シーホース

人間は有難くも忘れていく生き物です

永久に続く夕凪はなく
終わらない宴はなく…
私は今、白々しくも
「忘れる」の技を使います

だけど
あなたを頭の中から追い出す過程で
後に残るものの少なさに気付いた…

帆を張る私の船(からだ)は大海原
貨物(にもつ)が軽くなってもまだ航路(みち)は開けない

人間は脳に羽があって
忘れていく生き物です
太陽が飲み干された頃
独りの空しさに気付くだけ

せめて
残したい記憶、それは知らぬ間に憶えていた
それさえあれば充分だったはずの灯(ぬくもり)

風を切る私の船は大海原
いつしか嵐が去ってもまだ航路は開けない

私はここで何を繋ぎ止めていたんだろう?
冷めた蒼に揺られて錨はもう外れてしまった

真実も繕う事実ももう裏腹
その身からこぼれ出す嘘でどうせ錆びていく
まだ舵のとれない心で航路は開けない
記憶は取り戻せてもまだ港(あなた)は選べない
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