が多いです。
[ ねじ式さんに伺いました ]
  • Q1. 歌詞を書くことになった、最初のきっかけを教えてください。

    中学生の時、仲の良い友達が引っ越す事になり、作詞作曲をしたのがきっかけです。
    「元気で頑張ってね」という励ましの気持ちと「離れ離れになるのが寂しい」という二つの感情を織り交ぜて書く事に苦労しましたが、友達が曲を聴いて感動して喜んでくれたので、「創作で人に喜んでもらえるのって気持ちいいな」と思いました。

  • Q2. 歌詞を書く時には、どんなところからインスピレーションを得ることが多いですか?

    友達との食事などで聞く身近なエピソードからインスピレーションを得る事が多いです。
    最近では、今更かもしれませんがボカロP友達から勧められた『葬送のフリーレン』というアニメを観ています。ファンタジーものはあまり観た事がなかったのですが、登場人物がそれぞれリアルな歴史と意思を持って生活しているところが好きになりました。

  • Q3. 普段、どのように歌詞を構成していきますか?

    普段作るボカロ曲は作詞、作曲、編曲を自ら行っているのですが、創作する時はメロディーとコードを先に作る事がほとんどです。コード進行とメロディーを何度も聴き、その音楽の真ん中にいる人物像をじっくり想像してから書き始めます。 歌詞から先に書くこともたまにありますが、2年に1曲ぐらいだと思います。

  • Q4. お気に入りの仕事道具や、作詞の際に必要な環境、場所などがあれば教えてください。

    基本的にどこでも作詞の作業は出来るのですが、意外と新幹線での移動中や、フライトの待ち時間、滞在先のホテルで考えている事が多く、家ではどちらかというと作曲や編曲作業をしています。

    仕事道具は20代までは紙にペンで書いていましたが、最近はMacBookとテキストエディタで書いています。スマホでは書いたことはありません。

  • Q5. ご自身が手掛けた歌詞に関して、今だから言える裏話、エピソードはありますか?

    「シリウスが睡る街」という、YouTubeにもニコニコ動画にも公開していない、アルバムだけに収録している楽曲があるのですが、この曲は僕がボカロPをやる前に一緒にバンドを組んでいたボーカルに宛てた曲です。

    彼は高校の同級生で、一緒に上京して音楽活動を共にしていた仲間でしたが、2015年にこの世を去りました。自分の中でなかなか整理できない彼への感情を歌詞に書き記しておこうと思いこの曲を書きました。

  • Q6. 自分が思う「良い歌詞」とは?

    生きた人間の姿が想像できる歌詞です。特別な景色というわけではなく、コンビニで飲み物とお菓子を買って家に帰る男女だったり、電車から降り立ってホームから見る景色だったり。情景や世界観に没頭できる、物語に感動できる歌詞が好きです。

  • Q7. 「やられた!」と思わされた1曲を教えてください。

    「やられた!」というか「すごいな!」と思った曲はあります。
    古い曲なのですが、中島みゆきさんの「ファイト!」という曲です。
    <あたし中卒やからね 仕事をもらわれへんのやと書いた>というシンプルな一行から強烈に浮かび上がってくる景色と人間の姿の解像度がすごいなと感動しました。 その後に続く群像劇のような歌詞の情景描写たちを優しく包む「ファイト!」という言葉が眩くて、美しくて、かわいらしくて、強いと感じます。

  • Q8. 歌詞を書く際、よく使う言葉、
         または、使わないように意識している言葉はありますか?

    同じ“ねじ式”という人間が書いている歌詞なので、よく出てくる言葉や情景はあると思います。 でも過去の作品を見返して、「この言葉は使ったからもう使わないでおこう」という制限はあまりしません。 描きたい景色や情景はどこか自分の中で不成仏霊みたいな存在なので、成仏するまでは何度も同じ言葉を使って歌詞を書くのだろうなぁと思います(笑)。

  • Q9. 言葉を届けるために、アーティスト、クリエイターに求められる資質とは?

    今はSNSなどを通して無料で文字を読む事が増えて、知識が蓄積するスピードと量は高まっていますが、それに反して、小説などのように「完成して販売されている文章」というものに触れられる機会は減ったのかなとも感じます。

    自分が歌詞を書いたり文章を書いたりして、仕事として文字を生み出していきたいと思うのだったら、小説などの書籍を買って読む機会を増やすのも大切だと思います。

  • Q10. 歌詞を書きたいと思っている人へのアドバイスをお願いします。

    日頃から人と会話している時から、どう伝わるか、どう伝えるかを考えて話すと思考のトレーニングになって良いと思います。 あとはブログやSNSなども使って、自分の考えを他人にどう伝わるかを考えて文章を紡いでしっかりまとめる練習をするのも良いと思います。

歌 手
ねじ式
タイトル
紫陽花の夜
この曲はその当時交際していた女性と別れた時に書いた曲です。当時の感情をとても生々しく表現していて、自分としては若干照れくさいところもあるのですが、歌詞として発表した事で今でも聴いてもらえる事を嬉しくも思っています。
2013年8月6日に「六等星の夜」を投稿しデビュー。
作詞・作曲だけでなく、全ての楽器演奏も自ら行っているマルチプレイヤー。
代表作は「フリイダム ロリィタ」「Ice breaker」「ピニャコラーダ」など。

また、各種大学、専門学校、高等学校のゲスト講師、講演、著作権に関するオンラインサロンのコメンテーターなど、講師業も積極的に行っている。
日本音楽著作権協会(JASRAC)理事。