檸檬

密売人と取引をして
俺は檸檬を手に入れた
そいつをある日
小さな村で 村人達に売りつけたんだ

平和に暮らしていた村人達は
“贅沢”や“物欲”を知ってしまった
車を走らせ ビルを建てて
幸せの価値観を金に求めた

誰もがみんな権力に群がり
やがて他の村を襲うようになった

「檸檬はいかが?」ウェイトレスが尋ねる
檸檬を一つかじったら
痺れるような味が
体中に広がってゆく

森を焼き払い 水を吸い上げ
土を掘り尽くして海を汚した
欲望という名の「檸檬」の味が
もうすぐこの星を滅ぼすだろう

弁護士たちは笑いながら言った
「正義の為だと言えばいいのです」

「檸檬はいかが?」ウェイトレスが尋ねる
檸檬を一つかじったら
痺れるような味が
体中に広がってゆく

「檸檬はいかが?」
ウェイトレスがいつものように尋ねてきた
「遠慮しとくよ」
俺はそう言って
黄色い檸檬を彼女に返した
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