LIVE REPORT

上木彩矢 ライブレポート

上木彩矢

上木彩矢 ラフォーレミュージアム六本木

2007年11月17日@ラフォーレミュージアム六本木

text:石田博嗣

2007.11.17

現在のJ-POPシーンにはロックヴォーカリストと呼ばれるアーティストはいても、ロッククイーンと呼ばれる者は皆無に等しい。しかし、弱冠22歳にして、上木彩矢はその器を感じさせてくれた。もちろん、彼女の冠に“ロッククイーン”と付けるには早すぎると思うのだが、それだけのパフォーマンスを魅せてくれたことには変わりない。 彼女をサポートする面々は、B'zのツアードラマーだった黒瀬蛙一を始め、ライヴに長けた強者ばかり。しかも、ツインドラム、ツインギター+アコギ、ベース、キーボードという重厚な編成だ。それだけに、迫力あるサウンドと各メンバーのテクニカルなプレイが、フロントに立つ者を喰ってしまいかねない。開演前にステージ上のセットを観て、そんな不安を感じていたのだが、いざライヴがスタートすると、上木の声が柔なものではないことを痛感した。アメリカンロックやハードロックのエッセンスが効いたアッパーな楽曲の他にも、アコースティックセットでの「星の降る夜には」、ピアノ一本の「A constellation ~2007」などが披露される中、彼女は凛とした佇まいで、芯の強さを感じさせると同時に棘や艶、包容力、深さをも持ったヴォーカルを聴かせたのである。また、ステージに届けられる声援も、野太い男性のものから黄色い女の子のものまでさまざまで、客席にはロックファッションに身を包んだ若者やサラリーマンの姿も見受けられた。つまり男女関係なく、幅広いファンに支持されているということであり、それも大器を感じさせた要因のひとつだ。 “ここからはラストまでノンストップでいかせてもらいます!”。この言葉から、ライヴは後半戦に突入する。ハンドクラップでオーディエンスも演奏に参加した「YOU & ME」で一体感が築かれると、「眠っていた気持ち 眠っていたココロ」や「ピエロ」などのヒットチューンが続くクライマックスへ。言うまでもなく、疾走感あふれるサウンドに客席はヒートアップし、何本もの拳が力強く突き上げられていた。大合唱となった「もう君だけを離したりはしない」で本編が終了すると、余韻に浸る間もなく、すぐさまアンコールが沸き起こる。その声に応えて再びステージに現れた上木は、本編でのスタイリッシュな衣装を脱ぎ、ラフなTシャツ姿になったこともあってか、より自然体で音楽を、ロックを、ライヴを楽しんでいたのが印象的だった。そして、オーラスはツアータイトルにもなっているポップチューン「明日のために」。上木もバンドメンバーも観客も、弾けきったことは言うまでもないだろう。 最後まで観る者を惹き付けて離さなかった、上木の威風堂々としたステージングとタフな声。いい意味でまだ未完なのだが、だからこそロックヴォーカリストとしての今後の成長を大いに期待させてくれる。
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