くれない酒場

紅い椿の 咲くのれん
夜の小路(こみち)に 揺れている
おちょこ手酌の ひとり言
馬鹿な女の 身の上を
聞いてください くれない酒場

あれは三月 花のころ
恋のかけらも 捨てたのに
お酒のむたび 悲しみが
過ぎたあの人 連れもどす
抱いてください くれない酒場

まるで子猫が 座るよな
席はいつでも 隅のかど
出汁(だし)は涙の みれん味
箸でつまんだ 愚痴ひとつ
聞いてください くれない酒場
×