12年間、リアルなラブソングを書きすぎて…

― ここで川崎さんからいただいたトークテーマを。「制作しながら、これは別の曲で伝えたなぁとか、言い方変えてるだけだなぁとか、被ってしまうようなことはありますか?そしてそれをどう打破していますか?」。

川崎:俺はリアルなラブソングを書きすぎて、「もうすべて歌った」みたいなことがものすごくあるんですよ。高校卒業して、18歳からやってきていますから。

高橋:今、何歳になった?

川崎:30歳になりました。

高橋:30歳になったか! じゃあ12年はリアルなラブソングを書き続けているわけだ。

川崎:そうなんですよ。違うアプローチをしてみても、「この曲で言いたいことは、結局あの曲のメッセージと一緒だな」ということが大いにあって。それで楽曲提供の想定で書いてみたり、いろんなチャレンジはしているんですけど。僕より圧倒的に曲数も多いおふたりは、どうされているのか訊いてみたくて。

高橋:僕の場合、今まで行ったことないところに行くかな。クレープ屋さんとか、何でもいいんだけど。あと、観たことないタイプの映画を観たり。鷹也くんの言うとおり、曲に着手しても途中で、「あ、俺、また同じようなこと言っている」ってなってくるじゃない。そういうとき、たとえばラブソングを書いていたら、血みどろのスプラッター映画を観るわけ。

川崎:なるほど、まったく違うエッセンスを取り入れるんですね。

高橋:そうそう。ラブソングを書こうとするとき、俺は恋愛映画なんて絶対に観ないんだよね。「こんな映画がもうこの世にあるのなら、俺が書かなくてもいいや」って思っちゃうもん。やきもち焼きだから。

橋口:なんかわかるそれ。でも、ラブソングを書くときに血みどろの映画を観たりするから、スキーの映像にマイナー調の激しい曲をぶつけちゃったりするんじゃない?

高橋:そもそもそういうのが好きなんだよね。だってさ、「バラードのラブソングを書いてください」って言われたら、もうバラードのラブソングモードになっちゃわない? 大体、頭はこういうメロディーで…みたいな。

橋口川崎:なりますよ。

高橋:俺はあれがイヤなの。たとえば、部屋でふたりきりになった途端、話し方が変わるカップルとかいません? もういちゃいちゃ恋愛ムード。そういうふたりって、喧嘩ムードになったら喧嘩ムードになるんですよ。別に片方は違う態度を取ることもできるのに、決定されたムードが進んでいくのが大嫌い。「相手がそう来るなら、俺は逆に行くぞ!」みたいなところがある。だから、ラブソングを作るときほど、岡本太郎の動画を観たりするよ。

橋口川崎:えー!?

― そういう独特なきっかけから生まれたラブソングって、たとえばどの曲が浮かびますか?

高橋:まさに、今年12月にリリースするベストアルバムに入る最新曲「黎明」かな。ラブソングを書きたいと思って作り始めたんですけど、そのときに映画『大長編 タローマン 万博大爆発』を観たんですよ。岡本太郎さんの太陽の塔がウルトラマンみたいになって街で大暴れするの。知ってる?

橋口川崎:知らないです。

高橋:ええ!おもしろいのに! あれを怒髪天の増子直純さんに勧められて観たら、もう最高で。そうやってエッセンスが入ってきたことで、僕にとってよくないラブラブモードのスパイラルから脱した感覚があったんです。その結果、「黎明」を書くことができました。

川崎:逆に100%恋愛モードに浸りきった、お花畑モードの優さんのラブソングも聴いてみたいですけどね。

高橋:完全にお花畑の恋愛とか、これからできるかな。俺ら40代だぜ?

橋口:いやできるでしょ。優さんは。

高橋:なに、「優さんは」って。橋口くん同じ歳じゃん。

橋口:モテるでしょう。俺なんかDMも静かなんだから…。

高橋:DMなんか俺だって来ないよ(笑)。

俺が一生のなかでいちばん言われた言葉

― 書くものが被ってしまうというお話、橋口さんはいかがですか?

橋口:僕の場合、さっきもお話したとおり応援歌では被りがちで悩むけれど、ラブソングでは被らないかな。多分、鷹也くんはとても広いテーマで作っているから。誰かへの愛とか、大事にしたい気持ちとかを、ストレートに歌う魅力があるじゃないですか。僕が書くのは、恋愛のワンシーンなんですよね。シチュエーションとかも限定していて、細かい歌をたくさん書いている。でも、大きな括りでは一緒なのよ。失恋ソングは失恋ソング。

高橋:別れることに変わりないもんね。

橋口:極論を言えばそう。「別れて寂しい」って気持ちをいろんなシチュエーションで歌っているんです。

高橋:別の人の彼女になったりね。

― 具体性がありますよね。たとえばwacciさんの「そういう好き」の<この街で私が見つけた居場所は 195×50センチ>など描写が細かくてすごいなと。

高橋:あの曲、いいよね。

橋口:「そういう好き」は、もうサビも<そういう好き>っていう具体的なワードだけで書いちゃっていますね。

― あの設定はどのように思いついたのですか?

橋口:なんか会話でみんな、「そういう好きじゃない」ってめっちゃ使うじゃないですか。

高橋:俺が一生のなかでいちばん言われた言葉だ。

川崎:(笑)。

橋口:いやいや、優さんもたくさん言ってきたんじゃないですか?

高橋:言ったこともあるよ。でも言われたことのほうが多い。要するに、勘違いで近づいてきたひとに対しての言葉だよね。「ごめん、そういう好きじゃなかったわ」って。片方が勝手に盛り上がっていただけ、みたいな。

橋口:そうそう。だから「そういう好き」って何も具体的なことは言ってないのに、ものすごく言いたいことが伝わるじゃないですか。そういうワードっていいなって。それで調べたら、このタイトルやテーマでラブソングを書いているひとは誰もいなかったから、僕が使いました。

高橋:恋愛あるあるが上手いよね。

橋口:あ、そうそう。僕は多分、あるあるを書いているだけなんですよ。

川崎:でもその着眼点がすごいと思う。

橋口:ネタはいろんなひとの会話からいただいていますから。あと女性目線で書くとかなり制限がなくなるので、それも楽ですよ。だから鷹也くんも、悩んだら少し歌詞を細かくしてみるのはありかもしれない。

「塞いで」

― それでは最後に、橋口さんからいただいたトークテーマを。「いつか書いてみたい歌詞のテーマはありますか?」。橋口さんは以前、「エロい歌を書きたい」とおっしゃっていましたね。

高橋:え、なんでエロい曲書きたいの? 急にどうしたの?

橋口:40代になって、色気とかも出していきたいじゃないですか。優さん、アハハじゃないよ。

高橋:ごめんごめん(笑)。

橋口:ちょっと上から目線のエロ。「油断してんなよ?」みたいなやつを書きたいと思ったんですよ。

川崎:俺様系で?

高橋:松崎しげるさんの「愛の6日間」みたいな?(歌う) ♪一日目はキスを かわすだけで お前を抱いて あげない 二日目は胸に さわるだけで お前を抱いて あげない♪

橋口:ちょっと…待って、待って。

川崎:飲み会のあとのカラオケだ(笑)。

高橋:六日目まで抱かないの。旅に出たって抱かないんだから。

川崎:エロかぁ。でも橋口くん、それ具体的にどんな歌詞?

橋口:だから、「油断するなよ」とか、「塞いで」とか。

川崎高橋:「塞いで」?

橋口:えーと、唇を…塞ぐんですよ…。

高橋:なんだそれ。どういう状況?

川崎:橋口くん、マネージャーさんたちの顔見て?

橋口:なんで俺の書きたい歌詞でみんな笑ってんの! でも、鷹也くんはもうめっちゃエロさがあるから必要ないよね。

高橋:うん、セクシーさがある。

橋口:これから何を歌いたい?

川崎:子ども目線の歌は書いてみたいなぁと思ってます。今、5歳と1歳なんですけど、彼らが思っていることを歌詞にしてみたい。1歳の子は喋ることはできないけれど、きっとその子なりに考えていることがあるじゃないですか。それが来年になって、6歳と2歳になったら、また変わってくるだろうし。常に今しか書けない彼らの気持ちを歌詞に落とし込めたらおもしろいのになと思っています。なかなか難しいけれど。優さんは?

高橋:今回、3人でお話させてもらって、いろんな刺激を受けたからな。たとえば、鷹也くんに言われたように、100%恋愛モードに浸りきったお花畑モードのラブソングも書いてみたいし。橋口くんが言うようにエロい歌も書いてみたいし(笑)。

― ぜひ、この3人で共作の歌詞も書いていただきたいです。

高橋:“メガネの会”のライブ用に3人で歌った曲はあるけれど、意外と共作はないね。

川崎:あの曲は僕が作詞作曲をしているんですけど、ふたりが歌うことを想定して書いたので、提供のニュアンスも入っているんですよ。

高橋:じゃあ、「塞いで」っていうテーマで新たに3人の歌を書こうよ。

川崎:うわー、俺、悩むだろうなあ…。

高橋:「塞いで」って何なの?

橋口:だから、唇で…唇を…。

川崎:フェードアウトで終わりです(笑)。