ぼくたちの失敗森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | 春のこもれ陽の中で 君のやさしさに うもれていたぼくは 弱虫だったんだヨネ 君と話し疲れて いつか 黙り こんだ ストーブ代わりの電熱器 赤く燃えていた 地下のジャズ喫茶 変れないぼくたちがいた 悪い夢のように 時がなぜてゆく ぼくがひとりになった 部屋にきみの好きな チャーリー・パーカー 見つけたヨ ぼくを忘れたカナ だめになったぼくを見て 君もびっくりしただろう あの子はまだ元気かい 昔の話だネ 春のこもれ陽の中で 君のやさしさに うもれていたぼくは 弱虫だったんだヨネ |
雨のクロール森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | 夏の川辺に 二人は今日別れる ぼくは黙って 草笛吹いた ウフフフ~ ウフフフ~ 君は花がらのワンピースおいて 静かに涙色のまぶしい水の中 ウフフフ~ ウフフフ~ 雨に君の泳ぐクロールとってもきれいネ 雨に君の泳ぐクロールとってもきれいネ 夏がめぐりめぐっても ぽくはもう決して 泳がないだろう |
淋しい雲森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 木森敏之 | いつも君のあとから長い影をふんで いつも君のあとからついてゆきたい どこへ行くあてもなく ぼくたちは よく歩いたよネ 夏の街の夕暮れ時は 泣きたいほど淋しくて ぼくひとりでは とてもやって ゆけそうもないヨ 君の好きなミセスカーマイケル ぼくもいいと思うヨ 夏休みが終わったらもう逢えなくなるネ そうしたら時々 なつかしいミセスの 話をしようヨ 夏の街の夕暮れ時は 泣きたいほど淋しくて 君ひとりでは とてもやって ゆけそうもないから どこへ行くあてもなく ぼくたちは よく歩いたよネ 夏の街の夕暮れ時は 泣きたいほど淋しくて ぼくひとりでは とてもやって ゆけそうもないヨ |
ぼくと観光バスに乗ってみませんか森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 石川鷹彦 | もしも君が 疲れてしまったのなら ぼくと観光バスに 乗ってみませんか 色あざやかな 新しいシャツを着て 季節はずれの ぼくの街は なんにもないけれど 君に 話ぐらいはしてあげられる ぼくの 小さな海辺の観光地に もうすぐ冬がきます 君も一度気がむいたら たずねて下さい 雅兄 もしも君が すべていやになったのなら ぼくと観光バスに 乗ってみませんか 君と 今夜が最後なら トランジスターラジオから流れる あのドューユワナダンスで 昔みたいに うかれてみたい あのドューユワナダンスで 昔みたいに うかれてみたい |
君と淋しい風になる森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 石川鷹彦 | 明日になれば どのように ぼくは 君を愛すだろう 時は 短かく ぼくたちは もっと短かい 形のない愛は いつもぼくを すりぬけて いつか ふたりは 淋しい 風になる 明日になれば ぼくたちは ひとり どうして 生きるだろう 君が いない この朝は もっと淋しい 形のない愛は いつもぼくを すりぬけて いつか ひとりで 淋しい 風になる |
ふるえているネ森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 木田高介 | ぼくの てのひらで 君は ふるえているネ ぽくの やさしい 手の中で このまま 君は 死ねばいい 飛べない ぼくの あげは蝶 |
ぼくが君の思い出になってあげよう森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 木田高介 | 君は いつか ぼくから離れて ひとりで 大人に なってゆくのサ ほんの少し 淋しくても 君は 都会の中で ひとりで やってゆけるサ 君が 忘れた 砂ぼこりの風が吹く この街に ぼくはいる 淋しかったら いつでも 帰っておいで ぼくは 待っていてあげよう 年上のぼくが 淋しいと云ったら 君は このぼくを 笑うかな さびれたこの街で もう 若くはない ぼくは 君の 思い出になってあげよう |
G線上にひとり森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | 夏草の上に ねそべって まぶしい孤独な 夢がひろがる ひとり目ざめて あくびして 涙ふいた 夏の空は ヒコーキ雲 何にもいわない 六月の空は ぼくの好きな みずいろです 暗闇よ ぼくを呼べ 遠い記憶へ あなたの ところへ ぼくをつれてって やさしい風は ぼくをなでて ひとりは とても いい気持 夏草の上に ねそべって いま ぼくは 死にたいと思う |
赤いダウンパーカーぼくのともだち森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 千代正行 | 電車が通るたび なつかしくゆれる チャーリーブラウンの店で 君を見つけた 赤いダウンパーカー ぼくのともだち あの頃君は 名画座の中で いつもスクリーンの向うに 孤独を見ていたネ 赤いダウンパーカー ぼくのともだち そんなに悲しい 目をしてぼくを見る 昔にこだわる君の話 ぼくにはもう辛すぎる 赤いダウンパーカー ぼくのともだち 弱虫で静かな君を ぼくはとっても好きだった 君はぼくのいい友達だった さよならぼくのともだち 君は少しの 酒に酔い ぼくは君の淋しい寝息を 聞いている 赤いダウンパーカー ぼくのともだち 何もなかった ぼくたちの終りに 君と冷たい牛乳飲んで 声を出さずに笑った 赤いダウンパーカー ひとごみに消えた |
みんな夢でありました森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 千代正行 | あの時代は何だったのですか あのときめきは何だったのですか みんな夢でありました みんな夢でありました 悲しいほどに ありのままの君とぼくが ここにいる ぼくはもう語らないだろう ぼくたちは歌わないだろう みんな夢でありました みんな夢でありました 何もないけど ただひたむきな ぼくたちが立っていた キャンパス通リが炎と燃えた あれは雨の金曜日 みんな夢でありました みんな夢でありました 目を閉じれば 悲しい君の笑い顔が 見えます 河岸の向うにぼくたちがいる 風の中にぼくたちがいる みんな夢でありました みんな夢でありました もう一度やりなおすなら どんな生き方が あるだろうか |
たとえばぼくが死んだら森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | たとえば ぼくが死んだら そっと忘れてほしい 淋しい時は ぼくの好きな 菜の花畑で泣いてくれ たとえば 眠れぬ夜は 暗い海辺の窓から ぼくの名前を 風にのせて そっと呼んでくれ たとえば 雨にうたれて 杏子の花が散っている 故郷をすてた ぼくが上着の 衿を立てて歩いている たとえば マッチをすっては 悲しみをもやす この ぼくの 涙もろい 想いは 何だろう たとえば ぼくが死んだら そっと忘れてほしい 淋しい時は ぼくの好きな 菜の花畑で泣いてくれ |
ラスト・ワルツ森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | 美しき明日に ついても語れず ただあなたと しばし この時よ すべてが なつかしき この時よ すべてが終る この夜に せめて 最後に ラスト・ワルツ この暗き部屋の 窓から 街の灯は まばゆく 自由が 見える すべてが 遠き この時よ このまま 若い日が 終るのなら せめて 最後に ラスト・ワルツ 美しき明日に ついても語れず ただ あなたと un deux trois すべてが帰らぬ un deux trois すべてが 終る un deux trois せめて 最後に ラスト・ワルツ |
蒸留反応森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | 長いマフラー ふたりで 巻いた 君のかじかんだ 小さな手 ポケットの中で 冷たくて いい気持 雪よ降れ んーん 雪よ降れ んーん 去年の夏の 君の Tシャツみたい 白一色おおわれて どこまでも ぼくは 目を細めて まぶしいヨ いい気持 雪よ降れ んーん 雪よ降れ んーん 白い向うへ もっと白く 君のまつ毛に 雪が降って重たそう ぼくの 口唇で とかしてあげよう いい気持 雪よ降れ んーん 雪よ降れ んーん ふたりの足跡 雪が消してゆく ぼくが冷たくて きみがつめたくて ふたりの歯が カタカタ鳴って おかしいネ いい気持 雪よ降れ んーん 雪よ降れ んーん ぼくときみは 雪にうもれて もう見えないヨ 白一色世界 ああきれいだネ きれいだネ いい気持 雪よ降れ んーん 雪よ降れ んーん |
ぼくは16角形森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 比呂公一 | ぼくは淋しい勉強部屋から 無力なぼくの抒情を話そう 今日は 白い水仙一輪ざしで 少しやさしい気分 ぼくはページをめくり 思想のむなしさを読む アッアッ ぼくが ぼくで あろうとし ぼくが どこまでも ぼくで あろうとし ぼくが どこへ どこまでも どこかで ぼくで あろうとし アーア アーア アーア アーア ぼくは 淋しし勉強部屋で 蒼いインクの血を吐く ぼくは 斜めに ねじれて 逆さに 宙づりだ |
孤立無援の唄森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | | ネェ何か おもしろいことないかなァ 貸本屋の のき下で雨やどリ 君は むずかしい顔して 立読みしながら 本を盗んだ ぼくの 自転車の うしろで 孤立無援の思想を読んだ 春になったら 就職するかなァ 壁に向って 逆立して 笑った 机の上の 高橋和己は おこった顔して さかさに見える どうして 生きていいのか わからぬ ふたりが 畳の上に ねそべっている ネェ何か アルバイトないかなァ 君はモノクロ テレビのプロレス見てる ふたりはいつも 負け役みたい でんぐリ返って 地獄がためだネ 窓ガラス あけると 無難にやれと 世の中が 顔をしかめてる ネェどうにか やってゆけるかなァ タッグマッチの 君が いないから ぼくは 空を飛べない 年老いた スーパーマンみたい どうして 生きていいのか 解らぬぼくが 畳の上に ねそべっている 「語り」 葉書き ありかどう 君といた時間が 長過ぎだのかもしれません ぼくは もう少し こうしていたい気持です 新しい背広を着た 真面目な君を見るのは 少し恐い気もしてます でも 近いうちに 君に逢いたいと思います |
ひとり遊び森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | 森田童子 | チィチィよ ハァハァよ あなたのいい子で いられなかったぼくを 許して下さい ぼくはひとりで 生きてゆきます 声を出さずに 笑うくせ 悲しきくせは 下唇をかむ 窓にうつした ぼくの顔 初めてタバコを 吸いました 悲しき嘘も 知りました 夕べあなたの 夢を見ました 海がぼくと死んでも いいヨって呼んでます すさんでゆくぼくの ほほが冷たい 誰かぼくに話しかけて 下さい チィチィよ ハァハァよ あなたのいい子で いられなかったぼくを 許して下さい ぼくはひとりで 生きてゆきます |