海千山千

幾つもの川を
渡ってきたんだ
海千山千と
人は言うけれど
ダメな奴さ
馬鹿な奴さ
今じゃ そう思える
そんな気がしたら
本当に
バカでオタンチンだった

俺は海千山千の男
そんな顔で俺を見るなよ
ただブルースを唄うだけさ

古いホテルの窓から
見える港
幾ら待ったって
来ない船だってあるのさ
ついてる奴
ついてない奴
今じゃ そう思える
そんな気がしたら
ホテルが火事になって
そして火元は俺だった

あの世への階段を
トボトボと歩けば
ヤボテン ボンクラ
人は言うけれど
ドジな奴は
最後もドジさ
今じゃ そう思える
そんな気がしたら
一人ぼっち
ただの淋しいヤツだった

そんな気がしたら
睨んだ目が
やさしく笑ったようだった
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