渚にて

この休暇を終えたら、ちゃんと大人になろうね。
昨日とは違う神様、昨日とは違うアイロニー。
誰もが通る定めをたどるべき瞬間が僕らにも訪れたって、
それだけのことなんだよ。

歌のありかを知る君は、気づけばずっと先でくるくる踊る。
すみれ色の声を焼ける陽にさらした――晴れ空に取り繕った嘘に笑って。

いつも舌をもつれさせる3単語の台詞があって、
寄せては返す波のようにありふれていた物語。

素知らぬ顔して忍び寄る月。
なんとなく夜は懐かしい匂いで、
移ろうあれやこれやそれが、わけもなくちょっと怖くなったりする。

ひとくち飲み残したラムネのぬるさに似た、
甘ったるい風に吹かれる横顔に、泣きたくなる。

愛に満たされすぎたら、苦しいくらいすべてがきれいに見えた、星の浜辺。
得体の知れないロマンにだまされ続ける時間を終えられるかな……?

いつか灰色をした街でVHSを巻き戻したって、
二度と戻らないふたりがいまここにいる――
渚にて。

ふだん通りに朝がきて、
なにも変わってない気がして、
でも、会わなくなって、会えなくなって、
交わす言葉も薄れていって、
「友達」のまま友達じゃなくなっていくけれど、

この休暇を終えたら、ちゃんと大人になるんだっけ。
さあ、帰ろうか――まだ眠たいけれど、
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