LIVE REPORT

城 南海 ライブレポート

城 南海

『ウタアシビ2015夏』

2015年08月09日@渋谷duo MUSIC EXCHANGE

撮影:在津完哉/取材:桂泉晴名

2015.09.03

最後の一音が、ゆっくりとフェードアウトしていく。激しく心を揺さぶられたのに、一瞬、拍手しようとする手が止まってしまう。なぜなら、拍手でこの空気を壊したくなかったから。彼女が生み出した歌声の余韻に、ただただ、浸っていたかった。

カバーアルバム『ミナミカゼ』を6月17日にリリースした城 南海(きずきみなみ)。奄美大島のシマ唄をルーツに持つシンガーで、現在、テレビ東京で放映中の番組テレビ東京『THEカラオケ★バトル』で7冠を獲得。聴いた人の心を一瞬でとらえる圧倒的なヴォーカルは、彼女が画面に登場するたびに話題を呼んでいる。

夏のワンマンライヴは、スピッツの「渚」のカバーからさわやかに始まった。井上陽水の「少年時代」では、オーディエンスそれぞれが持っている夏の原風景を思い起こさせるよう、しっとりとしたヴォーカルで聴かせる。そして、静かだけど強力な印象を残したのは、荒井由実の「ひこうき雲」。亡き友人への思いを歌ったこの曲の深い悲しみが、城の憂いをたたえた歌声から伝わってきた。“ずっと愛されている曲は、魔法のようなものが詰まっているので、とても勉強になりますし、それを表現するアーティストの方の素晴らしさを改めて体感しました”と『ミナミカゼ』のインタビューで、名曲をカバーして感じたことを素直に語った城。詞に込められた思い、曲の構造。それらを深く理解した上で、自分の表現へと昇華させていく。楽曲に真摯に向き合う彼女だからこそ、心の奥に迫ってくる歌を歌えるのだと、ステージに凛と立つ姿を見て思った。

そして、カバー曲だけでなく、オリジナル曲も披露。2009年にリリースされた「白い月」は、《忍び込むせつなさに 負けてしまいそうな 空の窓 あなた恋しい》と歌う当時の城の表現力に驚いたが、あれから6年。深みがより増していって、清らかな空気に艶っぽさも加わり、ゾクッとする。

さらにこの日のステージは、城が縁のあるゲストを呼ぶという、スペシャルな構成だった。まずは、これまで城のライヴにバンドメンバーとして参加しているパーカッショニストのスティーヴ エトウが加わり、シマ唄の中から「安里屋ユンタ」。城の奄美三味線とオーディエンスの手拍子に合わせて、ウタアシビ(歌遊び)が陽気にスタートした。スティーヴ エトウとバンドメンバーである、ただすけ(Piano)、越田太郎丸(Gu)が、それぞれ自分たちの地元自慢を詞に織り交ぜて、歌いつなげていく。

THE BOOMの「風になりたい」では、曲の途中で奄美大島の八月踊(はちがつおどり)という集落のお祭りで歌う節が入る。実はこのアイデアはスティーヴ エトウの発案。“スティーヴさんが、「風になりたい」はサンバだけど、奄美大島のサンバと言ったら八月踊。それを入れたらどう?というアイデアを出してくださったんです”と以前のインタビューで城が説明してくれたが、まったく違和感なくふたつの曲が溶け込んでいった。城はオーディエンスに八月踊の振りを教えて、一緒に踊ろうと誘う。最初は少し恥ずかしさもあり、ぎこちなかった会場も、城が“みなさん、いいですね!”と、ガンガン乗せていくと、みんな楽しそうに踊り始めた。

ウタアシビで盛り上がった後は、ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』から「輝く未来」で、おとぎの国へと導く城。この曲は『THEカラオケ★バトル』ではデュエットで聴かせてくれたな、と思って聴き入っていると、途中からその時のパートナーであるシンガー林部智史がステージに登場! 大きな拍手の中、繊細なハーモニーを聴かせる。城はMCで林部とのデュエットについて“歌を楽しむことを教えてもらいました”と話していていたが、自然に呼吸を合わせているふたりの様子からも、その気持ちがよく理解できた。

最後のゲストは、城南海と同世代のヴァイオリニスト、花井悠希を迎え、杏里の「オリビアを聴きながら」と一青窈の「ハナミズキ」を歌う。花井のヴァイオリンの音色は城の声に寄り添うように響く。プライベートでもしょっちゅう会うというふたりは、音楽でも本当に安心して、お互いに身を預けながら曲を演奏しているように感じる。

城が紡ぐ豊かな音色を存分に堪能させてくれて、それぞれのゲストの音楽家としての魅力もしっかりと引き出す、極上のステージだった。
この歌手の歌詞一覧 この歌手の動画一覧

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 1

  2. 8

    安里屋ユンタ(シマ唄)

  3. 11

    輝く未来

  4. 12

    Whole New World

  5. <ENCORE>

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