鳩おとこ

毎日あの男 ベンチに体うずめて
鳩達にパン屑を ばらまいて
いつだって御機嫌で ゆらゆら赤い顔して
足下にカップ酒 転がして

目は開けているのか 夢を見ているのか
何が嬉しいんだか なんにも判らないのか

この頃見かけない ベンチは恋人だらけ
芝生には過ぎてゆく 夏の風
何を食ってるんだか どこで寝てるんだか
酔い潰れてるのか 呑気に笑ってるのか

だからって町は 何も変わりやしないけど
景色の隅の 一かけら欠けたくらいで

朝から今日は雨 ベンチは鳩も見えない
川のように深い雨 秋の雨
まさか飛んでったのか 鳩達とあの空
雨の降らない国 冬など来ない国へと

だからって時は 何も残しやしないけど
記憶の隅の 一かけら疼くくらいで

まさか飛んでったのか 鳩達とあの空
酔い潰れてるのか 呑気に笑ってるのか
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