湯田川の月

一歩踏み出しゃ 戻れない
まして男の 生きる道
夢を背おって 故郷(くに)を出て
浴びた浮世の 雨や風
無駄にするまい この命
ひとり浮かべる 湯田川の月

ついて来るなと 云いながら
向けた背中の やるせなさ
まぶた閉じれば 見えてくる
愛(いと)しあの娘(こ)の 泣きぼくろ
忘れられよか 峠道
あれは八月 湯田川の月

ひとつ越えても その先に
続く試練の 山がある
落ちて ころんで はい上がる
口に出すまい 泣き言は
今は我慢の 月見草
夢が道づれ 湯田川の月
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