さすらい船

赤い夕陽が 侘びしじゃないか
つらい掟に 追われる汐路
海の男にゃ
海が総ての 生き甲斐なのに
網も乾いて
見るは他国の 波ばかり

旅の果てなさ 望みの遠さ
ままにならない 暮しが憎い
耐(た)える女に
もっと待てよと どうして言える
男泣きすりゃ
船の汽笛も 風に泣く

便り書いては 波間に捨てる
帰るあてない さすらい船よ
ひとりデッキで
故?(くに)を偲んで 眠れぬ夜は
せめてまたたけ
家の灯のよな ひとつ星
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