人昔

[第一景]
どっちが先に 惚れたと云った
今じゃ全然 おぼえていない
どっちが先に 別れを告げた
それはハッキリ おぼえてる

あいつはあいつ あたしはあたし
ちょっぴり 涙も 見せたけど
意地と意地とが ぶつかりあって
左と右に 背を向けた

[第二景]
一年ひとつ 何かがあれば
十年たてば 何かは増える
こんなに広い 世間の中で
めぐり逢うとは これも縁
顔見たトタン '元気か'と 
渋い声音が ただなつかしく
ちょっぴり増えた 目尻のシワを
みつめたままで 立ちつくす

[第三景] その一
ひとり暮しが 性に合うなら 
いつでも勝手に 消えればいいさ
どこかに いいのが 待っているなら
何も云わずに 出て行って

だ・け・ど…

[第三景] その二
やっぱり あんたの 匂いが好きさ
夢を見るなら いっしょに見たい
昨日のことは 昔のことで
明日のことなど わからない

だ・か・ら こうして
今日は あんたの 腕ン中

だ・か・ら こうして
今夜も あんたの 胸ン中
×