2019年12月31日『第70回NHK紅白歌合戦』が放送され、白組が勝利を果たしました。オリンピックイヤーに向かって【夢を歌おう】をテーマに掲げてきた4ヵ年計画の、4年目となる今回。話題となったのは、メッセージ性の強い、番組終盤のステージでした。前回の紅白で「紅組も白組も性別関係なくいけばいいと思う」と話した“星野源”は2019年、そのメッセージに通ずるようなピンク色の衣装で歌唱。“氷川きよし”は潔い「白」バージョンと、艶やかな「紅」バージョン、左右のスクリーンに2種類の自身が映し出されるなか「大丈夫!大丈夫!」と歌唱。そして“MISIA”は「年齢も性別も、国境さえも愛の力と音楽で越えていきたい」という想いから、LGBTQの象徴であるレインボーフラッグを背に、圧巻の歌声で魅せました。

 新時代に突入したからこそ、改めて今“すべてのひとが自分らしく輝き、愛に満ちてゆきますように”とアーティストたちが祈りのメッセージを放ったのです。尚【歌手別視聴率TOP10】(日刊スポーツ)では、1位に今年いっぱいで活動を休止する大トリの嵐。2位に氷川きよし、3位にMISIAと続きました。ただし、歌詞アクセス数に表れた紅白の反響に注目してみると、必ずしも視聴率と“歌詞の注目度”が比例しているわけではないことがわかります。この特集では、そんな“紅白効果”に注目してみました。
 最も歌詞アクセス数が上昇したのは、Foorinの「パプリカ」です。2020年に向けての応援ソングとして米津玄師が作詞・作曲し、プロデュースを手がけた小中学生の音楽ユニット。彼らが歌い踊る「パプリカ」は、2018年8月のリリース以降、日本中のこども達に大ヒットのキッズソングとなり、2019年末には音楽番組に総出演。そして『第61回 輝く!日本レコード大賞』では大賞を獲得しました。

 その“レコ大”放送日である12月30日には、29日の約3倍の歌詞アクセス数を記録。さらに12月31日には、紅白に出演した全アーティストの楽曲で「パプリカ」が最もアクセスされた歌詞となりました。例年【紅白効果 楽曲別アクセスTOP20】の上位にランクインするのは、番組後半に歌唱したアーティストです。しかしFoorinはトップバッターでありながら、歌詞アクセスも1位という異例のパターン。
会いに行くよ 並木を抜けて 歌を歌って
手にはいっぱいの 花を抱えて らるらりら
パプリカ 花が咲いたら 晴れた空に種を蒔こう
ハレルヤ 夢を描いたなら 心遊ばせあなたにとどけ
かかと弾ませこの指とまれ
「パプリカ」/Foorin
  
 さらに“すでにみんなが歌える楽曲”は、改めて歌詞の検索がされにくく【紅白効果】は低い傾向にあります(例:星野源「恋」(2016年紅白)、AKB48「恋するフォーチュンクッキー」(2015年紅白)、SMAP「世界に一つだけの花」(2014年紅白)など)。ですが、多くの子どもたちが歌って踊れる、Foorin「パプリカ」は例外でした。

 実は今回の場合、トップバッターであり、かつ、子どもを中心に広がったヒットソングである点が【紅白効果】1位の理由なのではないでしょうか。まず、放送時間帯が早く、小さいお子さんと一緒に観ることができた。そこで大人も改めて「パプリカ」の歌詞に触れる機会になった。また、初めて“米津玄師”作詞作曲であることを知った方も多いのではないでしょうか。つまり“キッズソング”としての認識だった同曲が、世代を超えて大人の心にも留まり、その結果が【紅白効果】として反映されたのです。2020年は“国民的ヒットソング”として、ますます世に広まっていくことでしょう…!
「まちがいさがし」 /菅田将暉
まちがいさがしの間違いの方に
生まれてきたような気でいたけど
まちがいさがしの正解の方じゃ
きっと出会えなかったと思う
 今回の紅白では、前述したように、メッセージ性の強い演出が話題となりましたが、氷川きよしはメドレー曲「大丈夫」「限界突破×サバイバー」ともに【紅白効果 楽曲別アクセスTOP20】にはランクインしておりません。また、MISIAも歌唱中のレインボーフラッグが話題となった「INTO THE LIGHT」や「Everything」はランキング圏外。メドレーの冒頭で、シンプルに聴かせた「アイノカタチ」のみが7位にランクインする結果となりました。

 他【紅白効果 楽曲別アクセスTOP20】にランクインしている楽曲に注目してみると、菅田将暉「まちがいさがし」をはじめ、Official髭男dism「Pretender」、ビートたけし「浅草キッド」、竹内まりや「いのちの歌」、King Gnu「白日」、Superfly「フレア」、松任谷由実「ノーサイド」と、派手な演出はなくストレートに“聴かせ”、また比較的“歌唱時間”の長かった楽曲がTOP10入りしていることがわかります。
「浅草キッド」 /ビートたけし
1人たずねた アパートで グラスかたむけ なつかしむ
そんな時代も あったねと 笑う背中が ゆれている
夢はすてたと 言わないで 他にあてなき 2人なのに
夢はすてたと 言わないで 他に道なき 2人なのに
 とくに、ビートたけし「浅草キッド」は放送後、SNS上で「魂を揺さぶる歌だった」など称賛の声が数多く上がっていたため【紅白効果】の余韻が長く、1月1日もさらに歌詞アクセス数を上げております。リアルタイムでは観なかった録画組のユーザーからも、多くのアクセス数を得たのではないでしょうか。今回「バラエティ番組化している」「歌がメインじゃなくなった」といった批判も多く観られた紅白歌合戦。だからこそ、より“歌をメイン”で魅せたアーティストたちが【紅白効果 楽曲別アクセスTOP20】にランクインする結果となったのでしょう。
 【紅白効果 楽曲別アクセスTOP20】で3位にランクインしている、星野源「Same Thing」は12月29日、30日ともに歌詞デイリーアクセス数が約300回ほどでした。全英詞であるため、歌詞の内容がすぐには伝わりにくかったのでしょう。しかし、紅白歌合戦では英詞に“日本語訳”がついておりました。さらに同曲内には<fuck>というワードも綴られており、ファンの間では「紅白ではどうなるのか…」と注目されていたところ、本番では歌詞を変えて歌唱。ゆえに、SNS上で歌詞に注目が集まり、アクセス数が急上昇いたしました。尚「Same Thing」は10万アクセスを超え、現在“歴代人気曲”として認定されております。紅白歌合戦により改めて“歌詞”のメッセージがしっかりと伝わり、世に広まる。これぞ【紅白効果】と言えるのではないでしょうか。
さて、令和最初の紅白歌合戦は幕を閉じましたが、2020年はついにオリンピックイヤー!一体、どんな一年になるのか。どんな名曲たちが生まれてゆくのか。未知への期待が高まりますね!また、2020年12月31日は“嵐”の活動休止前、最後の日。そのラストステージは紅白となるのでしょうか。4ヵ年計画【夢を歌おう】を終えた、今年の紅白歌合戦の新展開を楽しみに待ちましょう…!