最終案内

標示盤が君の飛行機を示す
もう25分で君は舞いあがる
ひきとめるのならば
今しかないよと
壁のデジタル時計が
またひとこま進む
あの頃は止まれとさえ祈った時間を
知らず知らずのうちに
君はもて余している
手荷物はベルトコンベアーに流れて
思っていたより確かに
風は止まろうとしている
人ごみのロビーざわめきの中で
君は静かに
時計をはずす

最終案内が答を告げる
穏やかな声がロビーに響く
君の淡い肩が
心なしかふるえ
チケットにすがるように
背中を向ける
君は今スポット浴びたスターのように
滑走路というステージに
呑み込まれてゆく
君をのせた鳥がやがて翼はためかせて
赤や緑のランプを
飛び越えてゆく
人ごみのデッキざわめきの中で
僕は最後の風を
ひとり受けとめる
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