ひまわり

その人の女房はある日絵ハガキを受け取った
丘の上のひまわりが微笑むように揺れる写真
午後3時には荷造りと化粧をすませて
日曜日にしかかぶらない帽子を深くかぶる
彼女は部屋を出る時も笑顔を崩さない
足早に段階を降りて歩き出す

ガソリンが水たまりに虹をつくる道のむこう
すすけた赤い屋根が続いている

窓から差し込む工場の照り返しを浴びて
その人は粗末なベッドにただ黙って座ってる
たまり場の女達のヒステリックな笑い声
通りのむこう側から風に流されて聞こえる
鏡のわきにピンでとめられた写真の中で
はにかんだまま色褪せてる2人

ガソリンが水たまりに虹をつくる道のむこう
すすけた赤い屋根が続いている

工場にしがみつくように並んだアパートの群れ
どの窓にも同じブルーの作業着が干してある
いつもと同じ夕焼けがあたりを赤く染めると
街中がつぶやき出すさあ仕事が終る時間だ
誰もがテーブルの回りでそれぞれ寄り添う
小さな声で励まし合いながら

ガソリンが水たまりに虹をつくる道のむこう
すすけた赤い屋根が続いている
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