―― アルバムのなかで、今の心境に一番近いなと思う歌詞を挙げるとしたら、どの曲でしょうか。最新ちゃんみなというような。
最新ちゃんみな…でいうと「Like This」ですね。動きたい!みたいな。
―― あ、この歌は<あなた>って呼んでいますね。
ふふ、そうなんです。<こんな風に こんな事したら…どうするの?>ってフレーズとか、なんかそういうモードですね、今(笑)。もうね、私は曲を出せば、何もかもみなさんに丸見えなんですよ。プライベートなんてありませんからね(笑)。
―― では、歌詞面で「書けてよかったなぁ」と思うフレーズはありますか?
まず「Yesterday」の<大切な物が壊れた音は鈍く刺さる 探したけどどこのコードにもなかった音だね>ってフレーズは、私の感情をうまく言葉にできたなって思いますね。以前だったら書けなかった。その出来事があった日、本当に候補を探したんですよ。コードのなかに<大切な物が壊れた音>がないか。で、しっくりくる音がなかったから、この表現はやめようと思ったんです。だけど「あ、じゃあそのまま<どこのコードにもなかった>って書けばいいんだ!」と気づいて、このフレーズが出来たんです。
あと「君が勝った」の<嫌いになんないで baby 私 少し、少しだけ問題あって>というフレーズも。シンプルな言葉だけれど、ちゃんと“私”という人間を表現できましたね。その<問題>が何なのかは言ってないけれど、いろんなことが伝わるような気がします。
―― 普段、曲作りはどのような形で進めていくことが多いのでしょうか。
曲に歌詞をつけていくことが多いんですけど、歌詞自体は毎日書いていますね。何か大きなことが起こったときはブワーッと書くんですけど、基本は「今日こういう空を見て、こう思った」とか、日常で感じたことをワンフレーズでも書くようにしていて。そういう毎日のヒントを溜めていって、曲を書くときに「あの出来事を書きたいな」と思ったら、そのヒントをもとに広げていく感じです。
―― 歌詞を書くときに大切にしていることは何ですか?

自分の気持ちに一番近い言葉を探すこと。あと“話し言葉”で書くことですね。たとえば、一人称にあえて<僕>とか使う方も多いじゃないですか。でも私は話すとき、自分のことを<僕>とは言わないから、それは使わないんです。だから「Yesterday」の<怒ってた分の倍は悲しくなるんだよ>とかも“悲しくなるのさ”じゃなくて“なるんだよ”なんです。そこは大切にしていますね。
―― 作詞の際、好きでよく使う言葉はありますか?
<呪い>…ですね(笑)。なんか好きなんですよね。<呪い>という表現をすればなんでもうまく収まる気がするし。それこそ今作だと「Can U Love Me」の<この国にはそんな子は モテない呪いがあるんだ>とか。あと「Doctor」の<この時代は情報が溢れる 呪いにかかってます>もそうですね。<呪い>って風習とかそういうのをひっくるめた言葉じゃないですか。日本語にしかないような、不思議な表現だと思います。
―― 逆に、先ほどの<僕>もそうですが、使わないようにしている言葉はありますか?
難しすぎる英語は使わないようにしています。あと、とくに心掛けているのは、ラブソングを書くときに「愛している」とか「好きだよ」のような直球すぎる告白は、避けていますね。今回のアルバムでは2回だけ使っているんですけど…。
―― それは、直球すぎるワードを使わずに「愛している」を表現したいという気持ちからでしょうか。
うーん、というより、いろんな実体験があって曲を書くときに「愛している」なんて言葉じゃ済まないんですよ。もっと感情って複雑だから「そんな言葉じゃないんだよな〜」って思うんです。ただ「アーカイブに保存した曲」では思い切り<愛してるよ>と使っているんですけど、これは成人式の前後くらいに、地元に向けて書いたものなんですよね。
―― なるほど!地元愛という大きな気持ちだったから、使えた言葉なんですね。
そうなんです。これはもう逆に<愛してるよ>以外に言いようがないと思いましたね。「愛してるよー!地元ー!」みたいな(笑)。それぐらいの気持ちじゃないとなかなか難しいですね。
―― ありがとうございました!では最後に、ちゃんみなさんがこれから挑戦してみたいのはどんな歌詞ですか?
アヴリル・ラヴィーンの「スケーター・ボーイ」みたいな歌詞ですね。“<He was a boy She was a girl>=彼は男の子で、彼女は女の子だった”と、第三者が二人の物語を語っていくような構成になっているんですよ。そういうのもおもしろそうだなと思います。書き下ろしとかもやってみたい。このストーリーにどういう歌を書くか、みたいな。あとK-POPの和訳とか。これはもう絶対に日本で私しかできないと思います(笑)。やりたいと思うことはまだまだたくさんありますね!