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9mm Parabellum Bullet ライヴレポート

9mm Parabellum Bullet ライヴレポート

【9mm Parabellum Bullet ライヴレポート】 『9mm Parabellum Bullet presents 「カオスの百年 TOUR 2020 ~CHAOSMOLOGY~」振替公演』 2021年6月6日 at Zepp Haneda(TOKYO)

2021年06月06日@

撮影:西槇太一/取材:田山雄士

2021.06.11

9mm Parabellum Bulletのワンマンツアー『カオスの百年 TOUR 2020 ~CHAOSMOLOGY~』が6月6日(日)、東京・Zepp Haneda(TOKYO)で振替公演初日を迎えた。2020年の9月から10月にかけて実施予定だったツアーが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて延期。もともとは彼ら初のトリビュートアルバム『CHAOSMOLOGY』のレコ発ライヴを考えていたが、状況の変化に応じて、内容を一新した二部構成で開催されることになった。

第一部では未完全のままで終わっていた2017年の『TOUR OF BABEL』をやり切るため、7thアルバム『BABEL』の再現ライヴを実施。当時は左腕の不調によって滝 善充(Gu)がステージに立てず、菅原卓郎(Vo&Gu)、中村和彦(Ba)、かみじょうちひろ(Dr)の3人に、サポートギターとして武田将幸(HERE)と爲川裕也(folca)を迎えた5人の布陣(通称“BABELスタイル”)でなんとか乗り越えたツアーだったが、今回は滝もついに復帰して前回のメンツに加わり、鉄壁すぎる6人編成でのパフォーマンスが繰り広げられた。

完全版のBABELスタイルはさすがの仕上がりで、その陣形にしても、照明の効果にしても、通常とは異なるコンセプチュアルな演出があって、アルバム『BABEL』の世界観にどっぷり浸かれる感じだった。そして、4本のギターで生み出されるディストーションの壁、そこにベースとドラムも入り乱れるサウンドが重厚かつ強烈。滝のライヴ活動一時休止に直面し、9mm自体が続けられるかどうかの瀬戸際だった4年前に比べると、この日の演奏からは喜びや充実感が存分に見て取れ、バンドのドキュメントソングと言える「Story of Glory」の《わけなんてなくて笑っていた/おれたちは今夜無敵なんだ》と歌われるライン、「I.C.R.A」の《愛し合え》というシャウトが、あの頃とは違ったポジティブさで響いてくる。

現代社会の脆さを憂うような「ガラスの街のアリス」、原発事故に伴うやるせない気持ちを歌った「眠り姫」と、より生々しいメッセージ性を孕んだ曲も存在感を放ち、ダークなトーンながらも得体の知れないエネルギーが渦巻く『BABEL』の輝きはライヴが進むごとに深まっていく。他にも、かみじょうの切れ味鋭いビートを筆頭に笑っちゃうくらい凄まじいアンサンブルで疾走する「火の鳥」、滝がイントロのリフを弾くだけでたまらない「ロング・グッドバイ」など、観応え十分のステージ。コロナ対策を踏まえた座席ありのシチュエーションの中、オーディエンスは総立ちで盛り上がり、時に固唾を呑んで聴き入りつつ、この名盤が宿すドラマを改めて満喫していた。

第二部では2005年と2006年にインディーズでリリースしたミニアルバム『Gjallarhorn』『Phantomime』を、今度はサポートなしの4人だけで再現。第一幕とは打って変わって、より骨っぽいバンドサウンドが際立つステージとなり、まるで十数年前へとタイムスリップしたみたいに遮二無二なテンションで暴れまくる9mmの姿が新鮮だ。きっと当時の記憶や感情が蘇ったりして、メンバーたちも知らず知らずのうちにアツくなってしまうのだろう。滝は舞台上で転げ回りながらギターを弾く場面も。ライヴの定番曲である「Talking Machine」「sector」はもちろん、この時期の彼らを観たことがないファンが数多くいるだけに、もう生で聴けないと思っていた激レアなナンバー「atmosphere」「Beautiful Target」「少年の声」などを惜しみなく披露してくれたのがとても嬉しい。

《あぁ 何で上手くいかねぇ》と叫ぶ「Talking Machine」に表われているように、若さならではの苛立ちが滲むディストピア感の強い初期の楽曲群は、不思議と今の世の中にしっくりきたりもする。バンドのトレードマークである轟音が降り注ぐカオティックパート、中村の激しいシャウトもすでに聴きどころとなっていて、彼らの個性は早い段階で確立されていたのだと気づく。「marvelous」の音が静まる箇所では、場内からハンドクラップが沸き起こるなど、9mmのプリミティブな爆発力に観客たちは大いに熱狂。菅原もこの状況下でツアー初日に足を運んでくれた感謝を伝えつつ、“今日は再現ライヴなので、言ってみれば何のカードが出るかが分かってたわけだけど、種の割れた手品みたいにはなってないですよね?”と自信を覗かせた。

ふたつの離れた時期を表現する試みだが、誰もが逆境に立ち向かっている今だからこその意義深い公演だったように思う。また、さまざまな困難を乗り越えてタフに突き進んできたゆえに現在の9mm Parabellum Bulletがあるのだと実感させられるとともに、過去を消化して次へ向かうバンドの姿勢も見えた。『カオスの百年 TOUR 2020 ~CHAOSMOLOGY~』は、7月18日(日)の大阪・Zepp Nambaまで続く。

そして、今年の9月9日(木)、“9mmの日”には自主企画『カオスの百年 vol.14』を神奈川・KT Zepp Yokohamaで開催することが発表された。オープニングアクトはfolcaで、昨年の同日に予定していた公演のリベンジとなる。

撮影:西槇太一/取材:田山雄士

※現在ツアー中のため、セットリストの公表を控えさせていただきます。

9mm Parabellum Bullet

キューミリ パラベラム バレット:2004年3月横浜にて結成。 2枚のミニアルバムをインディーズレーベルからリリースし、07年にDebut Disc「Discommunication e.p.」でメジャーデビュー。09年9月9日に初の日本武道館公演を開催し、結成10周年を迎えた14年には日本武道館2Days公演を成功させた。パンク・メタル・エモ・ハードコア・J-POPなどあらゆるジャンルを飲み込んだ独特な音楽性とライヴパフォーマンスで日本ロックシーンの支持を得る。

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