虫の音

いつものように突っ立って
考えていたんだ
排気ガスにちょっと酔っ払った夕間暮れ
なびく汗の匂いも
通り抜けてしまったよ
入道雲はそこにはいなかったんだ

空回ったまま遠くまで
叫んでみたいけど
あの煙突が吐いてた
ため息に混じってく

ぼくらはただはしゃいでたんだ
夏に揺らぐ虫の声
思い出して
そんなには変わっちゃいない
この風景と僕と弱虫

気がついたら昔の僕もそこに突っ立って
泣いていたんだろう
きっとこの場所で
古くなった電柱も
淀みきったどぶ川も
どこへ消えてしまった
どこへ消えてしまったんだろ

ぼくらはただ はしゃいでたんだ
消えないように はしゃいでたっけ

日々の中で泳ぎながら
必死んなって繋いでゆく
こんな今が消えないように
消えないようにって
僕らはそれでも忘れてここにいるよ
ちょっと酔っぱらった夕間暮れ
揺らいだ弱虫の声
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