私の彼

−AM7:00−
いつも通りの朝。
何も変わらずに出て行くあなた。
「いってらっしゃい。」
「いってきます。」
あなたは私にキスをする。
いつもより多めの香水と、付けもしないワックスを付けて。

−PM10:00−
いつもより少し遅い帰宅。
「遅かったね、なんかあったの?」
「仕事が忙しくて。」と一言。
見向きもしなかった携帯をお風呂にトイレに連れて行く。

−AM0:00−
最近よく鳴るあなたの携帯。
その度、会社だ友達だ。
ふーん、そっか...。

−AM2:00−
寝付けない私。
不安と信頼が交差する。
隣にはいつも通りのあなた。
寝顔が可愛い、信じよう。

−AM4:00−
寝付けない私。
不安が信頼を越える時間。
ロックのかかった携帯。
安心しきった寝顔。

−AM5:00−
“0428” 2人の記念日。
暗唱番号は変えておいて欲しかったな。

−AM5:07−
嘘つき。

−AM5:15−
「ごめん、土曜日仕事になっちゃった。」
送信。

−AM5:16−
「削除しました。」

−AM7:00−
いつも通りの朝。
何も変わらずに出ていくあなたと何かが変わってしまった私。
「いってらっしゃい。」
「いってきます。」
あなたは私にキスをする。
あなたは何も知らない…。

嘘つき。

−土曜日−
休日出勤だと出て行くあなた。
今日はなんだかご機嫌だね。
「スーツじゃないの?」
「私服で大丈夫。」
ふーん、そっか…。
この後、あの娘と逢うんだもんね。
でも彼女、来ないよ?
待ち合わせ場所は

○○でしょう?

−日曜日−
久々のあなたとのデート。
今日はなんだか不機嫌だね。
そりゃそうか、昨日は休日出勤だもんね。
タバコの本数がいつもより多いし、携帯も見ない。
覗き込むように私を探ってる。
「どうしたの?どこ行くの?」
「トイレ」と立ったその隙に
私の手が、伸びる伸びる伸びる…。

…あれ、暗証番号が変わった。
“0228” 私の誕生日。
“1126” あなたの誕生日。
“0000” そんな訳ない。
私は知らない…。

もうこれ以上知りたくないよ
(ウソ、知りたくて仕方がない)

もうあなたとなんか別れたいよ
(ウソ、絶対別れてあげない)

もっとあなたの事知りたいよ
(ウソ、これ以上知ったらおかしくなる)

別れないで そばにいて
(ウソじゃない、これが本音)

今日も、明日も、明後日も
1週間後も1ケ月後も
1年後も15年後だって
ずっと変わらずにあなたを待ってるから…。

浮気をしてたって気付かないフリをするよ。
毎日毎日「おかえりなさい」て言うから。
何もしなくていい、何もしなくていいよ。

ただ帰って来れる場所があれば
あなたは帰ってきてくれるから。
だからずっと変わらずに
私はあなたを待ってるから。

−AM7:00−
いつも通りの朝。
何も変わらず出て行くあなた。
「いってらっしゃい。」
「いってきます。」
あなたは私にキスをする。

何も知らないあなた。
何も知らないあなた。
何も知らないあなたは

私の彼。
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