LIVE REPORT

阿部真央 ライヴレポート

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【阿部真央 ライヴレポート】 『阿部真央 らいぶNo.8 ~10th Anniversary Special~』 2019年1月22日 at 日本武道館

2019年01月22日@日本武道館

撮影:笹森健一/取材:竹内美保

2019.01.28

前日にデビュー10周年を迎えた阿部真央の記念すべきスペシャルライヴ『阿部真央 らいぶNo.8 ~10th Anniversary Special~』が日本武道館にて行なわれた。ひとつの集大成と新たな幕開けを提示したこの1月22日にという日は、おそらく彼女にとっても、ファンにとっても、かげがえのない宝物のような一日となったはずだ。

ちゃんと心と心でつながっている友人を迎えるような、とても愛おしい人を街中で見つけた時のような、いつかどこかで“必ずね”と交わした約束をともに果たせたことを喜び合える時間のような、そんなとびきりやさしくて温かい笑顔でセンターステージへと歩みを進め、手を振り続ける阿部真央。すでに多幸感に満ちあふれた空気感が生まれている中、鬼気迫る「デッドライン」をアコギを掻き鳴らしながら叩き付けてくるという驚愕のオープニング。この潔さ、楽しませ方、心憎さが10周年を迎えた彼女の心の余裕の表れか。そう、そして10年の時の中で披露されるたびに新鮮な風景を見せてくれてきた「ふりぃ」が、この夜もさらに新しく塗り替えられていたことにも心を踊らされた。シングル曲ではないデビューアルバムの一曲が今、フレッシュに躍動するーーポップミュージックの理想形とはこういうものを言うのだろう。

バンドによる人力トランスが曲の艶っぽさ増幅させていた「immorality」、「貴方の恋人になりたいのです」で始まる中盤のバラードセクションでは、切々とした、しかし内なるダイナミズムが炸裂する歌声で魂を震わせる。解放感/開放感あふれる疾走感に満ちたサウンド、ジャンプする、タオルを回す、バンドメンバーのソロも回す...とパワーポップチューンによる数々の眩い時空間が感涙を誘った後半戦の楽しさはもちろんなのだが、バラードセクションからの流れでストリングスとコラボとなった「マージナルマン」が、光と影の両面を併せ持つ音世界とカラフルな照明の演出で素晴らしいフックの役割を果たしていたことを、ぜひ特筆しておきたい。これもやはり経験値の成せる技だから。

そして、巨大なリボンとツインテールという、キュートだけどちょっとクスッとしてしまうスタイルに場内が和んだアンコール。選ばれた2曲「まだ僕は生きてる」「それぞれ歩き出そう」は軽快でありながらも、実はかなりシリアスなメッセージが綴られているのだが、気張らずにポジティブさを共有できるようなパフォーマンスは本当に清々しくて素敵だ。また、ダブルアンコールは「ストーカーの唄~3丁目、貴方の家~」と「母の唄」で、なんと5周年の武道館と同じ選曲で同じ並び! 武道館のステージへの想いをこんなに洒落っ気で表現するのも、なんとも彼女らしいところ。途中のMCで“みんなの笑顔が私にとっての10周年の結果”と語っていたが、その言葉がまさにこの10周年記念ライヴを象徴していたのではないだろうか。

楽しいは正義ーーそんなことを深く感じさせてくれた素晴らしいミュージックエンターテインメント。阿部真央の真髄が、そして多彩な魅力が余すところなく満開で発揮され、それを心ゆくまで堪能させてくれたライヴだった。

撮影:笹森健一/取材:竹内美保

阿部真央

アベマオ:1990年1月24日生まれ、大分県出身。06年、高校2年生の時に『YAMAHA TEENS' MUSIC FESTIVAL』の全国大会で奨励賞を受賞。09年1月にアルバム『ふりぃ』でデビュー。感情的なアコギで押し出す、等身大でリアルな歌詞、表現力豊かなヴォーカル、バラエティーに富んだ楽曲、同世代の女性を中心に、幅広い層から注目と共感を集める。14年10月にデビュー5周年を記念して初の日本武道館公演を開催。16年5月、産休明け第一弾シングル「Don’t let me down」で完全復活を果たし、さらに活動は精力的に。デビュー10周年となる19年には『阿部真央 らいぶNo.8 〜 10th Anniversary Special 〜』が開催される。

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