―― 「エール」は、新生ファンモンとしての最初の作品ですが、制作にあたってこれまでの“ファンモンらしさ”というところは重視されましたか?
モン吉 僕は意識しましたね。いろいろ試行錯誤はしたんですけど、やっぱり“ファンモンらしさ”を大切にしたかな。
加藤 うん、どちらかというとそうだね。なんかいつも俺がモン吉からメロディを受け取ってからが長いんですよねぇ。家に持って帰って、歌詞に「うーん…」ってなり始めてからが長くて。ちょっと今回はとくに…。
モン吉 今回は長かったよねぇ。長すぎて発売日が延びた(笑)。
加藤 もともと9月15日にリリースする予定だったんですけど、人生で初めての延期となりました。ファンモンの復帰シングル一発目ということで、良くも悪くもデカいものを感じちゃっていましたね。俺にとってもモン吉にとってもハードルがグッと高かった。モン吉もボツ曲となったものがいっぱいあって「なんかモンちゃん、これもう一歩届かないねぇ」みたいな話をしたり。俺も「これは歌詞を踏ん張らなきゃな」とだいぶ時間をかけて書きました。ただ、ファンモンらしさをすごく意識したというよりは、ナチュラルにやればそれがファンモンらしさになるだろうなとは思っていたかな。
―― 1曲目「エール」は、まさに歌詞もサウンドも「これぞファンモン!」です。こういうド直球な言葉を綴る応援歌は、最近本当に減りましたよね。
加藤 サブスクをチャート順に聴いても、まず<頑張れ>ってワードは出てこないですよね。コロナ禍でより言いにくくなったところもあるし。でも、だからこそ、あえて、ファンモンが歌うべきだと思いました。ただやっぱり難しくもありましたよ。この<頑張れ>を入れるために周りの言葉をかなり微調整しました。ド直球な言葉というのは強すぎるところがあるので、言っているこっちが気持ちよくなっているだけの<頑張れ>じゃなくて、聴いてくれる人や歌の登場人物、ちゃんとみんなをしっかり巻き込めるものにすることには気を付けましたね。
―― 1番のAメロには、輝いて見える側の苦悩も綴られていたり、サビには<遠く走り続けるあなたへ 今 歩き始めていく僕らへ>と違う状況の登場人物が描かれていたり、どんな立場の人も置いてきぼりにならない応援歌だと感じました。
加藤 そうそうそう。最初は<あなた>が輝きすぎてしまって、陰のない印象だったんですね。単に<僕>にとって羨ましい存在というか。でもそうじゃなくて、ずっと走り続けている<あなた>にも、人知れずの努力や孤独があるし、走り続ける理由があるんだって。そういう存在だからこそ、嫉妬ではなく勇気をもらえるんだって。この曲の<あなた>はそうあってほしいなと思って、じっくり歌詞を書きましたね。
―― また、この曲では<卒業アルバム>や<グラウンド>というワードが“過去”の描写として描かれているからこそ、大人にも響く応援歌でもありますね。
加藤 あー、そうですね。これは「あるあるフレーズ」というか。僕はすごく寂しがり屋なので、なるべく多くの人を巻き込みたいという願望があって。誰もがポンと思い浮かべやすいようなシーンは曲の中に必ず入れたいなという気持ちがあるんですよね。
―― やはりファンモンさんといえば、応援歌のイメージが強いですが、応援歌を作る上でお二人が特に意識されていること、大切にされていることってありますか?
加藤 僕は「エール」もそうだけど、登場人物に強者はいらないかなと思っています。もちろんずっと勝ち続けている人はすごいけど、それよりも転んでつまづいて立ち上がる様を描きたいですよね。人間のいちばんカッコいい瞬間じゃないですか。やっぱり…高校サッカー選手権大会の試合後のロッカールームですよ。監督の最後の言葉とかね。あれぐらいのパワーをどうにかして歌で描けないかなって。まだまだ全然たどりつけてないんですけど、いつかそういう瞬間にも負けないぐらいの応援歌を作りたいですね。
モン吉 あと歌って、意外とちょっと遅れめで歌ったほうが上手く聴こえるんですよ。けどファンちゃんは逆に前のめり。それがスピード感だったりパワーだったりを伝えられるんですよね。だから僕もレコーディングのときとかは、意識して歌っています。上手く綺麗に聴かせるというよりも、ちゃんと人に伝わるように。
加藤 僕らはライブも基本的に前傾姿勢で歌っていますからね(笑)。決して背筋を伸ばして綺麗に歌うタイプではなく、ずっと前に前にという気持ちが表れちゃっていますね。
―― 「エール」で特にお気に入りのフレーズを教えてください。
加藤 俺は<今日も自分なりの空を見上げればいい>ですかね。『CDTVライブ!ライブ!』で歌ったときも、このフレーズに対して「良かったです」「救われました」とおっしゃってくれるファンの方が多かったし、自分でも好きです。なんかコロナに対してもワクチンに対しても正解は見出しづらいし、多様性も叫ばれていて。10人いれば10人の考えを尊重しなければいけない。そんなこの時代に<自分なりの空を見上げればいい>というのは、優しく響く言葉なんじゃないかなって気がしていますね。
モン吉 僕は<強く涙堪えたあなたへ 泣き疲れ眠る僕らへ ほらもうすぐ夜が明けそうだよ>ですね。歌詞としても好きなんですけど、メロディーに対して「これしかない!」ってフレーズだなと。ここは何回か変えようとしたんですけど、やっぱりこれに戻ったんですよ。なんか昔からここにあったかのような強さが良いなと思います。