少年のころ

ああ……雨がふっているなァ。
おまえは安らかに眠っている。
優しくあたたかいおまえの匂い
大丈夫さ……
おまえの眠りを妨げはしない。

夜明けが近いのに
雨ふりの窓は暗い
はるかな昔から
雨ふりを生きて来た
おふくろ……おれを抱いて
ごめんねと泣き乍ら言って
死んで行った夜明けも
雨ふりの……少年のころ

いつだって雨の中さ
いつだって陽かげばかり
しずくをたらし乍ら
ものほしげに……

おそらくこのおれは
雨ふりの夜の生れ
つめたい水滴を
あびながら生きて来た
おやじが……酔って帰り
ドレス着た女とどこかへ
消えて行った九月も
雨ふりの……少年のころ

あのころ……死んでいたら
こんなにも不幸せばかり
かさねずともよかった
雨ふりの……少年のころ
雨ふりの……少年のころ
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