LIVE REPORT

Large House Satisfaction ライブレポート

Large House Satisfaction

『SWEET SWEET DOXIES』

2014年11月15日@渋谷CLUB QUATTRO

取材:町田ノイズ/撮影:渡部友貴(KENWAN)

2014.11.22

11月15日、Large House Satisfactionの全国ツアー『SWEET SWEET DOXIES』ファイナル公演が行なわれた。

バンド史上初となる“ラブソング”、さらに “ポップネスと分かりやすさ”という命題のもとに産み落とされたミニアルバム『Sweet Doxy』を携えて辿り着いた大舞台は、会場を埋め尽くす観客の期待と興奮を湛えた叫びと、ルー・リードのSEで幕を開けた。

照明が灯されると、濃い緑レザージャケットの小林賢司(Ba)、ストライプのモッズジャケットを纏った小林要司(Vo&Gu)、グレーのVネックのシャツを身に付た田中秀作(Dr)と、三者三様の出で立ちでメンバーが登場。心なしか若干の照れくささを滲ませたような表情の要司は、自ら抱えるSGギターの赤にも負けない、熱情のほとばしるサウンドを叩き付けた。今作の冒頭を飾る「トワイライト」だ。情動のままに走る要司のしゃがれ声と、彼を引き立てるように紡がれるリズム隊のグルーブで、剥き出しの愛が痛切に、また鮮やかに浮かび上がる。

およそ1年前のワンマンライヴで堂々宣言して以来、待ちに待ったこの日のステージに3人とも喜びを抑え切れないようで、続く「bara」「Phantom」も吐き捨てるようなパンクネスと突き刺さるような音塊が飛び交う中に、紅潮した頬と限界など忘れてしまったかのような激情が垣間見える。MCでも賢司は“東京のお客さん、ナイスじゃないですか!”とオーディエンスのボルテージの高さに破顔し、秀作は鉄柵を振動させるほど強靭なバスドラを刻み、曲のブレイクの度に右手のスティックを高々と振り上げた。

しかし、この1年で多くの場数を踏んだ彼らが高揚してばかりいるはずもなく、「Jealous」「アノキシア」「暗室」ではたちまち目の前の空間を自身の音像に引きずり込む。それは決して強引な力技ではなく、ある者は掲げた拳の色を彩り豊かに変化するライトに染め、ある者はこの瞬間に相見えた多幸感に微笑み、ある者は3人が途切れることなく繰り出す音圧を目を見開いて全身で浴び、それぞれの想いの丈をあらゆるかたちで表出していた。メンバーの掲げた“もっと遠くまで届くもの”というテーマが実現した一幕だった。

と、感慨深くなったのも束の間。ファンのレスポンスで熱気がますます増した「Monkey」で要司のギターの弦が切れるハプニングが発生し、知人からもらった通称“クズギター”が代打で登場。“弾きにくい”とこぼしながらも鋭利でクセのあるサウンドを放った。

その後、弦が張り替えられるまでの間をゲストの細沼章吾(Per/Manhole New World)と秀作がセッションでつなぐ。秀作のダイナミックなタムとスティックに吸い込まれるようなシンバル、細沼の軽快ながら深みのあるパーカッションは、つば迫り合いのような緊張感とドラマ性を感じさせた。

SGが復活するとリズム隊の本領が発揮される「孤独の情熱」を披露。賢司の心臓を叩かれるような太く、重心の低いベースが蛇行しながらフロアを揺らす。そして、リズム隊のふたりは一旦フェードアウトし、要司によるアコースティックギターの弾き語りパートへ。“ツアー以上に弾き語りライヴをこなしてきた”と話す要司。ジャンベを前にした細沼と向き合い、黄色く光るスポットライトの下で、メランコリックな「Monday」とデヴィッド・ボウイのカバー「Five years」を演じた。しばし静寂を取り戻した会場に、艶やかなビブラートが響きわたった。

細沼と入れ替わりで戻った秀作が“まだやれんのか!”と客席を煽り、賢司の合図とともに白いワンピースに身を包んだアレックスたねこ(惑星アブノーマル)が登場。センターで黒いタンバリンを叩きながら今にも躍りださんばかりのはしゃぎっぷりで、荒々しいタテノリガレージロックナンバー「POISON」をパフォーマンス。キュートネスと小生意気さがせめぎ合うコーラスが楽曲を華やかなものにする。立て続けに奏でられた甘美なバラード「眩暈」では、打って変わってしっとりとした切ない歌声を震わせた。“必要最小限のパートとメンバーで最大の音楽を”という矜持はそのままに、新たな要素を迎えていくつもの多面的な姿を映し出し、また引き出してみせる3人のキャパシティーに、“進化”と“深化”のふたつのワードを思い起こした。

ここから再び3人の舞台に戻ったクアトロは、留め金が外れたかのような狂乱を歓喜の渦に飲み込まれた。“あの曲が欲しい!”と訴えんばかりに腕を振り上げるファンに応えるように繰り出される「Long Time」「Sly」「タテガミ」、「Traffic」に「尖端」。ぎらぎらと攻撃的なまでに輝くミラーボールの光が降りそそぎ、ブルージーな音色や毒気の強いヘヴィなナンバー、息継ぎの隙も与えないダンスロックが天井から会場の最後列まで、縦横無尽に全速力ですり抜ける。賢司と要司は笑顔で対峙して弦をかき鳴らし、秀作は汗を光らせながら立体感のあるリズムを刻む。振り落とされるギターとベースのネック、そしてドラムスティックの力強さは、最後まで潰えることのない彼らの感情の高ぶりを表しているようだった。

ライヴ終盤、要司の“何度でも言わせてください。今日は来てくれて本当にありがとうございます”という挨拶の後、リードトラック「Stand by you」がスタート。“無償の愛”を意識して綴られたというストレートな歌詞、爽快感と疾走感あふれるメロディーが汗だくの頬を撫でる。この楽曲のサビ、《こぼれる 愛の瞬間も 痛みを知って 錆びた声も 少し弱い 心も さらけだして 歌にして》というフレーズは、一番心に響く“恋”や“愛”というものにキャリア10年目にして初めて挑み、さまざまな場面を乗り越えて新境地に到達したこの日の3人のためにあるのかもしれない。

“ありがとう”と感謝の言葉を残して一度フェードアウトしたメンバーだが、彼らと同じくらいこの時を待ちわびたファンがそれを許す筈もなく、すぐさまアンコールの声と拍手の音が充満する。まずはリズム隊が乱れた髪のまま登場。この日しばしば“お兄ちゃん!”とはやし立てられた賢司は、“アンコール何が聴きたい?”と問いかけたり、物販の宣伝をしたりと、出ずっぱりだった要司が出てくるまでの間をつなぐ。

そしていよいよジャケットを脱ぎ捨てた要司が参上。ファンから多数のリクエストが挙がった中、選ばれたのは当時まだ無名だった彼らの存在を世に知らしめたTHE BLUE HEARTSのカバー「チェルノブイリ」、そして観客の体力と集中力の限界値を引き上げるような「POWER」。カバーでもオリジナルでも、誰もが共通して思い描くような“ロックバンド”をどこまでも体現してみせる度量に、清々しい想いで胸がいっぱいになる。

音が鳴り止むと同時に汗だくの会場を再びあとにしたメンバーだったが、祝福の言葉と“もっと!”とねだる代わりに響く拍手の音を受けてまたもや登場。泣いても笑っても最後の楽曲は、4つ打ちのリズムと要司の挑発的でおどろおどろしいヴォーカルが迫る「Bang Bang Bang」。歌詞中の“サーチライト”という単語が飛び出すと同時に客席のライトが忙しなく回転するという小憎らしい演出がなされ、この長丁場を勝ち抜いたオーディエンスの心の底から放たれる叫びを照らし出した。それはメンバーが楽器を置いて、要司が投げたピックの閃きが黒いフロアを切り裂いても止むことはなかった。

1年前の3人は“これがLarge House Satisfactionだ”と何にも媚びないステージングを見せつける、気持ちいいまでの頑強さがあった。そして、この夜の彼らには“きっとどこまでも連れていってくれる、どこへでもいってくれる”という何よりも研ぎすまされた確かさがあった。“また来年も”“次の作品も”と約束したメンバーは、今度はどんな景色を見つけるだろう。この楽しさの正体を、きっと次の彼らなら解き明かしてくれるだろう。
この歌手の歌詞一覧 この歌手の動画一覧

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 8

    Monkey

  2. 10

    Monday

  3. 11

    Five years(David Bowieカバー)

  4. 14

    Long Time

  5. 15

    Sly

  6. <ENCORE1>

  7. 20

    チェルノブイリ(THE BLUE HEARTSカバー)

  8. 21

    POWER

  9. <ENCORE2>

  10. 22

    Bang Bang Bang

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