II. The Moon -蒼い月-

「君の名は?」

始めてかけた言葉を、君は沈黙で返す。

百合色の肌は、どこまでも透明で、
絹のような髪が、時おり風に揺れる。

「君の名は?」

もう一度聞いた僕の手を、突然強引に引っ張り、
君は人気の無い路地を走り出す。

奥へ、奥へ。

蒼い月が二人を見ている。
何かが、僕の耳で騒いでいる。

構わない。見てみたい。
君自身の奥を、奥を。
×