今の脳内は生活5割、個人的な悩み5割という感じに…。

―― 年齢や経験を重ねていくなかで、歌詞に書きたいものは変化してきましたか?

変わりましたね。というか、自然に変わってしまいました。それこそ元恋人から言葉をもらって書いた「Dear drops」とか、「愛言葉」とかって、すごく本能的、衝動的というか。青いんだけど熱い気がするんですよね。炎も青いほうが熱いというじゃないですか。それって学生の頃は、やっぱり自分を占めるものの大半が恋愛になっていたからで。だからもともと僕はラブソングが多くて。

―― 学生の頃にしか書けないラブソングってありますよねぇ。

本当にそうなんですよ。でも今、社会に出てみて正直、「みんなどこで出逢っているの」と思います(笑)。さらに「恋ってどんな感覚だったっけ?」とか。それに伴って、物事を考える割合も変わっていって。たとえば、活動に対しての葛藤だったり、“生きていくとは”みたいなテーマだったり。あと、出会った人たちの見えてなかった部分が見えてきたことによるズレだったり…。

―― 想いのパワー配分量が変わっていくというか。

まさに。今の脳内は、生活5割、個人的な悩み5割という感じになっています。そうやって書きたいことが変わっていくのは自然なことだと思っていますし、まだ衝動に駆られて書く感覚もあるとは思うんです。でもなんかこう…薄れていっている気がしなくもない。そして、「いやいやいや、そんなことない」って思いたい自分もいる。

だからこそ、今回のEPが『HOMETOWN』というタイトルになったのだと思います。僕のホームタウンと言えば地元・茅ヶ崎で。学生時代の大半を過ごした場所。それは、あの頃の感覚から離れてしまった僕が、いちばん近づけるテーマなんじゃないかなって。なので今回の収録曲は“当時の感覚+今の視点”というような楽曲たちが揃った気がしています。

―― 今のYuukiさんがあの青い炎を見つめているというか。

photo_02です。

そう。「見つめて、今感じることはこうだな」という楽曲たちですね。2023年の“kotodama”ツアーで、僕は正直「自分自身が歌い続けていく理由は何だろう」って思いを抱きながらMCや歌を届けていて。その結果、やっぱりそれは「全国で待ってくれているひとたちのためだな」と。学生さんだったり、僕の親世代の方だったり、もっと年の離れた方も聴いてくれている。そういうひとたちに届けたい、という走り続ける理由は見つかったんです。

ただ、それはまた「自分の野望」とは別ものだと思って。そのツアーで野望的なものは見つからなかったんですよ。でも、別に焦って見つける必要はないなと。歌う理由がわかった上で、「これから何を歌いたいか」と向き合うために一度、原点に返って見るのはいいんじゃないかなって。だから今回は『HOMETOWN』という、いちばん自分の感情をさらけ出せる場所をテーマに楽曲を作ったのだと思います。

―― 1曲目「花詩」は、個人的にもかなり共感しました。Yuukiさんは学生時代、歌詞にあるように<嫌なこともやんなきゃいけない>とか<愛想笑い>とか<当たり障りない会話>とか、ちょっと苦手なタイプでした?

はい、そうです。まさにその通りです。

―― それが大人になるにつれ、徐々にうまく適応できるようになっていくじゃないですか。それって、本来はよい変化であるはずなのに、どこか「今の自分のほうが好き」と言い切れないモヤモヤがありますよね…。

僕が思っていたことがそのまま伝わっていて嬉しいです。「なんか違うんだよな」って感覚がずっとあるんですよ。適応できるようになったことと引き換えに、自分の本心を置いてきぼりにしているような気もするし。だから<まだ忘れちゃいないだろ?>って問いかけているというか、言い聞かせているというか。

―― すると<お前>というのは、「あの頃の僕」ですね。

そうです、さすがです。自分と会話するときって、やっぱり<お前>になりますよね。ちょっと厳しい口調というか。だからこれは決して、聴いてくれているひとに対して<お前>と言っているわけではない、というところはわかっていてほしくて(笑)。あの頃の青い自分を見つめながら、<お前がいつか無事辿り着けるまで>唄い続けていくからな、という決意を歌っているんですよね。

―― <真っ黒なキャンバスの端をはみ出す勇気がないから 今も色を重ねてる>というフレーズも印象的でした。真っ白、ではないんですね。

これは僕の思い込みである、という前提で聞いていただきたいんですけど…。多分、まだ塗り残している部分なんていくらでもあると思うんですよ。だけど、予定調和的な日々って、もう書くところがないくらい真っ黒なキャンバスにずっと色を重ねているみたいだなって。別に次のキャンバスに取り換えたって、裏面に書いたって、なんなら木の部分に書いてしまったっていいはずなのに。

そういうことができずに、同じ部分に色を重ね続けてしまう。正直これは、自分そのものだったりもします。失うものはないと思っていたけれど、気づいたら思った以上に背負ってしまっていて。新しい何かにチャレンジすることや、もう一歩踏み出してみることを恐れている。そういうリアルな気持ちを表したフレーズですね。

―― また、冒頭の<日々は パッパッと通り過ぎて>の部分などは、口ずさんでいて気持ちがいいなと感じました。普段、歌詞はどのような流れで作っているのでしょうか。

先にメロディーですね。そこに字余りなく、言葉を乗せることが好き。ひとつの音にひとつの文字をピタッとハメたいんです。ただそうすると、伝えたいことと音のバランス調節が難しくて作詞にいちばん時間がかかります。

あと、冒頭の<歩幅合わせ>の部分は音階が“ドレミファソ”と上がっていって、大きく拍を取っていて。次の<日々は パッパッと通り過ぎて>で倍の速さになるんです。そんなギャップもクセになっていただけたらなと。

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