LIVE REPORT

THE BACK HORN ライブレポート

THE BACK HORN

THE BACK HORN 日本武道館

2008年06月07日@日本武道館

撮影:ミヨシツカサ/取材:石田博嗣

2008.06.20

結成10周年のスペシャルイベントでもある、初の日本武道館ワンマン公演。奇しくも8年前に下北沢シェルターで初のワンマンライヴを行なった日でもあり、THE BACK HORNにとっては集大成的な意味合いを持ち、さらに現在のバンドの姿を魅せつつも、次の10年へとにつなげるライヴとなった。 にわかに客電が落ち、真っ暗となった場内。幻想的なSEが流れる中、メンバーが登場し、その人影に拍手と歓声が沸き起こる。そして、SEが終了するとステージ後方に設置されている8本のトーチに炎が灯り、最新シングルの「覚醒」が記念すべきライヴの幕開けを告げた。しかし、ブリッジ部分で瞬間的にスポットが当たるものの、メンバーを照らすのは、依然として炎の灯りのみ。暗闇に沈んだ武道館の広い空間に、トーチが4人の姿を浮かび上がらせているわけだが、せり出しも花道もなく、特にセットもない、バンド力だけが勝負のシンプルなステージでは、逆にそれが観客の目を惹き付ける最高の演出となると同時に、楽曲が持つ説得力も高めている。その後も、舞台芸術に於けるアートと呼べるストーリー性を持ったライティングが、ディープな楽曲の世界観を彩っていた。 もちろん、圧巻なのは照明だけではない。己の情感を全身全霊で声や音に込める4人。そうやって矢継ぎ早に繰り出される新旧さまざまなナンバーは、バンドの歴史を感じさせる以上に、壮絶さを増した生々しい情念を持ち、強力なグルーヴを発生させている。それだけに、1万人に向けられた楽曲には、ひとりひとりに対して向けられているようなリアリティ?と熱さがあり、小さなライヴハウスにいるような感覚で彼らを観ている自分に気付く。前述したようなステージにはビジョンやLEDなどの映像設備はないのだが、メンバーがどんな表情でプレイしているかが分かるぐらい、ステージとの距離を感じることはなかった。言うまでもなく、客席では彼らの感情の塊のような音に共鳴したファンが拳を高く突き上げていた。 予定外だったバンド史上2回目というWアンコールにも応え、リーダーの松田晋二(Dr)が最後に“これからも自分たちに対して正しい音楽を作っていきたいと思います”と言葉を残すと、インディーズ時代の代表曲であり、初めて作ったオリジナル曲でもある「冬のミルク」でもって、バンドとって大きな節目となる武道館公演の幕が下ろされる。これまでの10年の軌跡を再確認したようなライヴだったが、この日発表された秋のツアーでは、全国の小さなライヴハウスを回ることが記されていた。そうやって彼らは原点を見据えつつ、新たなフェーズに向って着実に進んでいるのだ。
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