歌詞はセラピー。書くことで救われています。

―― 新曲「かまわないよ」でとくに好きなフレーズというと?

やっぱりサビかな。とくに最後の<二度と会えなくなる そんな日が来ても 最後までその手をはなさないよ>というフレーズは書けてよかった。あと、<大事な日もファミレスで できるだけ平凡でいいね>とかも。こういう日常の穏やかなワンシーンを、今までの俺だったら書けなかった気がするので。

―― また、「かまわないよ」に対するシンタロウさんのコメント内の、「日常、それはやさしい地獄。」という言葉も印象的でした。日常は地獄ですか?

地獄ですよ。毎日、地獄です。誰かと一緒にいたいし、普通に生活もしたい。でも、難しい。ひとりはイヤだけど、どこかでひとりになろうとしている自分もいて、ずっと自分同士が戦っている感じです。とにかく人付き合いがしにくい。ドーンと一気に落ちるようなものではなく、じわじわ続く、靴にずっと染み込んでいるような地獄。生活もできるし、それなりに生きられるけれど、ずっと「うっ…」ってなっている。それが俺の地獄ですね。

だけど、ユウモリの歌は、俺が書いた言葉をずっと遠くまで飛ばしてくれるんですよね。歌詞だけ読むのと、曲で聴くのとではかなり印象は変わります。そこを信頼できるからこそ、自分の素の部分を色濃く出せるし、「何を書いても大丈夫だ」という心強さがあります。

―― 「とにかく人付き合いがしにくい」とおっしゃっていましたが、バンドが10年以上続いていて、メンバーと信頼関係を築けているのはすごいです。「かまわないよ」で描かれている関係性にも近いのかもしれません。

おっしゃるとおり。俺にとって、このバンドが続いているのは本当にすごいことです。家族以外でこんなに長く一緒にいるひとなんて他にいないし。いい距離感なんでしょうね。バンドがあって、制作できるから、俺もなんとかやれている。この場所はすごく大事だなと思います。でも同時に、「ずっとあるわけではない」という気持ちもやっぱりあって。終わりばかり気にしてしまうのは昔から変わらないです。

―― そのほうが安心するからですかね。傷つく前に先まわりするというか。

ああ、たしかに。急に来るよりは構えておきたいのかな。突き放されたくないし、裏切られたくない。だから、自分から先に、終わりのことを考えてしまうクセがついたのか。「何があるかわからないんだぞ」と常に思っていますね。

―― ただ、そういう気持ちもすべて歌詞にできるのはひとつの救いである気がします。

photo_01です。
Photo by アサイチカコ

自分にとっても救いだし、同じように“終わり”ばかり考えてしまうひとっているだろうから。やっぱり俺は幸せなときより、そうじゃないときのほうが音楽に頼るんです。沈んでいるとき、沈んだままで心地よくしてくれる音楽を聴きたくなる。「頑張ろうぜ!」みたいなものは苦手で、同じ熱量で寄り添ってくれる歌が欲しくなる。SIX LOUNGEの音楽もそうであってほしいと思っています。だから、「救われました」とか「私も同じです」といった反応を手紙とかでもらえると、とても嬉しくなりますね。

―― シンタロウさんは作詞、好きですか?

好きですね。追い込まれると嫌になるときもありますけど(笑)、基本は好きです。

―― 作詞をしていて、どんなときにいちばんおもしろいと感じますか?

メロディーと言葉がピタッとハマったときは楽しいですね。「お、いいじゃん!」ってなるあの感覚。あと、実際に歌ってもらったり、レコーディングで合わせたりすると、印象が変わることもあって。そこから、「もっとこうしたほうがいいな」と歌詞を変えるおもしろさもあります。俺は作詞できるけどあんまり歌えないから、あれだけ歌えるひとが歌ってくれると気持ちがいいです。

とにかく自分の思っていることが、どんどん形になっていくことがおもしろいですね。いや、おもしろいというより…、嬉しい。幸せ。そういう気持ちのほうが近いかもしれません。一緒に音楽を作っていけるバンドがあって、リリースできる場所があって。言葉をノートやメモに眠らせず、世のなかに出せる。それは本当に嬉しくて幸せです。

―― 歌詞を書くときに大切にしていることは何ですか?

自分から離れすぎた言葉やテーマは使わないこと。「こんなこと思ってないだろ」と思われるようなことは書かない。それは曲を作るとき、俺にもユウモリにもある感覚じゃないかな。書けないときや迷いが出たとき、危険なんですよね。あと、タイアップ楽曲は、作品に寄せすぎてしまって、自分の言葉ではなくなりそうになったり。

―― 今までの自分っぽくない言葉を書くのは、挑戦と紙一重なのでジャッジが難しそうですね。

そうなんですよ。なんとなくの自分の感覚でしかないんですけど、歌詞を書いてから少し時間を置いて、「いや、これは違うだろ」と判断します。たとえば、アゲアゲのスーパーハッピーな曲をあえて作るのもありだと思うけど、心の底からそう思ってないのであればダメ。そこは常に意識しながら書いていますね。

―― シンタロウさんにとって歌詞とはどんな存在ですか?

俺にとっては、セラピーみたいなものですね。書くことで救われている部分が大きい。やめたらダメになってしまいそう。生活に必要なものです。

―― ありがとうございます。最後に、これから挑戦してみたい歌詞を教えてください。

テーマや言い回しはこれまでに出尽くしている気もしますが、それでも「なんだこれ、聴いたことない」と思ってもらえるような歌詞を書きたいです。ただし、自分やSIX LOUNGEから外れたものではなく、自分らしさを保ちながら、これまでにない音楽を作れたらいいなと思っています。


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