風雪十年

前は見えても 後(うしろ)は見えぬ
世間知らずの 五里霧中(ごりむちゅう)
俺のふり出し 雪国越後(ゆきぐにえちご)
がまん十年‥‥ 刻んだ胸に
身すぎ世すぎの 絃三筋(いとみすじ)
抱いて流れて 寺泊(てらどまり)

風のつめたさ 心の寒さ
酒についつい 手がのびる
坂田港を かわせば能代(のしろ)
がまん十年… 花咲く日まで
三十五反(たん)の 帆を巻いて
帰える瀬はない 旅の空

情け知らずが 情けに泣いて
紅を散らせた 傘踊り
夢のあまさは 叩いて捨てた
がまん十年… この三味線に
水がゆるむにゃ あと三月(みつき)
春は名のみの 大湊(おおみなと)
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