見せたいもの

「お前の隣を共に歩いてく お嫁さんが来るまで死ねないよ」
笑いながら言うあなたに 背を向けて僕は泣いていた

消毒が鼻を突く 祖母の部屋はどこですか?
静脈の浮き出た腕 ぽつんとひとり あなたはいた

大切で ただ大切で あなたとの思い出はとても愛しくて
いかないで まだいかないで 見せたいものがもっともっとあるんだよ

顔を見れば小言は絶えず うるせぇな!と箸を叩き付けた
冷めた夕飯 片付け泣いてた その背中にごめんね 言えなかった

ちゃんと食べてる? お金はあるかい? 今はその声も細くて
もういいよ もういいよ もういいから 笑ってよ

大切で ただ大切で 消えそうな笑顔 まぶたに焼き付けた
点滴の雫のように あなたの鼓動は穏やかに時を刻む

大好きで ずっと大好きで くしゃくしゃの笑顔 ずっと見ていたくて
いかないで まだいかないで いつからそんなに小さくなってしまったの?
ベッドを少しずらしていいですか?
窓から空がちょっとだけ見えるように
見せたいものがもっともっとあるんだよ

僕の隣を共に歩いてく 大切な人の手を引いて
バス停から続く坂道を あなたに会いに登ってくとこ
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