LIVE REPORT

THE COLLECTORS ライヴレポート

THE COLLECTORS ライヴレポート

【THE COLLECTORS ライヴレポート】『THE COLLECTORS QUATTRO MONTHLY LIVE 2023 「日曜日が待ち遠しい!」』 2023年1月15日 at 渋谷CLUB QUATTRO

2023年01月15日@渋谷CLUB QUATTRO

撮影:後藤倫人/取材:竹内美保

2023.01.26

おそらくTHE COLLECTORS史上もっともクールでスリリングなオープニング。山森“JEFF”正之(Ba)の陰影のあるベースラインに導かれるようにして歌われた、2022年を象徴するある出来事をテーマにしたと思われるナンバー「長い影の男」が幕開けを飾る。昨年の『Lick the marmalade!』ツアーの横浜1000 CLUB公演もこの楽曲で口火を切ったが、忍び寄る恐怖と狂気に触れた感覚に、ここでもまた襲われる。でも、そのシリアスさもまたTHE COLLECTORSの、加藤ひさし(Vo)の紡ぎ出す音楽の要であることは紛うことなき事実だ。

余韻も重い、鈍色の空気を一変させるかの如く披露された2曲目は「ツイスター」。多数の楽曲を世に送り出してきた、結成37周年目を迎えるバンドのライヴならではの選曲だと言える。起爆力の強いこの曲から古市コータロー(Gu)のリズミカルなワウが効いたミドルチューン「MONDAY」、アッパーなダンスビートナンバー「気狂いアップル」と続けば、歓喜に満ちたフロアーが揺れる。その歓喜には“堪えきれない声援はいいんだよね”という加藤のMCでの言葉どおり、観客ひとりひとりの小さな歌声も乗っていて、なんとも爽快だ(開演前のアナウンスでは“マスク着用の上、継続的ではない日常会話程度の声出しはOK”というガイドラインが出されていた)。

そして、“堪えきれないナンバーをやろう”と絶妙な前フリから、古市の甘いギターフレーズでドリーミーなポップワールドへと誘う「ジューシーマーマレード」では、ブリティッシュサイケデリックロックの“粋”で織りなされたサウンドがポルノスターへの憧れを華やかに彩り、「長い影の男」と同じく2022年を象徴するTHE COLLECTORS結成以来一貫したスタンスであることを示す反戦歌「GOD SPOIL」では、切なる願いが全身全霊を込めて訴えかけられてきた。

厚く広がっていくゆったりとした音にアイロニカルな歌詞を語りかけるように乗せる「That's Great Future ~近未来の景色~」、古市もソロでヴォーカルを担った「青と黄色のピエロ」、“西城秀樹の「傷だらけのローラ」以来のアツさ”と加藤が称した、まさにアツく、かつ伸びやかな「GLORY DAYS」と続き、中盤戦のハイライトとなった「アサギマダラ」へ。旅する蝶の姿が伝えてくれる、勇気と希望と冒険。その羽ばたきはバンドが奏でるたおやかなサウンドによって、密閉された小さな場所に優雅で雄大な風景を生み出していた。それはまるでパノラマのように。

続く「未来のカタチ」は口元が少し解放されたことにより、古沢“cozi”岳之(Dr)の叩き出すビートに乗せて、ここに集まった全ての人がクラップし、コーラスを重ねて曲と一体に。堪えきれない声出しOKとなった日に、しっかりと一緒に口ずさめるナンバーを用意していることに、なんとも言えない温かさも感じた。

“お正月と言えばお年玉。今日はみんなにお年玉よりすごいものをあげようと思って”というMCに場内のワクワク度が高まる中、“スペシャルゲスト、藤井尚之!”と呼び込まれてステージに現れたのは、サックスプレイヤーの藤井尚之その人。プレイされたのはもちろん、彼もレコーディングに参加した「もっともらえる」だ。疾走感に満ちたシンガロングナンバーをさらに躍動させるサックスのブロウ。凄まじい盛り上がりで跳ね続けるオーディエンスに、藤井とプライベートでも交流があるという古市も笑みがこぼれる。

その古市がリードヴォーカルをとる「負け犬なんていない」は、加藤がイメージする古市コータロー像をそのまま曲に投影したもので、ソロ作品とはまた違うフランクさと説得力を放っていた。続いて古市、山森、古沢の3ピースによるブルースロック・インストゥルメンタルのスモーキーな香りが、真紅に染め上げられたステージから場内いっぱいに漂い、軽く痺れるような酔い心地を味わわせたあとは、加藤が再びステージに戻り、THE COLLECTORS流のデジロック「クライムサスペンス」へ。制作時に意識されていたデジ風味はやや薄まり、ドライブ感の強いタフなサウンドの腰で踊れるロックチューンへと進化していた。

アンセムと呼ぶに相応しい希望と祝福の歌「パレードを追いかけて」には、カタルシスを感じる人も決して少なくなかっただろう。強くしなやかなメロディーとサウンドに乗る、肯定的というよりは好意的な言葉を届ける加藤の歌声。虹を想起させるカラフルなライティングと全てを照らすミラーボールの光、その純度の高さの素晴らしさには思わず目頭が熱くなる。

カタルシスを感じたまま、さらに煩悩が吹き飛んでいく感覚に陥った「ヒマラヤ」。ラーガ風味のスペースサイケデリックミュージックでとてつもなく壮大な、そしてちょっとコミカルな世界へと聴く者を連れて行ってくれる。その不思議なトリップに身を委ねていると、間髪入れず鳴らされたのは「スイート・シンディ」。リフとビートでたたみかけてくるスリリングでラウドなサウンドにフロアーもヒートアップ! 覚醒状態で昇天できるような密度の濃さで本編が終了。

アンコールはDeep Purpleの「Burn」のイントロを遊び心で聴かせてからの「世界を止めて」。古市の柔らかなフレーズで幕を開けるこのロマンチックなポップチューンでは、古市と山森が寄り添って演奏するシーンも。バンドを代表する一曲の次に披露されたのは、こちらもTHE COLLECTORSを代表し、かつ顔であり続ける「僕はコレクター」。1987年に世に出た楽曲だが、フレッシュさはそのままに、時を重ねるごとにより研ぎ澄まされていっている印象を与えてくれる不朽のロックンロール。オーディエンスは湧き立ち、声を重ね、サビでは軽やかに手振りが舞う。インディーズ時代から大切にプレイされてきたナンバーで、今日もこうしてライヴを締め括る。なんて気取りのない、素敵なカッコ良い大人たちなんだろうか!

大きなクラップに応えるダブルアンコールはなかったが、代わりに嬉しいプレゼントが流れてきた。それは「パレードを追いかけて」をブラスバンド風にアレンジしたインストゥルメンタルバージョン。エレクトリカルパレード的なチャミングなサウンドに包まれる幸福なひと時。そして、“日曜日が待ち遠しい!”と名づけられた2023年のマンスリーライヴも、まだまだもっともっと“進んで行くよ どこまでも”。

撮影:後藤倫人/取材:竹内美保

THE COLLECTORS

ザ・コレクターズ:1986年初頭、ブリティッシュビートやブリティッシュサイケに影響を受けた加藤ひさしと古市コータローを中心に結成。2014年に山森“JEFF”正之、17年に古沢“cozi”岳之が加入し、現在のメンバーに。メジャーデビュー30周年を迎え、17年3月1日には初の日本武道館を開催し、18年11月には初のドキュメンタリー映画『THE COLLECTORS ~さらば青春の新宿JAM~』が公開された。20年11月には、加藤ひさしの還暦記念ワンマンライヴ『THE COLLECTORS, HISASHI KATO 60th BIRTHDAY LIVE SHOW “Happenings 60 Years Time Ago”』を開催。そして、21年6月はバンド結成35周年記念公演を大阪城音楽堂で開催し、22年3月には5年振り2回目の日本武道館を実施した。

SET LIST 曲名をクリックすると歌詞が表示されます。試聴はライブ音源ではありません。

  1. 3

    03. MONDAY

  2. 4

    04. 気狂いアップル

  3. 9

    09. GLORY DAYS

  4. 12

    12. もっともらえる 13. 負け犬なんていない

  5. 13

    14. Instrumental

  6. 18

    <ENCORE>

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