気づいたら、あれ…涙が…って。

―― メッセージソングや応援歌を書くときに、大切にされていることは何でしょうか。

優しいかどうか。優しいって、難しいんですけど…。落ち込んでいたりとか、悩んでいたりする誰かに声をかけるとき、何も言わないっていうのも優しさだし。とことん話を聞いてあげるのも優しさだし。いろんな優しさがあるとわかった上で…。フレーズのなかで励ますのは簡単だけど、それが無責任じゃないかどうかすごく考えます。「みんな立ち上がれ!」「足を止めている暇はない!」って言っても、進み方やペースってひとそれぞれじゃないですか。相手に対して強要したくない。それでも力強いことを言いたいときは、必ず一人称を自分にします。

―― 「FLY&FLOW」も<わかってたって難しいね>というワンフレーズの優しさがあることで、伝わり方が変わりますよね。

<泣かないなんて決めないで 何回だってやり直して>というフレーズも、これだけが正解で正義だって伝わってほしくないんですよね。泣かないって決めて頑張るひともいるわけだから。絶妙な距離感で励ませたらいいなと思って、いつも歌詞を書いていますね。

―― もう1曲、洸平さんの作詞作曲による「旅路」は、今の等身大の気持ちが描かれている気がしました。

この10年役者をやってきて、音楽のことを考える時間があまりなかったような気がします。デビューが決まって、リリースがあったり、いろんな音楽番組に出させていただいたりして、ちょっとずつ自分がミュージシャンである自覚が芽生えてきて。自分にとって音楽がどういう存在なのか考える時間が多くなったんです。そうしたら、「それでもずっと続けてきたんだから、音楽は自分にとって必要不可欠なんだろう」という答えにたどり着いて。続いていくであろう自分の音楽人生のこれからも考えました。

1番の歌詞の通り、<歌っても 歌っても 船を漕ぐように歌っても 離れない 故郷の灯り>があるけど、それでも音楽と前に進んでいきたい気持ちは変わらないし、まだまだ見てみたい景色がある。そしてサビの最後に<そこには君もいる>ってフレーズを書きましたが、この<君>は聴いてくれる方のことなんです。ツアーでもこの曲をラストに置いているんですけど、まさに目の前にいるみなさんを<君>だと思って歌っています。今、僕が音楽をやっている意味とか、どういう気持ちで歌っているかとか、音楽に対するいろんな想いを込めたのがこの曲ですね。

―― <故郷の灯り>とは、何をイメージされたのでしょうか。

音楽をやるって決めたときのことですかね。ふと思い出したんです。親に反対されながらも、「それでもやるから」って八王子から都心のほうに出てきて。めちゃくちゃ有名になってやるって思って地元を離れたけど、全然うまくいかなかった。なんか…すげーいっぱい漕いでるのに、まだすぐそこに<故郷の灯り>が見えるじゃん!って(笑)。なかなかスタート地点から離れていかない。そういう「俺ってまだまだだな」という気持ちを表現したくて、こういう歌詞にしてみました。

―― ご自身で「旅路」のいちばん好きなフレーズをあげるとすると?

2番の<「強くなれ」言い聞かせても 訳のない涙は 逃げなかった証だ 無駄じゃないね痛みは>ですかね。綺麗事ばかりは言いたくないし、ちゃんと痛みとも向き合う歌詞にしたくて。自分も本当にわけもなくボロボロ泣いてしまうときがあるんですよ。気づいたら、あれ…涙が…って。

―― それは危険信号ですね…。

年に1回ぐらいあります(笑)。悔しくて泣いた日もあるし。でも…それだけ頑張ったって証拠だから。こういう経験って絶対に僕だけじゃないし、痛みに寄り添いながらも、自分なりにポジティブな想いもちゃんと込められたフレーズになったと思います。

―― もう少し作詞についてお伺いしていきます。洸平さんはどんなときに曲を書くことが多いですか?

何かあったときとか、何かに出会ったときにふっと思いつくことが多いです。だから日々、感じたことを箇条書きのようにして携帯にメモしています。僕はあまり書こうと思って書けなくて。たとえば「旅路」なんかも1番の<さながらロックスター投げたピックは>と2番の<憧れたスーパースター真似たピアスは>ってところ、1番に上手く言葉がハマってしまったので、2番はめちゃめちゃ悩んだんですよ。この曲に対しては絶対に韻を踏みたいという謎のプライドがあって(笑)。

一旦忘れて、違うことをやって。韻を踏もう踏もうと考えるばかりじゃなくて、2番で言いたいことを考えながら過ごしていて。そんなときに、まさに憧れていたアーティストの真似をして、全然似合ってないギラギラのピアスをしている昔の自分の写真が出てきて。うわ、ダッサと思って(笑)。

―― ギラギラピアスの姿が想像できません(笑)。

photo_01です。

当時シスコっていうR&Bのシンガーにめっちゃ憧れていたんですよ。アメリカの超スーパースター。僕は頭をコーンロウにして、偽物のダイヤのピアスをはめて…。その当時の写真を見て、かっこ悪いぜー!って。で、これを歌詞に書こうと思ったら「あ、<ピアス>で踏める!」って。この<憧れたスーパースター真似たピアスは>ってフレーズが出るまでに2週間ぐらいかかったと思います。だから書こう書こうと机に向き合っているよりも、ふと書きたいことに出会えたときのほうが前に進めるんですよね。

―― 洸平さんにとって、歌詞とはどんな存在のものですか?

いただく歌詞に関しては、やっぱり台本に近いなと思います。どういう世界をイメージして書いたのか共有したいし、それを頭のなかで映像化させるのが歌い手の仕事だと思うので、芝居を作るときと一緒ですね。自分で書く歌詞に関しては、僕の分身のような存在かなぁ。大げさなことを言うことも大事だし、それはそれで面白いんですけど、あまり背伸びをしないなるべくありのままの自分で書けたらいいなと思います。

―― ありがとうございます!では、最後にこれから挑戦してみたい歌詞を教えてください。

今ちょっと企んでいるのは、応援歌でもなく、新しいベクトルで表現する楽しい音楽で、あまりリスナーを限定させないようにしたい。誰かの背中を押すとかそういう大それたことではなくて、みんなが聴いて、みんなが楽しくなれる曲。テーマが何なのかはまだわかりませんが、めちゃくちゃ底抜けに明るい曲を今後、作ってみたいなと思っています。


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